29 / 173
第三章
11
しおりを挟む
着替えるために控室に入ると、アシュリーは僕を横抱きにしたまま、まるでダンスを踊るように部屋を横切りソファーに座る。
僕を抱いたまま用意されていたお茶を飲み、僕にも…抱いたままお茶を飲ませてくれてようやく落ち着いた。
アシュリーは一頻りキスをした後、着替えようかと僕を抱いたまま立ち上がった。
ドレスを脱いで会場に戻るとイーノックとダレルが待っていた。
「あれ、着替えたのですか?」
「俺とも踊ってくれよ」
「わ、わかったの?」
「何が?」
「アシュリーと踊ってたのが僕だって…」
「そりゃ、わかりますよ」
そうか、二人には小さな頃女装してたって教えたからわかったんだ。
「みんな、次は自分と踊って貰おうとジュリアンを待ってたのに、さっさと出て行くし、着替えてるし」
「あの…みんな?みんな、僕だってわかったってこと?」
二人だけじゃなくて、みんなに知られてるってこと?
「そうだよ?同級生はだいたいわかってるんじゃないかな?」
軽くショックを受ける。
『アシュリー…どうしよう』
『大丈夫だよ。俺のジュリアンだから、誰にも渡さない。俺が守るから』
『あの…アシュ?』
『ああ、ごめん』
みんなが周りにいるのに僕を強く抱きしめる。
「誰も、アシュリーから奪えるとは思ってませんから。案外ヘタレなんですね、アシュリーは」
「イーノックまで、ヘタレって言わなくても…」
「いや、ジュリアンの事に関しては随分、意気地なしだからな」
「どう言うこと?」
アシュリーは意気地なしなんかじゃない。何かの間違いじゃないのかな。
「ジュリアンは気付いてないと思うけど…」
「ちょ、ダレル!」
「良いじゃん。ジュリアン、聞きたいよな?」
「うん」
どんな勘違いをしているかちゃんと聞いて、アシュリーの無実を晴らしてあげないと!
「入学してからずっと、アシュリーはジュリアンの事見てた。それはクラスのみんなが知ってる。まあさ、みんな狙ってたんだけどな」
「それなのに見守るだけで、ジュリアンになかなか声を掛けられなかったのです。ようやく側に置いたと思えば、それでも進展しない」
「俺たち、やきもきしたよな?」
「そうですね。他の人たちは二人がくっ付くまでになんとかしようと頑張っていたようですけど、ヘタレはヘタレなりに頑張ったんですかね」
えっ……そうなんだ。
でも、僕にはとってもかっこいいアシュリーなんだから!
『アシュ、ありがとう、大好き』
『ああ、俺も好きだよ』
アシュリーは二人に何か言いたげだったけど軽く睨み、ため息を吐いてそれ以上何も言わなかった。
その後、僕はアシュリーに抱きしめられたまま身動きが取れなかった。イーノックとダレルにからかわれながらみんなの注目を集めていたみたいだった。
次の日は僕の誕生パーティー。
イライザさまや噂好きの友だちから僕がドレスを着たことを聞いた母上は嬉々としてドレスを持って僕の部屋まで来た。
それは真っ赤なパーティードレスで、イライザさま同様今日のために…着るか着ないかわからないのに、着たくないといつも言っているのに…用意されたものだった。
シルバーのウイッグもしっかり持っていた。
恐ろしい…。
勿論主役として、男として出席しなければならないからドレスは着られないと説明すると、項垂れてしまった。
「じゃあ、来年のアシュリーの誕生パーティーには、わたしも出席するわ。その時にもう一度ドレスを着てね」
と瞳を潤ませてお願いされた。
アシュリーを見ると笑顔で頷いてる。アシュリーとダンス…もう二度と出来ないかもと思っていたけど、来年の予定が組み込まれてしまった。
「アシュリー、僕は従姉妹のローザと踊らないといけないけど…ごめんね」
「仕方ないさ。俺がドレスを着るわけにはいかないからさ」
「ふふっ、見てみたい」
「ジュリ?気持ち悪いだろ?」
「アシュリーは僕がどんな格好してても関係ないと言ってくれたけど、僕もそうだよ?でも、アシュリーのドレス姿はおかしいかな…ふふっ」
「ジュリアン……、ねえ、ローザってどんな子?」
「えっとね…母上の妹の子なんだけど、同級生でね、僕の事は女の子だと思ってて、百合が好きみたいなんだ」
「百合?」
「そうだよ。一年生の時、最初に踊った時に百合だねって呟いてたから」
「ああ…」
「何曲も踊らされてさ、嫌なんだよね」
「そうだな、何曲も踊ってたな」
「知ってるの?」
「当たり前だよ。いつも見てたから」
「嬉しい。僕は…見てられなかった」
「俺は一曲だけだよ?」
「うん…、でも嫌だったから下向いてた」
「それも知ってる。そうか…嫌だから…だったんだな」
アシュリーは何故か上機嫌で僕にキスをすると、挨拶に行こうかと立ち上がった。
僕を抱いたまま用意されていたお茶を飲み、僕にも…抱いたままお茶を飲ませてくれてようやく落ち着いた。
アシュリーは一頻りキスをした後、着替えようかと僕を抱いたまま立ち上がった。
ドレスを脱いで会場に戻るとイーノックとダレルが待っていた。
「あれ、着替えたのですか?」
「俺とも踊ってくれよ」
「わ、わかったの?」
「何が?」
「アシュリーと踊ってたのが僕だって…」
「そりゃ、わかりますよ」
そうか、二人には小さな頃女装してたって教えたからわかったんだ。
「みんな、次は自分と踊って貰おうとジュリアンを待ってたのに、さっさと出て行くし、着替えてるし」
「あの…みんな?みんな、僕だってわかったってこと?」
二人だけじゃなくて、みんなに知られてるってこと?
「そうだよ?同級生はだいたいわかってるんじゃないかな?」
軽くショックを受ける。
『アシュリー…どうしよう』
『大丈夫だよ。俺のジュリアンだから、誰にも渡さない。俺が守るから』
『あの…アシュ?』
『ああ、ごめん』
みんなが周りにいるのに僕を強く抱きしめる。
「誰も、アシュリーから奪えるとは思ってませんから。案外ヘタレなんですね、アシュリーは」
「イーノックまで、ヘタレって言わなくても…」
「いや、ジュリアンの事に関しては随分、意気地なしだからな」
「どう言うこと?」
アシュリーは意気地なしなんかじゃない。何かの間違いじゃないのかな。
「ジュリアンは気付いてないと思うけど…」
「ちょ、ダレル!」
「良いじゃん。ジュリアン、聞きたいよな?」
「うん」
どんな勘違いをしているかちゃんと聞いて、アシュリーの無実を晴らしてあげないと!
「入学してからずっと、アシュリーはジュリアンの事見てた。それはクラスのみんなが知ってる。まあさ、みんな狙ってたんだけどな」
「それなのに見守るだけで、ジュリアンになかなか声を掛けられなかったのです。ようやく側に置いたと思えば、それでも進展しない」
「俺たち、やきもきしたよな?」
「そうですね。他の人たちは二人がくっ付くまでになんとかしようと頑張っていたようですけど、ヘタレはヘタレなりに頑張ったんですかね」
えっ……そうなんだ。
でも、僕にはとってもかっこいいアシュリーなんだから!
『アシュ、ありがとう、大好き』
『ああ、俺も好きだよ』
アシュリーは二人に何か言いたげだったけど軽く睨み、ため息を吐いてそれ以上何も言わなかった。
その後、僕はアシュリーに抱きしめられたまま身動きが取れなかった。イーノックとダレルにからかわれながらみんなの注目を集めていたみたいだった。
次の日は僕の誕生パーティー。
イライザさまや噂好きの友だちから僕がドレスを着たことを聞いた母上は嬉々としてドレスを持って僕の部屋まで来た。
それは真っ赤なパーティードレスで、イライザさま同様今日のために…着るか着ないかわからないのに、着たくないといつも言っているのに…用意されたものだった。
シルバーのウイッグもしっかり持っていた。
恐ろしい…。
勿論主役として、男として出席しなければならないからドレスは着られないと説明すると、項垂れてしまった。
「じゃあ、来年のアシュリーの誕生パーティーには、わたしも出席するわ。その時にもう一度ドレスを着てね」
と瞳を潤ませてお願いされた。
アシュリーを見ると笑顔で頷いてる。アシュリーとダンス…もう二度と出来ないかもと思っていたけど、来年の予定が組み込まれてしまった。
「アシュリー、僕は従姉妹のローザと踊らないといけないけど…ごめんね」
「仕方ないさ。俺がドレスを着るわけにはいかないからさ」
「ふふっ、見てみたい」
「ジュリ?気持ち悪いだろ?」
「アシュリーは僕がどんな格好してても関係ないと言ってくれたけど、僕もそうだよ?でも、アシュリーのドレス姿はおかしいかな…ふふっ」
「ジュリアン……、ねえ、ローザってどんな子?」
「えっとね…母上の妹の子なんだけど、同級生でね、僕の事は女の子だと思ってて、百合が好きみたいなんだ」
「百合?」
「そうだよ。一年生の時、最初に踊った時に百合だねって呟いてたから」
「ああ…」
「何曲も踊らされてさ、嫌なんだよね」
「そうだな、何曲も踊ってたな」
「知ってるの?」
「当たり前だよ。いつも見てたから」
「嬉しい。僕は…見てられなかった」
「俺は一曲だけだよ?」
「うん…、でも嫌だったから下向いてた」
「それも知ってる。そうか…嫌だから…だったんだな」
アシュリーは何故か上機嫌で僕にキスをすると、挨拶に行こうかと立ち上がった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
145
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる