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プロローグ
出会い
しおりを挟む一目惚れってあるんだな、と思った。
出会いは入学式の翌日だった。
その日はまだ授業は無く、部活の見学なんかするつもりも無かったので、担任の話が終わると直ぐに教室を出て校門に向かった。
中学の友達と会う約束をしていた。
『彰、会いたいの……』
長い春休みの間、毎日のように電話やメールでしつこく会ってくれと言われたが、邪魔臭くて断っていた。
しかし、学校に来られても面倒だと思い、渋々会う約束をしたのだ。
中学の友達…もっともその子は友達とは思ってないのかも知れないが…。
女の子の中では一番遊んだとは思う。
容姿も結構可愛いと思うし、男友達には羨ましがられていた。
勿論ホテルへ行った事もあるが、彰は特定の彼女を作る気は無かった。
他の子が彰に近付くのを牽制したり、彼女面するようになった頃に遊ぶのを止めていたのだった。
彰にしてみれば、付き合ってもいないのに今更会うのも、ましてや別れ話をする意味もないので、何故しつこいのか……いや、彰も分かってはいたのだ。
こちらにその気が無くても彼女だと、付き合っていると勘違いさせてしまったのは自分が悪かったと。
家へ帰って、着替えてから待ち合わせ場所の駅に向かう……。
暗くなる前に別れたい。
そんなことを考えながら、校門に向かって歩いていたその時だった。
突然風が吹いて桜の花弁が舞い上がった。
「あっ…」
声のする方を見ると、心が奪われた。
「……可愛い」
どこの学校にも桜の木は多く植えられているが、彰が昨日入学したこの高校は大きな桜の木があちこちに植えられていて、校門から伸びる通学路にも桜の並木道がある。
今朝から少し風が強くなってピンクの花弁が地面を覆っていたので、今の強い風は枝からも、地面に落ちた花弁も舞い上げて綺麗だった。
立ち止まってしばらくボォ~としていたらその子はもう帰った後だった。
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