461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第278話 2人と1匹

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 ジークリードとミナセが秋葉原を出発してから1時間後。

 秋葉原の街では探索者達がモンスターと戦っていた。ジークリードの活躍によってボスである大蛇を倒し、ガウルベアの群れを退けた彼らだったが、その後末広町交差点に出現したリザードマンの対処に追われていた。

 現在、出現したモンスターは大通りである都道437号線へと追い込まれ、末広町交差点側と秋葉原駅方面の探索者達から挟み撃ちを受ける形となっていた。

 ダンジョン管理局の要請で集まって来た探索者達が裏通りからこの大通りへとモンスターを追い込み、大通りにいる探索者達がモンスターを倒す……経験の浅い者もモンスターをここへ追い込むだけならこなすことができた。

 さらに大通りからモンスターが逃げ出したとしても、それを抑える「ベテラン」が配置されていた。


 モンスターを秋葉原から出さないという点において最良の布陣。これはひとえに最大の脅威を排除したジークリード、そして後から合流し、この方法を提案したポイズン社長の功績であった。



 ──秋葉原、末広町交差点。
 

「にゃにゃにゃ!!」

「ギギャア!?」

 ナーゴが両手のクローでリザードマンを斬りつける。レベルポイントの光を吐き出しながら倒れ込むリザードマン。その体を踏み付けてナーゴは叫んだ。

「回復薬はまだまだあるにゃ~!! 怪我した人や魔力切れの人はナーゴの所に来るにゃ!」

 ナーゴの元へ数人の探索者が運び込まれる。怪我の浅い者には特製回復ドリンク、深い者には回復薬をかけて治療していく。そんな彼女の周囲を他の探索者達はしっかりと守っていた。

 そんなナーゴの視線の先に1人と1匹の姿があった。ユイと彼女の相棒、キル太。彼女達は他の探索者を守る為、自ら多くの敵を引き付けていた。

「キル太!!」
「ブギィ!!」

 ユイの肩からキル太が飛び出す。リザードマンの顔にキル太がベチョリとしがみついた影響で、リザードマンは無茶苦茶にその手の剣を振い始めた。

「グアアグ!?」

「そんな攻撃……っ!!」

 ユイがスライディングでリザードマンの懐に飛び込む。両手のバネを駆使して、リザードマンの顔面へ蹴りを放った。

物理攻撃上昇魔法インクリィズアタック!!」

 蹴りと同時に強化魔法を発動。ユイの強烈な蹴りを受けたリザードマンはレベルポイントの光を溢れさせながら頭上へ吹き飛ばされていった。

「ググア!?」
「グアアグ!?」
「ググッグ!!」

 仲間がやられた事でリザードマン達がユイの元へ集まって来る。起き上がったユイはチラリと周囲を見た。

 ……ナーゴも他の探索者達も動けそうにない。あの3体はアタシがやるしかないか。

物理防御上昇魔法フィジカルシルド!!」

 ユイの体が再び青く光る。3体のリザードマンの攻撃を両手の格闘用籠手で受け止め、反撃を試みる。しかし3対1は流石に分が悪く、ユイは押され始めてしまった。

「ブ、ブギ……!」

「今は飛び出すなキル太! ヤツらの攻撃の餌食になる!!」

 ガードを固めながら攻撃のチャンスを伺うユイ。彼女の頬に汗が流れる落ちる。

「マジか……ちょっとこの手数はキッツイな。大通りで戦ったのが仇になったか?」

 こんなんじゃ助っ人で来てくれたパララもん達に顔向けできない。アイツらは秋葉原駅方面をたった4人で引き受けてくれたんだから。

 ユイがチラリとナーゴ達を見る。ここまで頑張って来た秋葉原の探索者達だったが、度重なる先頭で疲れが見え始めている。こちらを助ける余裕はなさそうだ。

 ここはアタシ達が守らないと……!!

「うおおおおおお!!!」

 一瞬の隙を見て正面のリザードマンのみぞおちに掌底を叩き込む。右側面にいたリザードマンの足を払い、左にいたリザードマンの顔面を殴り付ける。倒れたリザードマンの頭上にキル太が飛び上がり、岩石化のスキルを発動。リザードマンを押し潰して倒した。

「よし! やったぞキル太!」
「ブギ~!」

 が、さらに8体のリザードマンが路地裏から現れた。

「クソ、またかよ……しつこいな!!」


 ユイがそう呟いたその時、彼女の周囲をドローンが飛び回った。


「これ……ドローン? 配信者か?」


〈ヤンナちゃんなんだ!〉
〈1人でモンスターめちゃくちゃ倒してるじゃん!〉
〈すごいお!〉
〈でもちょっと押されてる?〉
〈ちょうど良かったんちゃう?〉

 筆記魔法ワーダイトによってコメントが周囲に浮かんだのとほぼ同時に、ユイ達の周囲へ笑い声が響いた。


 ──オーホッホッホ!!!


「グギャ?」
「ギギ?」
「ググッグ?」


 リザードマン達が攻撃の手を止め、周囲をキョロキョロと見回す。すると突然、1体のリザードマンがビシリと凍り付いた。


 ──まずは1体ですわ~!!


 2対の剣が凍り付いたリザードマンを一閃する。粉々に砕け散ったリザードマン。その背後から、ピンク髪にクルクルヘアーの少女が飛び出した。


「お、お前……モモチー!?」


 驚愕の表情を浮かべるユイ。彼女を見たモモチーは満面の笑みを浮かべ、そしてなぜか恥ずかしそうに咳払いをした後、胸を天に突き出すように踏ん反り返った。


「オーホッホッホ!! 情け無いですわねヤンナユイさん! 天才ダンジョン配信者モモチー、助けに参りましたわ~!!」


〈モモチー!!〉
〈はぁはぁ……すごい迫力なんだ!?〉
〈興奮しすぎやろw〉
〈デカいからなぁモモチー〉
〈バルンバルンでエッ!!!〉
〈釘付けだお!〉
〈少女が友を救う時、私のパトスを熱くたぎらせる〉
〈たぎってて草w〉


「私の友だ……配信仲間に手を出すなんて許せませんわ!! まとめてぶち殺して差し上げますわよ!!」

 モモチーが舞うように戦場を駆け抜ける。フリーズエッジを発動し敵を粉砕、フレイムエッジで敵を玉砕。溶けた氷にサンダーエッジを流し込み範囲攻撃。コメント欄は大喝采に包まれた。

 さらに10体のリザードマンが集まって来る。ユイを庇うように両手に剣を構えたモモチー。彼女は横目でチラリとユイを見た。

「貴女にも見えるはずですわ。見果てぬ先まで続くワタクシ達の配信のロード……貴女はここで立ち止まるおつもり?」

「何言ってるか全く意味は分からないけど……やってやるよっ!! 和巳かずみに良い所見せるんだ!! キル太もそうだろ!?」

「ブギィ!!」

 敵に向かって構える2人と1匹。リザードマンが動き出そうとした瞬間、ユイが地面をガンと踏み付ける。


物理攻撃上昇魔法インクリィズアタック!!」


 魔法陣が広範囲に広がり、彼女達の姿が青く光る。

「ジークリードがアタシ達に託してくれたんだ! 絶対に雑魚モンスターをダンジョン周辺地区の外に出すなよ!!」

「分かっておりますわ。私もアイルさんから頼まれた事がありますの……行きますわよヤンナさん!! キル太!!」

「ブギブギィ!!!」

 2人と1匹は同時に駆け出す。自分達を取り囲む障害へと。

「フリーズエッジ!!」

「グギャァ!?」

 凍り付いたリザードマンにユイが飛び込む。彼女の攻撃を妨害しようとした別個体のリザードマン。それにキル太が体当たりしユイを守り、ユイは凍り付いたリザードマンへ右ストレートを放った。

「おらぁ!!!」

「ギアアアアアッ!?」

 リザードマンが粉々に砕け散る。キル太が地面へしゃがみ込んだすぐ真上をモモチーの剣撃が走り、彼女のフレイムエッジがリザードマンを燃やし尽くした。2人と1匹が戦場を駆け抜ける。互いが互いの攻撃を最大限に発揮し、弱点を補い、敵の数を確実に減らしていく。


〈ヤバババババ〉
〈息がピッタリなんだ!〉
〈これが……結束の力〉
〈成長したなモモチー〉
〈泣きそうなヤツおるやんけ〉
〈こんなの泣かない訳ないお!〉


「2人とも!! これ飲むにゃ!!!」


 2人の魔力が尽きそうになったタイミングでナーゴが特製ドリンクを投げ付ける。それを受け取った2人がゴクリとドリンクを飲むと、彼女達の魔力は最大まで回復。勢いを落とす事なくリザードマンの群れの中で暴れ続けた。


 ……。


 全てのリザードマンを倒し終え、ユイはペタンと道路に座り込んだ。


「はぁ……何とかなったぁ……ちょっと休憩……」


〈乙〉
〈2人ともお疲れ~〉
〈すごかったお!〉
〈全部倒しちゃったんだ!〉
〈秋葉原駅の方はパララもん達が戦ってたよな?〉
〈あっちの配信も行くか~!〉
〈私はもう少しモモチーを見守ろう〉


「さて、ここからアイルさんに頼まれてた事をやりますわよ」

「ん? 何だよ頼まれてた事って?」

 ユイの質問にモモチーがニヤリと笑みで返す。彼女はドローンに向かって声を上げた。


「みなさん! これから告知がありますわ!!」


 モモチーが配信を見ていた者達を呼び止め、ある告知・・・・を伝える。


〈マジ!!?〉
〈ヤバババババ!!!〉
〈スレ立てして来るんだ!!〉
〈ツェッターで拡散するお!!〉
〈めちゃくちゃ楽しみ!!〉
〈私も見にいくか〉


「え、お前……なんでそんな事……」

「これが、アイルさんの考えた攻略法なのですわ」


 モモチーは剣を鞘へ戻し、空を見上げた。その顔は感心するような、呆れるような不思議な表情をしている。

 アイルが何を考えているのか分からない。だけど、彼女がモモチーを呼んでくれたこと、モモチーが自分を助ける為に必死になってくれたこと……2人の友人に、ユイは心の中で感謝した。



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