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第一章
06
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「ジュリアン、どうした?」
授業が終わり次の授業のために教室を移動している時だった。
ダレルが立ち止まった僕に聞いてくれる。
「ちょっと、忘れ物」
「またかよ…ほんとジュリアンは…見かけによらずポケッとしてるよな」
悪かったな…。
呆れたような顔で呟くけど直ぐに笑顔で気を付けて行ってこいよと言ってくれた。
視界の端にアシュリーが見えた。
どこか心配そうに見えるのは気にして欲しいと思っているからだろうか?
プイッと前を向き何事もなかったかのようにカイルとアレンを従えて次の教室に向かうアシュリーに…やっぱり、たまたま目が合っただけなんだとがっかりした。
次の授業はないとさっき教授が仰っていたから、もう誰も残っていないと思っていたのに話し声が聞こえた。
「また…」
「ジュ……今…俺が…」
「おい!」
「えっ?」
教室の端にいたクラスメイトの話し声が不自然に途切れたことが気になるけど…入学してからこんなことはよくあったこと…。
何の話をしていたかは気にならないと言えば嘘になる。けど、話し掛けても逃げるように走って行く姿を見るくらいなら、出来るだけ気にしないように過ごすしかない。
「ここに座ってたから…」
忘れた教材は、いくら探しても見つからない。
「あっ、あのさ…これ…」
さっきのクラスメイトが、伏し目がちに差し出した物を見ると僕の教材だった。
「あ、ありがとう。探してたんだ」
良かったよ。
どっちが僕にこれを渡すか…その嫌な役を押し付けあっていたのか…。
でも、これでこの子たちとも仲良くなれるかな?と僕の淡い期待は儚く消えて、「じゃあ…」と勢いよく教室を出て行く背中に溜息を漏らした。
次の授業があるから僕もゆっくりはしてられない。
急いでイーノックたちの所に、僕の初めて出来た友だちの所に戻らなきゃ。
慌てて教室を出て行く僕を、扉の陰からアシュリーが見ていることには気付かなかった。
学校に慣れるにつれて、僕は休み時間などちょっとした空いてる時間によく行く所がある。
校舎の裏手にある花壇の傍のベンチだ。
近くに噴水もあって実家の庭を思い出す。別に寂しいとか懐かしいとかでここに来ている訳じゃない。
みんなの中にいると疲れる時があるんだ。
花壇にはそれぞれの季節に花が咲き、見ていると落ち着く。
こんなに素敵な場所なのにここで他の人をあまり見ない。みんな知らないんだろうか?
そう言えば、手入れしている人も見たことない。魔法で管理しているのかな?
ギルバートもここを気に入っていて手乗りサイズで走り回ってる。
寮の部屋では自由に動くことは出来ないから外で動けるのは嬉しいらしい。
疲れるのは入学直後より段々と増えているような気がする。特に魔法の授業の後は疲れが顕著に現れて辛い。
周りに迷惑かけてる訳じゃないみたいだからその点では問題はないけどね。
そうして何度もここに来ていると習慣になってしまい、疲れるとか関係なくギルバートと遊ぶために訪れることもある。
今日もベンチに座ってる。
もう直ぐ学年末の長期休暇が始まる。
初夏のこの季節は一年で一番鮮やかに花が咲く。
爽やかな風が吹き、ここは居心地が良い。
「ジュリアン、今日も見られてるな」
指輪から出てきても、僕のローブのポケットから出てこないギルバートが小さな声で言う。
「そうだね…この前の気配とは違うよね?」
「ああ、今日は二人だな」
僕を見張るようにこのベンチの周りで人の気配を感じる時がある。毎回ではないけれど気付くと近くで見られている様だ。
新たな虐めでも思い付いたのかと、初めてその気配を感じた時に不安になったけど何もアクションを起こすことはない。
ただ見ているだけで、僕が授業を受けるために教室にまた寮に戻るために立ち上がると、ササッと足早にその気配は消える。
何だったんだ?
と思うけれど聞くことは出来ない。だって僕の前に出てきてもくれないから話すことは出来ないじゃないか。
授業が終わり次の授業のために教室を移動している時だった。
ダレルが立ち止まった僕に聞いてくれる。
「ちょっと、忘れ物」
「またかよ…ほんとジュリアンは…見かけによらずポケッとしてるよな」
悪かったな…。
呆れたような顔で呟くけど直ぐに笑顔で気を付けて行ってこいよと言ってくれた。
視界の端にアシュリーが見えた。
どこか心配そうに見えるのは気にして欲しいと思っているからだろうか?
プイッと前を向き何事もなかったかのようにカイルとアレンを従えて次の教室に向かうアシュリーに…やっぱり、たまたま目が合っただけなんだとがっかりした。
次の授業はないとさっき教授が仰っていたから、もう誰も残っていないと思っていたのに話し声が聞こえた。
「また…」
「ジュ……今…俺が…」
「おい!」
「えっ?」
教室の端にいたクラスメイトの話し声が不自然に途切れたことが気になるけど…入学してからこんなことはよくあったこと…。
何の話をしていたかは気にならないと言えば嘘になる。けど、話し掛けても逃げるように走って行く姿を見るくらいなら、出来るだけ気にしないように過ごすしかない。
「ここに座ってたから…」
忘れた教材は、いくら探しても見つからない。
「あっ、あのさ…これ…」
さっきのクラスメイトが、伏し目がちに差し出した物を見ると僕の教材だった。
「あ、ありがとう。探してたんだ」
良かったよ。
どっちが僕にこれを渡すか…その嫌な役を押し付けあっていたのか…。
でも、これでこの子たちとも仲良くなれるかな?と僕の淡い期待は儚く消えて、「じゃあ…」と勢いよく教室を出て行く背中に溜息を漏らした。
次の授業があるから僕もゆっくりはしてられない。
急いでイーノックたちの所に、僕の初めて出来た友だちの所に戻らなきゃ。
慌てて教室を出て行く僕を、扉の陰からアシュリーが見ていることには気付かなかった。
学校に慣れるにつれて、僕は休み時間などちょっとした空いてる時間によく行く所がある。
校舎の裏手にある花壇の傍のベンチだ。
近くに噴水もあって実家の庭を思い出す。別に寂しいとか懐かしいとかでここに来ている訳じゃない。
みんなの中にいると疲れる時があるんだ。
花壇にはそれぞれの季節に花が咲き、見ていると落ち着く。
こんなに素敵な場所なのにここで他の人をあまり見ない。みんな知らないんだろうか?
そう言えば、手入れしている人も見たことない。魔法で管理しているのかな?
ギルバートもここを気に入っていて手乗りサイズで走り回ってる。
寮の部屋では自由に動くことは出来ないから外で動けるのは嬉しいらしい。
疲れるのは入学直後より段々と増えているような気がする。特に魔法の授業の後は疲れが顕著に現れて辛い。
周りに迷惑かけてる訳じゃないみたいだからその点では問題はないけどね。
そうして何度もここに来ていると習慣になってしまい、疲れるとか関係なくギルバートと遊ぶために訪れることもある。
今日もベンチに座ってる。
もう直ぐ学年末の長期休暇が始まる。
初夏のこの季節は一年で一番鮮やかに花が咲く。
爽やかな風が吹き、ここは居心地が良い。
「ジュリアン、今日も見られてるな」
指輪から出てきても、僕のローブのポケットから出てこないギルバートが小さな声で言う。
「そうだね…この前の気配とは違うよね?」
「ああ、今日は二人だな」
僕を見張るようにこのベンチの周りで人の気配を感じる時がある。毎回ではないけれど気付くと近くで見られている様だ。
新たな虐めでも思い付いたのかと、初めてその気配を感じた時に不安になったけど何もアクションを起こすことはない。
ただ見ているだけで、僕が授業を受けるために教室にまた寮に戻るために立ち上がると、ササッと足早にその気配は消える。
何だったんだ?
と思うけれど聞くことは出来ない。だって僕の前に出てきてもくれないから話すことは出来ないじゃないか。
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