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番外編ー六 それぞれの未来 《桔梗編》
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☆★☆ ★☆★ ☆★☆
今、わたしは三条邸の一室で、未だ名を明かさぬ賊と二人きりで対峙している。
わたしは男だけれど、一応十二単衣を身に纏い女然としている今、おまけに女御としては素顔を賊に晒すことは憚られるので檜扇を手に誰何している。
ふふっ…この檜扇は帝からプレゼントされた物だ。
誰に任せるでもなく自ら選んで下さった。
…いや日向の手を煩わせ、わたしに有らぬ疑いを持たせ、悩ませたのだが…まあ、その気持ちに免じて許して差し上げた。
帝はわたしとこうして心が通う前からプレゼントのことを考えておられたと云う。
なんて幸せなことだろう。
この檜扇は要に金で作られた蝶の飾り金具が控えめながらもその存在を主張して、六色の紐を両端で蜷結びにしている。
鳳凰が優雅に舞うさまはいつまでも見ていたくなる。
話しが逸れてしまったけれど、目の前の男は身なりもきっちりとしていて、賊と呼ぶのは可哀想だ。
しかし、わたしのいる部屋に忍んで来たのだ。これは立派な賊と云えよう。
「そなた、名は何と仰るの?」
「……」
「名は無いのですか?それは不便なことですね。付けて差し上げましょう。そうですね…」
「いえ…あります。あの…あなたさまは?」
「まあ、押し入ってきた相手に、ましてや名乗らぬ者になにゆえそのような…」
「申し訳ございません」
がばっと平伏し額が赤く腫れるのではと思うほどに床に擦り付け、あまつさえ震えはじめた。
失礼な。
そんなにわたしが怖いのか?押し問答のようなやり取りの後、ようやく名を明かしたその男は顔を上げることなく未だ床と仲良くしている。
左京の亮 藤原為佐。
これが賊の正体だ。
まだわからないこともあるけれど身なりもきっちりしているので、案じることはないだろう。
わたしが三条邸に里下がりしたのは昨日のこと。
東宮と二の宮に抱かれて度々飛香舎へ遊びに来る猫の三条を抱いていると、どこか懐かしいような不思議な感じがして、無性にかあさまのお墓参りに行きたくなった。
それは桔梗も同じだったらしく、二人で不思議だねと云い合った。
三条は妙に父上に懐き二の宮は悔しそうに父上の膝の上で昼寝をする子猫を自分の膝に乗せる。
三条は「にゃぁ」と鳴くだけで、二の宮の手をべろべろと舐め、まるで『あなたも好きですよ』と慰めているようで微笑ましい。
生まれてからそこまで日も経っていないのに、とても賢い猫だ。
以前苦し紛れで東宮に云ったまま実行されなかったお墓参りに行きたいと帝にお願いしたところ、快く…とはいかないけれど許して下さった。
どうやらわたしが東宮に云った事をご存知だったらしく「そう云えば、基良に云っていたものね」と仰った。
あの時は、どうやって後宮から離れるかばかりを考えていたけれど、帝はわたしのことを気にかけていて下さったのだろうか?
本当は気を遣わなくて良い六条のお屋敷が良かったけれど、父上に反対されてしまった。
いいえ、わかっていました。ちょっと、云ってみただけです。
今、わたしは三条邸の一室で、未だ名を明かさぬ賊と二人きりで対峙している。
わたしは男だけれど、一応十二単衣を身に纏い女然としている今、おまけに女御としては素顔を賊に晒すことは憚られるので檜扇を手に誰何している。
ふふっ…この檜扇は帝からプレゼントされた物だ。
誰に任せるでもなく自ら選んで下さった。
…いや日向の手を煩わせ、わたしに有らぬ疑いを持たせ、悩ませたのだが…まあ、その気持ちに免じて許して差し上げた。
帝はわたしとこうして心が通う前からプレゼントのことを考えておられたと云う。
なんて幸せなことだろう。
この檜扇は要に金で作られた蝶の飾り金具が控えめながらもその存在を主張して、六色の紐を両端で蜷結びにしている。
鳳凰が優雅に舞うさまはいつまでも見ていたくなる。
話しが逸れてしまったけれど、目の前の男は身なりもきっちりとしていて、賊と呼ぶのは可哀想だ。
しかし、わたしのいる部屋に忍んで来たのだ。これは立派な賊と云えよう。
「そなた、名は何と仰るの?」
「……」
「名は無いのですか?それは不便なことですね。付けて差し上げましょう。そうですね…」
「いえ…あります。あの…あなたさまは?」
「まあ、押し入ってきた相手に、ましてや名乗らぬ者になにゆえそのような…」
「申し訳ございません」
がばっと平伏し額が赤く腫れるのではと思うほどに床に擦り付け、あまつさえ震えはじめた。
失礼な。
そんなにわたしが怖いのか?押し問答のようなやり取りの後、ようやく名を明かしたその男は顔を上げることなく未だ床と仲良くしている。
左京の亮 藤原為佐。
これが賊の正体だ。
まだわからないこともあるけれど身なりもきっちりしているので、案じることはないだろう。
わたしが三条邸に里下がりしたのは昨日のこと。
東宮と二の宮に抱かれて度々飛香舎へ遊びに来る猫の三条を抱いていると、どこか懐かしいような不思議な感じがして、無性にかあさまのお墓参りに行きたくなった。
それは桔梗も同じだったらしく、二人で不思議だねと云い合った。
三条は妙に父上に懐き二の宮は悔しそうに父上の膝の上で昼寝をする子猫を自分の膝に乗せる。
三条は「にゃぁ」と鳴くだけで、二の宮の手をべろべろと舐め、まるで『あなたも好きですよ』と慰めているようで微笑ましい。
生まれてからそこまで日も経っていないのに、とても賢い猫だ。
以前苦し紛れで東宮に云ったまま実行されなかったお墓参りに行きたいと帝にお願いしたところ、快く…とはいかないけれど許して下さった。
どうやらわたしが東宮に云った事をご存知だったらしく「そう云えば、基良に云っていたものね」と仰った。
あの時は、どうやって後宮から離れるかばかりを考えていたけれど、帝はわたしのことを気にかけていて下さったのだろうか?
本当は気を遣わなくて良い六条のお屋敷が良かったけれど、父上に反対されてしまった。
いいえ、わかっていました。ちょっと、云ってみただけです。
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