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ツッコまずにはいられない
しおりを挟む白春さゆは自販機を5歩ほど離れたところから眺めていた。もちろん買いたいものはドリンク。ミルクティー。
でもまだ買えないのだ。先客がいる。もう1分待った。
「ミルクティー……無糖紅茶……いや、ミルクティー」
2分。腕時計が確実に進んでいるにも関わらず、それでも目の前の男は悩んでいる。
さゆは数を数え始め、頭の中で数式が並び始めた。だが数を数えれば数えるほど待たされていると気付かされてしまう。作戦を変更して午後の仕事のスケジュールを反復することした。そこで思い出す、コピーに行かなければ行けない。コピー機は遠く、そこに自販機はないやはり今買うしかないのだ。仕方がない、先に買わせてもらおう。
「あの」
「え!あ!」
ピ!と聞きなれた音がしてドリンクが下に落ちた音がした。声に驚き後ろを振り向いた拍子に肘でボタンを押したのだ。
男はゆっくりと飲み物を取り出した
「……おしるこ」
「ご、ごめんなさい」
おしるこを見つめたまましょげているので、流石にそのまま立ち去るには気が引けた。
「あの、代わりに買います。どれですか?」
「え、いや、いいんです!というより、待たせていたんですよねすみません。どうぞ」
どうぞのところで自販機の前から動かれてしまったので、もうこれ以上居ても気まずい。さゆはぺこりと頭を下げてミルクティ下のボタンを押そうとする。
何故か男が物凄い見ている、横からミルクティを買うさゆを注意深く。それでも買わなければいみがないのだ。こんな変な時間を使ってまで買わないなんて馬鹿にも程がある。
飲み物が落下音に上半身を下げて取り出そうとした。その時先ほどの男がか細い声を出したのだ。
「……あの、その、ミルクティ美味しいですか?」
「え、まあ、美味しいです……」
とっさに答えたがこのミルクティは年中売っているし、CMにもなっている。飲んだことがないのだろうか。それに、改めて聞かれるとほんとうに美味しいのか不安になってしまう。とは言え不味ければ買っていない。答えはイエスであっている。
「そうなんだ……」
考え始めた男に変な人だと、さゆは直感で思った。それよりも、早くコピーに行かなければ。ただやはりおしるこを持った男に罪悪感が湧く。
「あの、本当にいいんですか?」
「え?」
「おしるこ、いらないんでしょう?新しいの買いますけど」
「僕の、不注意ですから」
ゆっくり話す様子に、悪い人ではないのだろうとは思う。釈然としないがいいと言っているなら良いのだ、そう言うものだ。自分に言い聞かせて会話を終結に向けた。
「えーと、では」
さようならと言うには何も知らない相手に、曖昧な言葉をかけてさゆは立ち去る。いや、立ち去りたかった。角を曲がろうとした時にその声が聞こえなければ。
「……おしるこって何?」
お前はどこの星からきた。
さゆは方向転換し男のおしるこを睨みながら自分が買ったミルクティを押し付けた。目も見れない、怒りなのか不憫なのかもわからない。
「どっちも飲めばいい!!」
訳のわからない感情が混ざり合って、そのせいで悪役みたいな捨て台詞で立ち去ってしまったのだ。
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