461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第261話 2020年アキバの旅

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 2020年。

 ──東京、秋葉原。

 ~461さん~

「アイル!!」

 魔法陣に飲み込まれそうになる。アイルだけでも助けようと、彼女を突き飛ばした。ほとんど無意識での行動。振り返ったアイルは驚いた顔で俺を見た。

「ヨロイさん!」

 彼女が真っ直ぐ伸ばした手が俺の指先に触れそうになった次の瞬間、目の前は真っ白に包まれた。


 眩しい。


 そう思った時には、俺は路上に立っていた。


 行き交う人々。ザワザワと聞こえる騒音に、大通りで渋滞する車。高架を走る電車。一目でダンジョンの外に飛ばされたのだと分かった。


 後ろを振り返る。そこにはシィーリアとタルパ、シンがいた。

「アイルは!?」

 シィーリアの肩を掴む。彼女はボーッとしていた顔を叩き、真剣な表情になった。

「……妾達だけが時間魔法に飲まれてしまったようじゃの。安心しろ、願いの中心を見つければ飛ばされた直後に帰る事ができる。アイルに何かある前に助けに行けるじゃろう」

「そうか……」

 緊張が緩む。時間魔法の事を知るシィーリアがいて助かったぜ……。

 だけどアイルは今、1人であの時間神ってヤツと対峙している……不安になっているはずだ。早く帰らねぇと。

「時間魔法という事は、私達ってどこかの時間に飛ばされたんですよね?」
「ここって……秋葉原?」

 タルパとシンがキョロキョロと周囲を見渡す。俺も周囲を見てみる。秋葉原なのは間違い無いみたいだが、何か様子が変だった。

 真新しいアニメイラストの看板、PCやゲーム、フィギュアの店が立ち並ぶ大通り、呼び込みをしているメイド……俺達の知ってる秋葉原じゃない。


「おお!? ダクソのコスプレ!?」
「こっちのゴスロリの子可愛い~!?」
「あれってもしかして……探索者?」
「あんな如何にもな鎧のヤツいないだろ~」
「あれ? あの子供ツノ付いてる?」
「コスプレでしょ。魔族がこんな所にいるわけないじゃん」


 周囲の人々が面白がるように俺達を取り囲み、スマホを向ける。パシャパシャと鳴るシャッター音。シィーリアが嫌そうな顔をして両手を振った。

「あ~スマンが妾達はダンジョン探索者じゃ! コスプレでは無いので写真は……」

「きゃ~!! 可愛い~!!」

 シィーリアの言葉を遮るように女子高生達がスマホで写真を撮る。シィーリアが何度やめろと言ってもシャッター音が鳴り止まない。流石に可哀想になって来たので彼女の腕を掴んで裏通りの方へ走った。

「取り敢えず人がいない所へ避難するぞ!!」

「あ! 461さん!」
「待って下さいよ!」

 裏通りを抜けて、人混みの中を走る。俺の知っているアイテムショップや素材の店がどこにも無い。どこもフィギュアやPC、カードショップばかりだ。


「わ、何アレ!?」
「イベントやってるの!?」
「ゴスロリの子めっちゃ可愛いじゃん!」
「つか鎧って……www」
「クオリティ高っ!?」


 どいつもコイツも珍しい物を見るような顔をする。スマホで写真を撮ってくる。人を掻き分けて芳林公園ほうりんこうえんの方へ向かう。

 しかし、公園にもかなり人がいて、また物珍しそうにヤツらが俺達にスマホを向ける。

 仕方がないのでさらに細い路地を通り、裏通りを抜ける。「中檜山なかひやまビル」と書かれたビルの前まで来て、やっと一息吐くことができた。

 周囲を見渡しても人がいない通り。ビルの2階からなぜか男の高笑いが聞こえる。そのせいで人が寄り付かないのかも。いずれにせよ、人がいない場所があって助かったぜ……。

「はぁはぁ……めんどくさいのう……」

 シィーリアが電柱の近くでしゃがみ込む。無理矢理引っ張って来たから疲れさせてしまったかもな。

 ふとシィーリアが顔を上げる。どこを見ているかと思えば件のビル1階に入っている店の中を見ていた。中を見た感じ、PCやテレビのモニターを専門に扱っている店みたいだ。

 「この時代がいつか分かった気がするのじゃ」

 シィーリアが指した先。ガラス戸の向こうで店主らしき男性がモニターを見ながら昼飯を食っていた。モッモッと美味そうにトンカツ弁当を食う男性。

 タルパがグゥと腹を鳴らした。恥ずかしそうに腹を押さえたタルパは、羨ましげに店主の弁当を見た。

「美味しそう……そういえばまだお昼食べてなかったな……夢想魔法使うとお腹減るし……」

「僕もまともにご飯食べてないからなぁ……何か食べたいよ……」

「あのオッサンがどうしたんだシィーリア?」


 俺達が口々に言うと、シィーリアは呆れたように肩を落とした。


「違うのじゃ、壁を見んか、壁を」


「「「壁?」」」


 俺達3人は同時に店内の壁を見た。そこにはデジタルの壁掛け時計があった。時刻と年月日の表示された時計だ。時刻は昼の12時30分。年月日は……。


 2020年12月14日。


「2020年!?」
「12年前!?」

 タルパとシンがほぼ同時に叫ぶ。なるほどな……時間魔法で俺達が飛ばされたのは12年前ってことか……確かにその頃はダンジョンが出現して間も無い。あの通行人達が物珍しそうに俺達を見て来たのも納得だな。

「じゃが、この日付は……」

 シィーリアが考え込むように口元に手を当てる。12年前で願いの中心って……そもそも何を見つければいいんだ?

 全員が沈黙してしまう。考え込んでいると、背中に何かがドンとぶつかった。


「お、すまん鎧の兄さん。アイテムが多くてよ~」


 振り返ると先程まで誰もいなかった通りに1人の男がいた。パンパンのデカいカバンを背中に3つ背負い、さらに腕に3つも抱えた男が。マント姿の探索者。彼がヨロヨロと大通りに出ようとしたので、思わず呼び止めた。

「そんな状態で歩いてたら危ないだろ」

「いやぁ、アイテムが多くてよ~」

 言いながら男が大通りに向かって歩き出す。しかし、バランスを崩して持っていたカバンを落としそうになってしまう。

「シン!」

「はい!」

 シンと2人でカバンを受け止める。カバンで隠れていた男の顔が露わになる。


「いやぁ~ありがとな! 流石に1人で運ぶのには無理があったか~!」


 カラカラと笑う男。その姿を見て思わず絶句してしまった。


 肩まである長髪に無精髭……装備はマントと……。


 紫電の剣・・・・

 
 その顔は見た事があった。アイルの住むマンションに飾ってあった、彼女の親父さんの写真……それと瓜二つだったから。


「桜田……賢人……」


「あれ? 兄さんどっかで会った事あるか? こんな鎧着てたら忘れるはず無いんだけどなぁ」


 桜田賢人・・・・は困ったように頭を掻いた。




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