容姿端麗文武両道なカップルは異世界でも悠々自適だが少し特殊だ。

北への旅路

70.気軽なお散歩か

広げられた大きな翼が嬉しそうに羽ばたいた。

「じゃあ行ってくるわね」

「パパ寂しがっちゃダメだよ」

「俺の部屋いじらないで」


それぞれ思い思いの言葉でいつもと変わらない減らず口。晫斗は相変わらず眠そうで、清も涼もにこにこしたまま特に言い残すこともなさそうだ。


「男だけだからってお花くらい飾りなさいよね」


零蘭が笑うと綺麗な白い羽を羽ばたかせるとすぐに全員のその姿は光って消えていく。その一瞬で目的地の近くまで行ったのだろう。

朝普通に朝食を食べ、荷物も街にお出かけと変わらない量、服だけが長距離移動にと用意したものだが、相変わらず露出は多いし、軽装だ。晫斗も敬紫も重いと嫌がって鎧もつけない。


「散歩かよ……」


カインとウルエラ、イガルが旅立ちを見送るがあっさりしたものだった。


「とか言ってさみしいんでしょー！」

「お前にだけは言われたくねぇよウルエラ」

「なんのことだか」

「心配ない、あやつらはもう我が教えることも残ってない」



その実力を認めているカインがじっと雛野たちが消えた空間を見つめた。

「どちらかと言えばこの世界から消える時だよ、心配なのは。最後くらいはちゃんと顏出しに来ないと許さねぇ」


そんな前兆は無かったが、なにせ何をしでかすかわからない人間の集まりだ。どんな魔法を覚えてくるか分かったものではない。恐らく元の世界に変える方法だって……。


「なんだ、結局パパになってた訳か」

「うるせえよ」


ギルドを開けることを他のメンバーには話していなかった。どんな騒ぎになるかわからないが、この後報告する事で恐らく泣き崩れる男どもがわんさかいるだろう。そう思うと帰るのが億劫になってきたイガル。依頼だと言って誤魔化そうと心に決める。


「まあ、さみしいけどさ。オレはどんな大きい知らせをくれるかちょっと楽しみなんだよね」

「それについては期待を裏切る奴らじゃねぇだろ」


ウルエラが先頭を切ってギルドに戻っていく。その顔は満たされていた。それに続くイガルもカインもなぜか誇らしい。


何か大きなことをしてくれると確信のある人間を送り出したのだから。