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第270話 2020年12月19日 モンスター流出事件
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~461さん~
桜田賢人達とダンジョンを攻略してから3日。俺達はタルパの修行に加えて時間神エモリアとの最終決戦に備えての準備を行って過ごした。
「まさか今日の早朝までシィーリアさんと戦闘訓練することになるなんて……初日は優しかったのに……」
「僕も何回死ぬと思ったか分からないよ……」
「仕方ないじゃろぉ? だってお主達全然鍛え方がなっておらんかったからの。タルパの魔法の訓練と並行して2人の実戦トレーニングをするのは当然じゃ!」
タルパとシンは残りの時間を朝から晩までシィーリアにしごかれ、体がボロボロになった所を回復薬で回復させるという荒業を行っていた。
この時代では回復効果の高い高濃度回復薬は開発されていないから通常の回復薬を何本も使う羽目になった。賢人達と倒したボスの素材アイテムをこの時代の現金にしたから良かったものの、それでも結構な金を消費しちまったな。
俺もシィーリアと戦闘訓練をしつつエモリアへの対抗策を考えた。
ヤツは人の思念を読む。向こうに戻ってから作戦を考えてたんじゃ読まれちまう。だからこそ、俺達は個々の役割を事前に打ち合わせしておいた。
朝から晩まで訓練、夜は作戦会議。中々ハードな3日間だったが、できることは全てやった。
そうして時間は過ぎ……俺達は今、2020年12月19日の秋葉原にいる。大通りに面したビルの1階。イベントスペース前の広場で周囲を見渡す。相変わらず物凄い量の一般人が歩いていて、チラチラとこちらを見てくる。それに背を向けてシィーリアが俺たちの顔を見渡した。
「ふぅ……正午まであと1分。後は願いの中心を見つけるだけじゃの。本当にヤツの言葉を信じて良いのか?」
シィーリアの問いにシンはコクリと頷いた。
「大丈夫です。九条は……嘘を言っていないと思います」
「シンがそう言うなら大丈夫だろ」
「わ、私も! シン君を信じてますから……」
シィーリアは心配になった自分が恥ずかしくなったのか、頬を赤くしてプイッと顔を背けた。
「わ、妾は最終確認をしただけなのじゃ!」
恥ずかしがっているシィーリアに笑ってしまう。シィーリアも今日はジークの事があるはずだ。普段通りだが、内心穏やかじゃないだろう。それでもこうして普段通りにできるってのはすごいぜ、ホント。
そんな事を考えていた時。
突然、空が青く光った。真っ青な冬空にテラテラとオーロラのような光が見える。
「発生したぞ……アレが時空の歪み……恐らくじゃが、妾達に使われた時間魔法によって生まれた物じゃ」
「人を過去に飛ばしておいてモンスターまで出現させるなんて迷惑すぎじゃないですか……」
タルパの頬に汗が伝う。時間魔法を使うと時間軸に歪みが発生する。それを修正する為に時空の歪みが生まれるんだっけか? ホント、迷惑な話だな。
「何あれ」
「オーロラみたい!」
「綺麗……」
「でもなんか気味悪いな」
様子がおかしい事に気付いた一般人達は、皆スマホを取り出そうとしていた。
が、次の瞬間。
彼らの近くに複数のモンスターが出現した。人間大のサソリのようなモンスター、ザベルスコーピオン。それが人混みの中に現れる。目の前にモンスターが現れた事で、人々は放心していたようになっていて……事態が飲み込めないようだった。
「ギチギチギチ……」
「え?」
1人の女性が立ち尽くす。彼女に狙いを定めるザベルスコーピオン。彼女の元に走ろうとした瞬間、1人の男がサソリへ飛びかかった。
「はあ!!!」
甲殻の継ぎ目に突き刺さる紫電の剣。男は周囲に向かってあらん限りの声で叫んだ。
「モンスターだ!!! 逃げろ!!!!」
飛び込んだのは桜田賢人だった。彼に続いて過去の九条アラタとバーンが飛び出す。彼らは他の個体へと攻撃を開始した。
「蒼!! 一般人を駅の方へ誘導しろ!!」
「分かったヨ!!」
九条アラタの指示で女魔導士の蒼が一般人の誘導を始める。その間にもモンスターが湧き、彼らの周囲を取り囲んだ。
「妾達も加勢するのじゃ! シンは妾から離れるな! 見失っても件の場所へ連れて行ってやるのじゃ!」
シンとシィーリア、俺とタルパでモンスターの群れへ突っ込む。
この3日間でモンスター流出に対処していいのか散々話し合った。俺達が介入する事で過去を改変してしまう可能性があったからだ。
だが、シンから聞いた九条の記憶とシィーリアの知っている情報を掛け合わせて答えを出せた。
ヴォークノスとのボス戦では俺達が戦闘することが織り込まれているようだった。九条にヴォークノスを倒した記憶があり、シィーリアの知る未来の記録にもヴォークノスは倒された事実は残っていた。
本来いた他の探索者と俺達の役割が入れ替わったのかは分からないが……いずれにせよ、俺達が探索者として動く事が歴史の流れに織り込まれていると考えた方がいいだろう。
俺達がここでモンスター退治に動かなければ死なないはずの一般人が死に、それによって過去改変が起こる恐れがある。だからこそ、俺達は今、全力で戦わなければならない。
「タルパ! 子飛竜を頼む!」
「はい!」
タルパの召喚した3体の子飛竜が氷結ブレスを吐き、ザベルスコーピオン達を凍らせていく。凍り付いたモンスター達を破壊しながら、俺はさらにモンスターの群れの中へと入っていった。
「オラァ!!!」
5体目のサソリを砕いた時、目の前に賢人達がいた。彼らはカラス型のボスモンスター「グロウムクロウ」と戦闘をしていた。
「おお! 鎧の兄さんも加勢してくれ!!」
賢人がグロウムクロウの鉤爪攻撃を避ける。アスファルトをバリバリと抉り取る鉤爪。攻撃後の隙を突いてアラタとバーンがヤツの腹部へ斬撃を放つ。しかし、グロウムクロウはヒラリと身を躱すと空高くへ舞い上がった。
「クソぉ……俺達の遠距離攻撃じゃあそこまで届かねぇ」
ボスクラスまでいるのか……桜田賢人の死はサソリ相手ではなかったよな。ここは助けたほうがいいか。
「俺に任せろ」
背後から襲いかかってきたサソリの攻撃を避け、尻尾をアスカルオで斬り飛ばし、腰の鞘からクロウダガーを引き抜いた。
「喰らいやがれ!!!」
全力でクロウダガーを投擲する。風の刃を纏ったクロウダガーが、高速回転しながら大ガラスの翼を切り裂いた。
「ガァ゛!?」
高度を落とすグロウムクロウ。ヤツは落下しながらも賢人へ狙いを付け、鉤爪で急降下攻撃を仕掛けた。
「もうその技は見たぜ! デカガラス!!」
賢人がマントを翻してグロウムクロウへ飛び込む。鉤爪の攻撃が当たる刹那、賢人はマントを使って鉤爪攻撃の軌道を僅かに逸らせた。そしてすれ違いざまに紫電の剣を一閃。斬撃を受けたグロウムクロウは、傷口から電撃が侵入した事で絶叫を上げた。
「ギャアアアアアアアアア!!!?」
グロウムクロウは痙攣しながら倒れ込んだ。
「ふぅ……助かったぜ鎧の兄さん」
賢人が手を差し出してくるので拳を当てる。
「賢人! 終わったならこっち手伝ってくれ!」
「数が多すぎる……!」
いつの間にか周囲はサソリ達に囲まれていた。ヤツらの攻撃を防いだ過去の九条とバーン、彼らは賢人へ向かって叫んだ。
「おお悪ぃ悪ぃ! 一般人も避難したみたいだし蒼に一掃して貰うか!」
そう言って賢人は走っていく、賢人はクルリと振り返って俺を見た。
「じゃあな! そっちも気を付けろよ!」
手を振って走って行く桜田賢人。俺が見た彼の生きた姿は……これが最後になった。
桜田賢人達とダンジョンを攻略してから3日。俺達はタルパの修行に加えて時間神エモリアとの最終決戦に備えての準備を行って過ごした。
「まさか今日の早朝までシィーリアさんと戦闘訓練することになるなんて……初日は優しかったのに……」
「僕も何回死ぬと思ったか分からないよ……」
「仕方ないじゃろぉ? だってお主達全然鍛え方がなっておらんかったからの。タルパの魔法の訓練と並行して2人の実戦トレーニングをするのは当然じゃ!」
タルパとシンは残りの時間を朝から晩までシィーリアにしごかれ、体がボロボロになった所を回復薬で回復させるという荒業を行っていた。
この時代では回復効果の高い高濃度回復薬は開発されていないから通常の回復薬を何本も使う羽目になった。賢人達と倒したボスの素材アイテムをこの時代の現金にしたから良かったものの、それでも結構な金を消費しちまったな。
俺もシィーリアと戦闘訓練をしつつエモリアへの対抗策を考えた。
ヤツは人の思念を読む。向こうに戻ってから作戦を考えてたんじゃ読まれちまう。だからこそ、俺達は個々の役割を事前に打ち合わせしておいた。
朝から晩まで訓練、夜は作戦会議。中々ハードな3日間だったが、できることは全てやった。
そうして時間は過ぎ……俺達は今、2020年12月19日の秋葉原にいる。大通りに面したビルの1階。イベントスペース前の広場で周囲を見渡す。相変わらず物凄い量の一般人が歩いていて、チラチラとこちらを見てくる。それに背を向けてシィーリアが俺たちの顔を見渡した。
「ふぅ……正午まであと1分。後は願いの中心を見つけるだけじゃの。本当にヤツの言葉を信じて良いのか?」
シィーリアの問いにシンはコクリと頷いた。
「大丈夫です。九条は……嘘を言っていないと思います」
「シンがそう言うなら大丈夫だろ」
「わ、私も! シン君を信じてますから……」
シィーリアは心配になった自分が恥ずかしくなったのか、頬を赤くしてプイッと顔を背けた。
「わ、妾は最終確認をしただけなのじゃ!」
恥ずかしがっているシィーリアに笑ってしまう。シィーリアも今日はジークの事があるはずだ。普段通りだが、内心穏やかじゃないだろう。それでもこうして普段通りにできるってのはすごいぜ、ホント。
そんな事を考えていた時。
突然、空が青く光った。真っ青な冬空にテラテラとオーロラのような光が見える。
「発生したぞ……アレが時空の歪み……恐らくじゃが、妾達に使われた時間魔法によって生まれた物じゃ」
「人を過去に飛ばしておいてモンスターまで出現させるなんて迷惑すぎじゃないですか……」
タルパの頬に汗が伝う。時間魔法を使うと時間軸に歪みが発生する。それを修正する為に時空の歪みが生まれるんだっけか? ホント、迷惑な話だな。
「何あれ」
「オーロラみたい!」
「綺麗……」
「でもなんか気味悪いな」
様子がおかしい事に気付いた一般人達は、皆スマホを取り出そうとしていた。
が、次の瞬間。
彼らの近くに複数のモンスターが出現した。人間大のサソリのようなモンスター、ザベルスコーピオン。それが人混みの中に現れる。目の前にモンスターが現れた事で、人々は放心していたようになっていて……事態が飲み込めないようだった。
「ギチギチギチ……」
「え?」
1人の女性が立ち尽くす。彼女に狙いを定めるザベルスコーピオン。彼女の元に走ろうとした瞬間、1人の男がサソリへ飛びかかった。
「はあ!!!」
甲殻の継ぎ目に突き刺さる紫電の剣。男は周囲に向かってあらん限りの声で叫んだ。
「モンスターだ!!! 逃げろ!!!!」
飛び込んだのは桜田賢人だった。彼に続いて過去の九条アラタとバーンが飛び出す。彼らは他の個体へと攻撃を開始した。
「蒼!! 一般人を駅の方へ誘導しろ!!」
「分かったヨ!!」
九条アラタの指示で女魔導士の蒼が一般人の誘導を始める。その間にもモンスターが湧き、彼らの周囲を取り囲んだ。
「妾達も加勢するのじゃ! シンは妾から離れるな! 見失っても件の場所へ連れて行ってやるのじゃ!」
シンとシィーリア、俺とタルパでモンスターの群れへ突っ込む。
この3日間でモンスター流出に対処していいのか散々話し合った。俺達が介入する事で過去を改変してしまう可能性があったからだ。
だが、シンから聞いた九条の記憶とシィーリアの知っている情報を掛け合わせて答えを出せた。
ヴォークノスとのボス戦では俺達が戦闘することが織り込まれているようだった。九条にヴォークノスを倒した記憶があり、シィーリアの知る未来の記録にもヴォークノスは倒された事実は残っていた。
本来いた他の探索者と俺達の役割が入れ替わったのかは分からないが……いずれにせよ、俺達が探索者として動く事が歴史の流れに織り込まれていると考えた方がいいだろう。
俺達がここでモンスター退治に動かなければ死なないはずの一般人が死に、それによって過去改変が起こる恐れがある。だからこそ、俺達は今、全力で戦わなければならない。
「タルパ! 子飛竜を頼む!」
「はい!」
タルパの召喚した3体の子飛竜が氷結ブレスを吐き、ザベルスコーピオン達を凍らせていく。凍り付いたモンスター達を破壊しながら、俺はさらにモンスターの群れの中へと入っていった。
「オラァ!!!」
5体目のサソリを砕いた時、目の前に賢人達がいた。彼らはカラス型のボスモンスター「グロウムクロウ」と戦闘をしていた。
「おお! 鎧の兄さんも加勢してくれ!!」
賢人がグロウムクロウの鉤爪攻撃を避ける。アスファルトをバリバリと抉り取る鉤爪。攻撃後の隙を突いてアラタとバーンがヤツの腹部へ斬撃を放つ。しかし、グロウムクロウはヒラリと身を躱すと空高くへ舞い上がった。
「クソぉ……俺達の遠距離攻撃じゃあそこまで届かねぇ」
ボスクラスまでいるのか……桜田賢人の死はサソリ相手ではなかったよな。ここは助けたほうがいいか。
「俺に任せろ」
背後から襲いかかってきたサソリの攻撃を避け、尻尾をアスカルオで斬り飛ばし、腰の鞘からクロウダガーを引き抜いた。
「喰らいやがれ!!!」
全力でクロウダガーを投擲する。風の刃を纏ったクロウダガーが、高速回転しながら大ガラスの翼を切り裂いた。
「ガァ゛!?」
高度を落とすグロウムクロウ。ヤツは落下しながらも賢人へ狙いを付け、鉤爪で急降下攻撃を仕掛けた。
「もうその技は見たぜ! デカガラス!!」
賢人がマントを翻してグロウムクロウへ飛び込む。鉤爪の攻撃が当たる刹那、賢人はマントを使って鉤爪攻撃の軌道を僅かに逸らせた。そしてすれ違いざまに紫電の剣を一閃。斬撃を受けたグロウムクロウは、傷口から電撃が侵入した事で絶叫を上げた。
「ギャアアアアアアアアア!!!?」
グロウムクロウは痙攣しながら倒れ込んだ。
「ふぅ……助かったぜ鎧の兄さん」
賢人が手を差し出してくるので拳を当てる。
「賢人! 終わったならこっち手伝ってくれ!」
「数が多すぎる……!」
いつの間にか周囲はサソリ達に囲まれていた。ヤツらの攻撃を防いだ過去の九条とバーン、彼らは賢人へ向かって叫んだ。
「おお悪ぃ悪ぃ! 一般人も避難したみたいだし蒼に一掃して貰うか!」
そう言って賢人は走っていく、賢人はクルリと振り返って俺を見た。
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