エスポワールで会いましょう

茉莉花 香乃

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第七章

7ー05

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トボトボと歩いていると、宇喜多君が前から歩いて来た。

「あれ、橘?どしたの?」
「……」
「エスポワール、行かないの?こっちじゃ無いよ?」
「いえ、帰りますので」

宇喜多君は驚いていたけど、無視して歩き出した。


なんだか三年前を思い出す。


しばらく歩いていると「裕樹?」と後ろから抱き締められた。

その瞬間我慢してた涙が次々と溢れた。

「裕樹、どしたの?誠が外で会ったって言ってた。駅に向かってるって。……!なんで、泣いてるの?」

優しく眼鏡を取ってくれる手はいつもの彰君だ。

ハンカチで涙を拭いてくれる。

「ねえ、帰ろ?」
「嫌だ」
「なんで?」
「…矢嶋君と付き合うの?…僕は?…もう要らないの?」

涙でぐちゃぐちゃの顔で問う。

「?…なんで伊織?」
「だって、仲良しでしょ?さっきも凄く親しそうだった」
「伊織は誠と付き合ってるんだよ」
「えっ?」
「だから、伊織は誠と…」
「う…そ……」
「裕樹に嘘は言わないよ。ね、帰ろ?機嫌直して…泣き止んでよ」
「うん…でも凄く仲良さそうだったよ?学校でもいつも一緒にいたよ。そうだよ、いつも一緒だった…」

また、涙が出てくる。

「誠に頼まれてるから。あいつも大変なんだ。ここでいつ迄も裕樹を抱き締めてても良いけど、ほら…キスしたくなっちゃうからさ。お願い。帰ろ」
「!……」

外だった。



「う~…恥ずかし」
「でも、涙拭いたからさ、分からないよ」
「目、赤くなってない?」
「ちょっとね」
「…駅まで行って、顔洗って良い?」
「そんなことしなくても大丈夫だよ。どんな顔でも裕樹は可愛いから」
「彰君だけだよ。そんな事言うの」
「うん。だから、平気だろ?」


エスポワールの扉の前で彰君と話していると、

「何してるの?入っておいでよ」

中からケイさんが顔を出して言ってくれた。

彰君の背中にくっ付いて中に入ると、

「お~眼鏡して無い橘だ」
「うん。眼鏡無い方が良いね」

彰君の背中から顔だけ出すと宇喜多君と矢嶋君がカウンターに座ってこっちを見てた。すっと、また背中に隠れると、

「何?クラスメートなのに、恥ずかしいの?」

頭を思いっきり上下に振って返事すると、

「虐めんな」
「虐めてないよ」
「…航さん、奥空いてる?」
「おお、良いぞ」
「行こ、裕樹。誠も…」

四人で奥の席に座る。すっごい緊張する。

恥ずかし。

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