461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第276話 迎え

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 ~ジークリード~

「ジークリードがボスを倒してくれたぞ!!」
「やばい……俺、助かるかも……」
「お、俺も戦うぞ!!」
「戦ってる奴らを援護しろ!!」


 周囲の探索者が湧き立ち、逃げようとしていた者達や怯えていた者達も他の探索者を助けに向かうようになった。ミナセとユイが探索者達を強化して行く事で彼らがガウルベアと戦えるようになっていく。

 俺も周囲のモンスター討伐に加わり、10分ほどの戦いでこの区画にいたガウルベアの群れは完全に討伐された。

「まだ他の区画にはモンスターがいるはずだ。急がなければ」

 グラムを鞘へと戻した時。突然何者かが背中に飛びかかって来た。

「うわ!?」

「やったあああああ!!」

 首に回される腕、耳元で聞こえる涙声。この声、ミナ……。

「ミナセ、俺は──」

「良かったよぉ~和巳カズミぃ~……」


 抱きついていたのは、ユイだった。


「ユイか!? だ、抱きつくのはやめろ!!」
「嫌だね!! アタシは今こうしたいの!!」

 ユイを引き剥がそうとする、が後ろから抱きつかれているせいで上手く腕が解けない。揉み合っているうちにユイが頬擦りしてくる。助けを求めるように周囲の探索者達の様子を見てみると、彼らは微笑みを浮かべていた。なんだその生優しいような目は!?

 マズイ……!? こんな所をミナセに見られたら……!?

 周囲を見渡す……ミナセはいない。良かった……ミナセは浮気は絶対に許さないといっていた。それが実の妹とあってはその怒りはとんでもない事になっていただろう。何とか彼女が戻って来る前にユイを引き剥がして……。



 瞬間。



 背後に恐ろしいまでの殺気を感じた。全身がビリビリ震えるほどの殺気。周囲の探索者達も恐ろしいものを見るかのような顔で俺の背後を凝視していた。


「人がさぁ~立ち直るまで我慢してたって言うのに、何をしているのかなぁ?」


 優しい声。だけど、俺は今までの人生でこれほどまでに恐ろしい声を聞いた事がない。恐る恐る振り返ると、笑顔のミナセが殺気を撒き散らしながら俺を見つめていた。

「ち、違うんだ……!? コレはユイが……!?」

「私とユイを間違えてたよねぇ?」

「う゛っ!?」

「こんなに付き合い長いのに間違える?」

「ち、違……!?」

「まぁまぁマイ、いいじゃんアイルの所もこんな感じだろ~?」

 ユイが軽口を叩いた瞬間、ミナセの瞳がギラリと光った。彼女から放たれる殺気のせいで髪が逆立つ。ユイは小さく「ひっ……」と声を上げ、オズオズと俺から離れた。


「私はリレイラさんやアイルちゃんみたいに心広くないから」


 ユイの体はカタカタと震えていた。代わりに笑顔のミナセが近づいて来る。


 怖い……俺はどうなるんだ……っ!?


 しかし俺が死を覚悟したのとは裏腹に、ミナセはポロポロと涙を流し始めた。ミナセが俺の胸に顔を当てる。

「もう、私達守って左眼まで無くしちゃうし、あんな大蛇に1人で突っ込んじゃうし……カズ君は心配ばっかさせるんだから……」

「ミナセ……」

 震える肩、震える声。そうだな……ミナセは俺が立ち直るまで信じてくれていた。ここに来る時も文句1つ言わずついて来てくれた。きっと、言いたいことを沢山我慢してついて来てくれたんだろう。俺を信じて。

 ユイを見る。彼女は少しだけ笑って、コクリと頷いた。

「すまなかった」

「ううん……分かってる……それがカズ君だもん。でもね、みんなを守るのと同じだけ……自分も守ってね。死んだりしたら私、絶対許さないから……」

 ミナセの震える体を抱きしめる。華奢な彼女。だけど、誰よりも頼りになる俺の相棒……ミナセにこんな顔をさせてしまうことに申し訳ない気持ちになる。

「……分かった。俺は絶対死なないって約束するよ」

「うん」

 ふと視線を感じて周囲を見渡すと、ユイがこちらを見ていた。そこに先ほどの怯えはなく、なぜかニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。

「な、なんだその視線は!?」

「いやぁ? ま、今回はマイに譲ってやるよ」

「何その言い方!? カズ君の彼女は私なんですけど!?」

 反射的にミナセが言い返す。すると誰かが口笛を吹いた。ミナセと2人で周囲を見ると、周りの探索者達もユイと同じようにニヤニヤと笑みを浮かべている。そこには先ほど助けた兄妹も混ざっていた。人が見ている所でミナセを抱きしめている事を自覚して、俺の顔が沸騰したように熱くなる。


「青春だねぇ」
「俺も若い時はなぁ」
「アンタはモテなかったから関係無いよね?」
「う、うるせぇ!」
「いいなぁ……」
「私もあんな風になりたいッス!!」


 俺達は同時に離れた。顔を真っ赤にしてユイに文句を言うミナセ。ミナセをからかって挑発するユイ。いつものような日常になんだか安心した。もう絶対こんな日常には戻れないと思っていた。そこへ帰って来れて……本当に良かった。

 だが、こうしてもいられない。他の区画も同じようにモンスターが発生しているだろう。急がなければ。


「他の区画にもモンスターがいるはずだ! 戦える者は他の区画に行くぞ!」


 皆に声をかけたその時、クラクションが鳴った。周囲の全員が目を向けた先、路地の奥から1台の乗用車がこちらへ突っ込んできた。

 周囲の探索者達が慌てて道を開ける。俺達の前に停車する車。そこにいた全員が車の中を覗き見る。しかし、クルマの窓はスモークがかっていて中がよく見えない。

 後方のドアが開き、中から茶色い毛玉のようなものがニュッと出て来た。

「ん~!!? で、出られないにゃ!! ちょっと押して欲しいにゃ!!」

 毛玉は車の中から押されるようにグニグニと外に溢れ出してくる。やがて手足が見え始めた。

「ちょ、ちょっとジーさんも手伝ってにゃ!!」

「ジーさんだと?」
「え、この話し方って……」
「もしかして……」

 ミナセとユイと顔を見合わせてしまう。

「早く! 急いでるにゃ!」

 中の毛玉に急かされて3人で引っ張り出す。そこへ探索者達も集まって来て、全員で思い切り毛玉を引き抜いた。引き抜かれた毛玉はアスファルトの上をゴロゴロ転がった後、ムックリと起き上がった。

「イタタタ……セダンに無理やり乗るもんじゃないにゃあ」

 起き上がった毛玉が頬の辺りをスリスリと両手で撫でる。その毛玉は俺達がよく知っている着ぐるみだった。


「「「ナーゴ!?」」」


 ナーゴは着ぐるみの目をパチパチと瞬きさせながら俺達のもとへ駆け寄って来る。

「ふふっ! ナーゴより、も~っとビックリする人がいるのにゃ!」

「どういう事だ?」

 ナーゴが乗用車へ手を振る。その車の奥から出て来たのは……。


 薄い青色の髪に紫のメッシュの入ったツインテール。それに黄色いローブを装備した少女。


「迎えに来たわ。ジーク、ミナセさん」


 攫われたはずの天王洲アイルが、俺達の目の前に現れた。




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