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side和ー1

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母さんは子どもの事より仕事が大事な人で、小さな頃から俺はよく裕樹の家で晩御飯を食べさせて貰った。

一人っ子の俺はお兄さんとお姉さんがいる裕樹が羨ましかった。

橘家の人たちはみんな俺の事を裕樹の兄弟のように優しく接してくれて、俺が曲がらずに成長出来たのは橘家の人たちのお陰だと思っている。

エスポワールは夜にバーになる。
最初は裕樹も知らなかったらしいけれど、裕樹らしいと言うか……外に看板があるんだよ…ちゃんと喫茶の終わる時間が書いてある。

俺は日によって違うけど、喫茶の時間には行ける。
迷惑になるから遅くなる時はなるべく遠慮しているけど、それでも良いよと月島のお叔父さんのマスターが言ってくれる。



◇◇◇◇◇



今日も裕樹からお誘いのメールが入った。

『今日は5時に上がるので5時半くらいには行ける』

そうメールすると『待ってる』と返事があった。


「こんにちは」
「いらっしゃい」

店内に入るとウエイターのケイさんが笑顔で迎えてくれた。
ケイさんは綺麗な男の人だ。

裕樹と月島が奥の席から出てきた。
輝くような笑顔で「和希」と寄って来る。月島は…うん微妙な顔だな。
でも、俺の事は完全な幼馴染で、ずっと裕樹を守ってきているのがわかってくれているので決して嫌な態度ではない。

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