sweet!!

仔犬

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笑ってくれた秋と優に心があったかくなるも、秋が出て行ったのを見送れば空気が重くなったような気がする。

氷怜先輩がタバコに火をつけ静かに吐き出した。
おおお、無言が刺さる。その間も赤羽さんは気にする様子もなく、優の怪我を聞いていた。

「俺はそこまで怪我は無いと……」

「絆創膏だけ貼りましょうか」

優も気付いてなかったのか赤羽さんが手を持った。切り傷のようなものが出来ている。あれだけ乱闘していればそりゃ何かしらの傷はできるはずだ。

ごめんと謝り出す前に優がおれをみた。

「大丈夫だから」


困った顔で笑われたらもう何も言えない。うう、美味しいもの作ってあげよう。そしておれは謝りたい人に顔を向けた。


「あの……先輩ごめんなさい!!」


もう色んな約束を破ってしまった。
それを見ていたイノさんがおれたちのソファの横でまた勢いよく頭を下げた。

「氷怜、唯叱らないでやってくれ。アゲハ達がわがまま言うのも予測付いてたくせに唯ひとりにした。それに正直、女性守る男のポリシーも痛いほどわかる。そもそも俺が招いた事だ」

それよりもまたもやイノさんが謝っていることの方が問題だ。思わず立ち上がった事によりテーブルに腕をぶつけた


「イノさんは悪く……いった?!」

「唯?」

イノさんが心配そうに声をあげた。


忘れてた痛みがテーブルにぶつけた事により倍になって帰ってきたのだ。


「唯斗さん見せてください」


赤羽さんが落ち着いてと言いながらゆっくり袖をまくっていく。あ、なんかこれデジャブ。

ゆっくり、丁寧に赤羽さんがおれの腕を触るがその小さな振動がそれだけで痛い。嫌な予感がする……見た目もちょっと腫れてるような。


「ヒビが入ってるかもしれません」


珍しく真顔な赤羽さんがおれの目をみた。そこでやっと先輩達から反応をもらえたがイノさんに向かっていた目線がおれたちに戻っただけだ。

おれにもそれが怒りなのかよく分からなかった。それでも確実に怒られると思っているので背筋が伸び正座である。

優が痛いかどうか聞いてくれるが怪我がどうこうよりもおれはさらに申し訳なくなって情けない声が出た。

「ご、ごめんなさい……」

「俺の知り合いに医者やってる奴がいる。この時間でも見てくれるから連絡取ってくるわ……おい、お前らこいつら怒んなよ!」


そう言い残してスマホを取り出したイノさんは通路に出てドアが閉める。通路から声が漏れて電話しているのがわかった。おれはもうなんと言っていいか分からず涙目で優も困った顔をしながら暮刃先輩の様子を伺っている。

赤羽さんがおれの腕を冷やしながら固定していく静かな空間にため息が落ちた。暮刃先輩のそれに優が不安そうな顔をすると、暮刃先輩の表情にやっと色が乗る。


「氷怜……流石に大人気ないね。俺ら」

「…………はあ」

ため息にビクついたおれに、タバコを置いた氷怜先輩がもう真顔じゃない。
ちょっとむくれたように言うのだ。
あれ怒ってない……?


「悪かった。痛い思いも、怖い思いもさせたのに怖がらせて」

「ほえ」


まさか、謝られるとは思わず変な声が出てしまい、自分のほっぺをつまむ。腕の固定が終わったおれを氷怜先輩が手招きするので移動すると暮刃先輩も優を同じように呼んでいた。

氷怜先輩と暮刃先輩の間に座ったおれたちの頭に先輩の手が乗った。おれの固定された腕に優しくキスが落とされた。

「ちゃんとお前、俺たちに声だけかけたいってフロア連れてったやつらに言っただろ。サクラに連絡入ってた」

あ、キラネさん本当に連絡入れといてくれたのか流されてしまったのかと思っていた。暮刃先輩が優の手の傷をに当たらないようにその手を包み込む。

そのままおれをみた暮刃先輩がいつもの笑顔で、やっと心臓が治まってきた。

「それに、唯が女性の手を振り払ったりしないのもわかってて、氷怜はイノが居るから大丈夫と勝手に任せた訳。だから部屋から自分の意思で出て行ったんじゃ無いし怒ってないよ。まあ部屋から出るくらいそもそも許したら良いんだけどね……」

「悪かったな口うるさくて」


まだむくれている氷怜先輩がそっぽを向いた。
あれ、これ今思っちゃダメなのかもしれないけど、死ぬほど可愛く無い?あの氷怜先輩がむくれてるんだよ?

「唯、顔」

優がつついてきたのでどうにかして真顔を取り戻した。注意しときながら優もちょっと笑ってる。


「まあ、何に腹を立てたかと言えばお前らがそんなことになってるの気づけなかった事だよ」

「瑠衣だってたまたまトレイ行くついでにフロア覗いて出くわしただけだからね」

「それが無かったらもっとやばかったろお前ら、勝手に安心しきった自分が許せねぇだけだから気にすんなよ」


ちゃんと安心するように最後は笑ってくれた氷怜先輩にすでにおれは抱きついていた。そして腕のことを忘れてぶつける。


「いった!……いけど氷怜先輩好き、でも痛いーー」

「大人しくしろよ」


笑いながら頭の後ろを包み込むように抱かれて撫でられたら、なんかもう全部が安心した。そしたら逆に痛みが倍増してくるし訳が分からなくなってくる。


「痛がるなら抱きつくな」

「うわー、難しいぃぃ」


バグってきたおれを優と暮刃先輩が同じようにくすくす笑っていた。優の髪をすいてその黒髪に口づけを落とした暮刃先輩がドアの向こうを見た。

「ま、今回一番きたのは瑠衣みたいだよ」

「瑠衣先輩ちょっと様子おかしかったですよね」

優が首をかしげるとまあねと頷いた。

「あの成金男、警察も行くし不正暴いたからもう結構どん底だよ。瑠衣が知ってる奴らしくて、ブチ切れそうに見てたからやるなら社会的にやれって言っておいた」

「え?」

なんだか不穏な事になってきた。

「俺たちの中で一番わがままだけど、瑠衣って短気じゃ無いんだよ。だから怒らせたら怖いのはあいつ」

「ああ、それはうちの一人っ子代表もです」


優が暮刃先輩の言葉に頷いてなぜかおれを見てくる。暮刃先輩までいい笑顔でおれを見ると、赤羽さんが吹き出した。
なぜ?


しかも、氷怜先輩を見たら目線をそらされた。
なぜ?


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