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第三章
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「部屋に戻るか?」
いつにない優しい声に素直に頷いて答えた。騒ぎを聞きつけて何人かが部屋から出てきたから、抱かれているのも恥ずかしい。
「あの、降ろして?」
「歩けないだろ?」
そうかもしれない…。
涙も止まらないし、無様に歩くくらいならアシュリーに抱かれたまま早くこの場を立ち去りたかった。
「うん…」
「ち、ちょっと待てよ。いくら同室だからってジュリアンを独り占めはずるいんじゃないか?」
「お前じゃ、ジュリアンを守れない」
「じゃあ、アシュリーなら良いって言うのかよ?」
「ジュリアンに聞いたら良い」
えっ?
なんですと?
こんなに人がいるとこで、本人にも伝えていない気持ちを言えと?
口笛を吹いて囃し立てる者まで現れて困る。
「あ、あの……僕は…恥ずかし…」
アシュリーの腕の中で首に抱きついて顔を隠した。
「これが答えだな」
「ジュリアン、そうなのか?」
嫌だ。もう聞かないで欲しい。公開羞恥プレイは終わりにして!泣き止まない僕にそのクラスメイトはそれ以上は何も言わなかった。見ていた人も口笛を吹いたりするけど、部屋に戻る僕たちの邪魔をする人はいなかった。
横抱きにされたまま部屋に戻る。部屋に着いた途端、アシュリーから離れた。いつも一緒に寝ているベッドではなく、本当の自分のベッドに潜り込んだ。
しばらく涙が止まらなかったけれど、毛布の上から優しく撫でる手の存在に気付いたら、すっと気持ちが楽になったような気がした。来てくれたんだ。
「落ち着いたか?」
「うん」
目だけ出して、アシュリーを見ると傷付いたような顔だった。優しくしてくれたアシュリーから逃げるように離れたからかな?
「ごめん、助けてくれたのに」
「どうして…」
僕がアシュリーから離れたことかな?
「何?」
「どうしてこっちのベッドに…」
「だって…恥ずかしい」
アシュリーの言った「これが答えだな」はまさにそうだ。僕はみんなの前で「アシュリーが好き!」と本人に言う前に公言してしまったんだ。
おまけにアシュリーの気持ちが男の僕にあるはずも無く…。そう思うと悲しくなってくる。もう一緒には寝られないんだ。
「だって…気持ち悪いだろ?」
「何が?」
「だって、僕は…アシュリーが…」
「俺はジュリアンの事が好きだよ。ジュリアンは?」
わかってるのに…聞かないで欲しい。さっきはあんなふうにみんなに言ってたのに。
「からかってるの?」
だって、だってアシュリーは女の子が……。
「そんなことしない。ジュリアンの気持ち教えて?」
「僕はアシュリーの事が…『好き』」
小さな、小さな声で伝えた。
聞こえたかな?
恐る恐る顔を見るとなんか凄い笑顔だ。伝わったのだろうか?
「アシュ…?」
『聞こえたよ』
あれ?今、口が動かなかったような…。それに耳から聞こえなかった…。脳に直接響いた。何か違うような気がする。
「今のは、何?なんか変だよ?」
『わからない?わからないならキスするよ?』
「えっ?キスするの?」
『大丈夫だよ。わかったならキスしない』
「わかったら…キスしない…じゃあ、わ、わからない」
「なに可愛いこと言ってるんだよ」
あっ、今のは耳から聞こえた。僕が今の声とさっき脳に直接聞こえた声を思い出していると毛布を剥がして、覆いかぶさってきた。
直ぐ目の前に綺麗に輝く碧い瞳が少しずつ近づいてくる。唇がチュッと触れて直ぐに離れた。
ファーストキス…。
ぶわっと顔に熱が集まって、涙が出た。
「嫌なのか?」
「バカ、嫌じゃないけど突然過ぎる」
『だって、キスしたかったんだろ?』
「だって…。それで?教えてよ」
「思考伝達だな、テレパシーだよ。俺とお前だけの」
「二人だけ?」
「そうだよ。父君から聞いたことない?『〈ミシェル〉って名前』」
ドクンと心臓が跳ねた。
ドクドクと力が溢れるのを感じる。いつもは気を張っていない時に、漏れ出すようにふわふわと出て行くのに今は身体を覆っているように感じる。
「何これ?変だよ」
アシュリーの身体に抱きついて震えた。抱き付いたって治るわけないと思っていても、何かに縋りたい。けど、それは徐々に収まり、僕の身体とあろうことかアシュリーの身体をも覆っていた。
いつにない優しい声に素直に頷いて答えた。騒ぎを聞きつけて何人かが部屋から出てきたから、抱かれているのも恥ずかしい。
「あの、降ろして?」
「歩けないだろ?」
そうかもしれない…。
涙も止まらないし、無様に歩くくらいならアシュリーに抱かれたまま早くこの場を立ち去りたかった。
「うん…」
「ち、ちょっと待てよ。いくら同室だからってジュリアンを独り占めはずるいんじゃないか?」
「お前じゃ、ジュリアンを守れない」
「じゃあ、アシュリーなら良いって言うのかよ?」
「ジュリアンに聞いたら良い」
えっ?
なんですと?
こんなに人がいるとこで、本人にも伝えていない気持ちを言えと?
口笛を吹いて囃し立てる者まで現れて困る。
「あ、あの……僕は…恥ずかし…」
アシュリーの腕の中で首に抱きついて顔を隠した。
「これが答えだな」
「ジュリアン、そうなのか?」
嫌だ。もう聞かないで欲しい。公開羞恥プレイは終わりにして!泣き止まない僕にそのクラスメイトはそれ以上は何も言わなかった。見ていた人も口笛を吹いたりするけど、部屋に戻る僕たちの邪魔をする人はいなかった。
横抱きにされたまま部屋に戻る。部屋に着いた途端、アシュリーから離れた。いつも一緒に寝ているベッドではなく、本当の自分のベッドに潜り込んだ。
しばらく涙が止まらなかったけれど、毛布の上から優しく撫でる手の存在に気付いたら、すっと気持ちが楽になったような気がした。来てくれたんだ。
「落ち着いたか?」
「うん」
目だけ出して、アシュリーを見ると傷付いたような顔だった。優しくしてくれたアシュリーから逃げるように離れたからかな?
「ごめん、助けてくれたのに」
「どうして…」
僕がアシュリーから離れたことかな?
「何?」
「どうしてこっちのベッドに…」
「だって…恥ずかしい」
アシュリーの言った「これが答えだな」はまさにそうだ。僕はみんなの前で「アシュリーが好き!」と本人に言う前に公言してしまったんだ。
おまけにアシュリーの気持ちが男の僕にあるはずも無く…。そう思うと悲しくなってくる。もう一緒には寝られないんだ。
「だって…気持ち悪いだろ?」
「何が?」
「だって、僕は…アシュリーが…」
「俺はジュリアンの事が好きだよ。ジュリアンは?」
わかってるのに…聞かないで欲しい。さっきはあんなふうにみんなに言ってたのに。
「からかってるの?」
だって、だってアシュリーは女の子が……。
「そんなことしない。ジュリアンの気持ち教えて?」
「僕はアシュリーの事が…『好き』」
小さな、小さな声で伝えた。
聞こえたかな?
恐る恐る顔を見るとなんか凄い笑顔だ。伝わったのだろうか?
「アシュ…?」
『聞こえたよ』
あれ?今、口が動かなかったような…。それに耳から聞こえなかった…。脳に直接響いた。何か違うような気がする。
「今のは、何?なんか変だよ?」
『わからない?わからないならキスするよ?』
「えっ?キスするの?」
『大丈夫だよ。わかったならキスしない』
「わかったら…キスしない…じゃあ、わ、わからない」
「なに可愛いこと言ってるんだよ」
あっ、今のは耳から聞こえた。僕が今の声とさっき脳に直接聞こえた声を思い出していると毛布を剥がして、覆いかぶさってきた。
直ぐ目の前に綺麗に輝く碧い瞳が少しずつ近づいてくる。唇がチュッと触れて直ぐに離れた。
ファーストキス…。
ぶわっと顔に熱が集まって、涙が出た。
「嫌なのか?」
「バカ、嫌じゃないけど突然過ぎる」
『だって、キスしたかったんだろ?』
「だって…。それで?教えてよ」
「思考伝達だな、テレパシーだよ。俺とお前だけの」
「二人だけ?」
「そうだよ。父君から聞いたことない?『〈ミシェル〉って名前』」
ドクンと心臓が跳ねた。
ドクドクと力が溢れるのを感じる。いつもは気を張っていない時に、漏れ出すようにふわふわと出て行くのに今は身体を覆っているように感じる。
「何これ?変だよ」
アシュリーの身体に抱きついて震えた。抱き付いたって治るわけないと思っていても、何かに縋りたい。けど、それは徐々に収まり、僕の身体とあろうことかアシュリーの身体をも覆っていた。
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