エスポワールで会いましょう

茉莉花 香乃

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第五章

5ー03

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何言ってるの?
高校にも来たって事なのかな?

「どう言う事ですか?」
「ごめん…何度か行ったんだ。眼鏡掛けててびっくりした。前髪も……。可愛い顔が台無しだな。……それって、俺の所為?」
「違います」
「即答かよ……。でも、橘、見るたび明るくなって来て。声掛けるのなかなか勇気出なくて…今日こそって思った時に石原に…」

和希、また止めてくれたんだ。でも、どうして何も言ってくれなかったんだろう…。
当たり前か…。
また、下を向いてしまう事を和希が僕に言う筈ないよね。

「石原が『ストーカーですか?』って。そうだよな。立派なストーカーだよな…。
でも…裕樹……もう一度最初からやり直してくれないか?ずっとお前の事が好きだった。離れてから気付いたんだ。ずっと、忘れられなかった」

何を言っているんだろうこの人は?
本当に僕にした事を忘れているんじゃないだろうか?
そう言えば、告白の時にしか「好き」って言葉は聞かなかったんじゃないか…。
今更だよね。


「今度は誰の当て馬ですか?」
「えっ?それは…違うんだ」

もうこの人の言う事は信じない。

「知らなかったんですか?僕が知っていると。貴方の友達が親切に教えてくれたんです」

あの時の感情が蘇る。

でも涙なんか出ない。

そう言えば、あの時も泣かなかった。あの時は惨めすぎた。

「もう二度と会いません。小寺先輩。さようなら」

カフェを出てしばらく歩いた時、頬に冷たい物が伝って落ちた。

ようやく中学の時の気持ちに終止符を打つ事が出来たのかもしれない。



◇    ◇    ◇    ◇    ◇



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