エスポワールで会いましょう

茉莉花 香乃

文字の大きさ
31 / 52
第四章

4ー10

しおりを挟む
「ここ、冬になったらライトアップするらしいよ。この近くのクリスマスイルミネーションも綺麗だし冬になったらまた、来ような」

優しい笑顔の彰君に「うん」って答えたけど、僕は不安だった。

夏休み前の数日を学校で過ごすのが大変だったのに……。

こうして会えるのはもしかしたら夏休みだけなのかな……。

楽しい時間はあっと言う間に終わる。
帰りは水族館での話しをずっとしてた。

ラッコやペンギンのいかに可愛かったか、イルカの賢さを興奮気味で話した。

そうすると、彰君が、

「ユキの方がずっと可愛いよ」

何かボソッと言われた。

ちゃんと聞き取れなくて、「えっ?」って見ると、「何でもない」って…なんて言ったんだろうか?




エスポワールまで帰って来て、晩御飯も一緒に食べた。

エスポワールは夜に定食などの食事って感じのものは無かった。でも、日によってカレーやシチューがあったりするらしい。
マスターの気紛れで作られるそのカレーとシチューは絶品らしいので、今度僕も食べてみたいな。今日無いのが残念だよ。
今日はスパゲッティとオムレツを頼んで二人で分けて食べた。彰君が楽しそうにしてくれているので、僕も楽しいし、嬉しい。

「ねえ、また来週会ってくれる?」

おずおずって感じで彰君が聞いてくれる。

「うん、会いたい」
「ホント?…どこ行こうか?」
「あっ、あそこは?」

僕は動物園と遊園地が一緒になってる近くのパークの名を出した。
僕が小さい頃、毎年の様に家族で行った場所だ。

「あそこ、プールもあるよね?」
「うん……ユキ、プール入りたい?」
「えっ、別にどっちでもいいよ」
「俺は……嫌だ」

彰君泳げないのかな?水が怖いとか?

「彰、ユキちゃんなんか勘違いしてるみたいだぞ」

テーブルの食器を片付けに来たマスターがニヤニヤしながら彰君を見ていた。

「いいよ。勘違いでも。嫌なものは嫌なんだから」

何か分からないけど「いっぱい乗り物乗ろうね」って言ったら、頭撫でられた。

「じゃあ、今度は俺がお昼用意するよ」
「いいの?」
「ああ、でもサンドイッチな」
「うん、嬉しい」

彰君、料理とかするんだ。
意外。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

幼馴染は吸血鬼

ユーリ
BL
「お前の血を飲ませてくれ。ずーっとな」 幼馴染は吸血鬼である。しかも食事用の血液パックがなくなると首元に噛みついてきてーー 「俺の保存食としての自覚を持て」吸血鬼な攻×ごはん扱いの受「僕だけ、だよね?」幼馴染のふたりは文化祭をきっかけに急接近するーー??

幸せごはんの作り方

コッシー
BL
他界した姉の娘、雫ちゃんを引き取ることになった天野宗二朗。 しかし三十七年間独り身だった天野は、子供との接し方が分からず、料理も作れず、仕事ばかりの日々で、ずさんな育て方になっていた。 そんな天野を見かねた部下の水島彰がとった行動はーー。 仕事もプライベートも完璧優秀部下×仕事中心寡黙上司が、我が儘を知らない五歳の女の子と一緒に過ごすお話し。

全速力の君と

yoyo
BL
親友への恋心に蓋をするために、離れることを決めたはずなのに

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

処理中です...