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男の酷い言動からレイラさんを隠すために俺も優もレイラさんの前に出る。周りでは密かにこの男から他のお客様を守りながらホストの人たちが誘導を始めていた。
優が眉をひそめて声を張る。
「き……申し訳ないけど、貴方みたいな人にこの人を任せられない」
優様、今きもいって言いかけなかった?
それでもき、だけで抑えた優の言葉に男は反応した。いやきもいってことじゃなくてそのあとの言葉に。
「何……?」
唯の言葉にビキリと青筋を立てる男がまた、正気とは思えない顔になる。噴火する勢い叫び出した。
「お前たちみたいな下等な人間が俺に話しかけるな!さっさっとレイラを渡せ!…………何をしてるお前らこういう時のために俺の後ろに立っているんだろ!?こんな奴ら殺してしまえ!!」
たくさんの悲鳴が上がる中で、今まで動きもしなかった黒スーツ集団が走り出した。なんの感情も無さそうにものすごい速さで走り出す。15人くらいだろうか。どこから出したのか黒い棒のようなものをいつのまにか手にしている。
「裏に行って!!」
鹿野さんが何人かを相手にしながら俺たちに向かって叫んだ。すぐにレイラさんの腕を掴み通路に向かう。
横で胡蝶さんは統制をとって怖くて立てなくなっているお客様を誘導していた。こんな時でも彼らは行動が一貫しているのはサクラ姉さんの教育の賜物だろう。
しかし、あと一歩で裏へと入れたのに黒スーツに囲まれた。
幸いなことと言えば他のお客様に標的とならない事だ。こちらは3人も居るのだから俺たちがどうにかしてレイラさんを守らなければ。
それでも優しいレイラさんは首を振った。
「貴方達を傷つけるなんてダメよ、私が行けば……」
「レイラさん、大丈夫ですよ」
こんな時でも唯は綺麗に笑うのだ。だからこそ男が頑張らないとって思わせてくれる。
その瞬間レイラさんに伸びた黒スーツの手を唯が振り払うと今度は振り落とされた黒い棒をその腕で受け止めた。一瞬歪めてもすぐに笑うのだ。
「唯!」
「……大丈夫」
流石に嘘だ。
それでも笑うから俺が痛いよ。
だめだ、こんなの。
「おい、ふざけんなよ……せめて自分で戦えよ!」
なんとか1人の棒を掴みとり、奪い取った。拳が1発肩にに当たるがそんなもの。
持った黒い棒の方が何倍も硬い、こんなの当たって笑うなよ唯。
「流石に俺もムカついた……」
優様が1人を蹴飛ばした。あの細い腰にどれほどの威力があるのかわからないが、急所に入ったようでうずくまる。
やるう、優様。
とは言えは体格が違ければ人数も倍。すぐに次の手が出てかすりつつも避けて隙を狙うが、黒スーツの何も写していない目はもう一度唯を狙った。
武器がある俺が前に出て受け止めるが今度は全員でくるのが分かり、3人でレイラさんを覆い隠す。強い衝撃に思わずバランスが崩れたが、なんとかレイラさんを真ん中で守ることができた。
それでも袋叩きになるだろう。
「ナニ、してんの?」
聞きなれた声が聞こえるとドゴォッと激しい音が数回、それから低いうめき声が聞こえてきた。
衝撃が止まり顔を上げると、黒スーツは全員地面に横になっている。
遠くでは鹿野さんのパンチがあの気味の悪い男にクリーンヒット。サクラ姉さんの教育はもしかしたら腕っ節も教えてるのかもしれない。
「鹿野さんやるなあ」
呑気な声を上げたのは優だった。
「レイラさん、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫だけど君たちが……!」
涙で濡れた頰を唯が胸のハンカチを取り出して当てる。
「貴方に怪我が無いことが大事なので」
ふんわり笑う唯には、本当に感服だ。
呑気に考えながらもう必要のない黒い棒を捨てようとしたら握ったまま離すことができないし、立ち上がろうとしたら足に力が入らない。
「あれ……」
ああ、俺安心してるんだこの人の顔見て。
らしくない真顔の瑠衣先輩に思わず笑ってしまう。
「瑠衣先輩、顔怖いですよ」
「…………」
何も返事がない代わりに身体を支えて立たせてくれた。
「ありがとうございます」
これまた反応がないが、通路から足音が聞こえた。
そのメンツに俺は本格的に安心してきて支えてくれる瑠衣先輩に寄り添ってしまった。
抱きしめられると心まであったかい。
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