1 / 6
1
しおりを挟む
イバラの砦に彼は眠る。
「どんな夢を見ているのでしょうね」
半永久なる眠りの魔法を彼にかけた当の魔法使い、シャルトリュスは優しげな笑みを浮かべて呟いた。
トゲつきの鋭い蔦が縦横無尽に這う、眠れる彼以外に誰一人住人のいない城。
とっくの昔に光を絶やしたシャンデリアは蜘蛛の巣だらけ。
火の熱さを忘れた暖炉に巣食うは凍てついた暗闇のみ。
どこもかしこも朽ちかけた荒城において彼が眠る塔の最上階だけは整えられていた、それはそれはラグジュアリーでドレッシーでエレガンスな空間に。
「また子守りに来てるのか、シャル」
彼が眠る天蓋つきのベッドに両腕を乗せてニコニコしていたシャルトリュスは振り向いた。
いつの間に背後に精悍な顔立ちをした男が立っていた。
男の名は「隻眼の魔法使い」として各大国に名を馳せる上級ウィザードクラスのラグドル。
左目蓋に縦一文字に走る傷跡も特徴的だが。
しなやか逞しい長身痩せ型筋肉質の超絶モデル体型でロングジャケットを着こなし、まことに映(ば)えるスタイル、いつなんどきどこにいようと女性陣の注目を集める。
ワイルド感満載なレザーパンツと紐ブーツを纏う足は嫌味なくらい長ったらしい。
人に寄っては下手すれば若白髪に見間違われるシルバーアッシュの短髪頭がこれまたキマっていた。
「君だって、私がここに来る度に顔を見せるじゃないですか。ひょっとしたら私よりも君の方が頻繁にこの城を訪れているんじゃないですか?」
なまっちろい肌。
一つに結われた長く柔らかな黒髪。
丸眼鏡に地味な黒ローブ。
二十代半ばに見える外見をしたラグドルよりもいくつか年上っぽい、落ち着いた雰囲気のシャルトリュス。
落ち着いているのもそのはずだろう。
御年数百歳、超上級ウィザードクラスにあられるのだから。
「コイツは殺すべきだったんだ」
先程のシャルトリュスの問いかけを無視したラグドル、物騒なことをのたまった。
「俺が十六で死ぬ呪いをかけてやったのにアンタが余計な魔法を仕掛けやがって、こんな七面倒なことになった」
自分の隣に立ち、乾いた眼差しで眠り人を見下ろすラグドルに、調度品のイスに腰掛けたシャルトリュスは微苦笑した。
眠り人の名はペルシア。
禍々しい「破滅の力」をその身に宿して彼はこの世に生まれ落ちた。
「破滅の力」が開花するのは十七の誕生日を迎えたとき。
ラグドル、そのほか数名の国仕えのウィザードらはある人物から情報を齎され、誕生を祝う宴へ乗り込み、せめてもの慈悲をかけて「十六の誕生日の日没までに死す」という強力な呪いをかけた。
そんな強力な呪いを、さらにさらに強力な別の魔法で上書きしたのがシャルトリュスだった。
『死ぬのではなく眠るだけ。真の恋人からのキスにより目覚める』
よってペルシアは十六になる日まですくすくと育った。
ラグドルらに「破滅の力」を宿していると告げられて恐れた両親から幽閉されたこの塔で。
そうして運命のときは訪れた。
十六になり、半永久の眠りに落ち、これ幸いにと家族は立ち去り、ひとり、豪奢なベッドに取り残された。
代わりにやってきたのがシャルトリュスだった。
決して十七になることのない、十六のまま眠り続ける、自分自身が定めた運命の行末を見守りに度々やってきた。
ペルシアが眠りについて半世紀のときが流れても、尚。
「どんな夢を見ているのでしょうね」
半永久なる眠りの魔法を彼にかけた当の魔法使い、シャルトリュスは優しげな笑みを浮かべて呟いた。
トゲつきの鋭い蔦が縦横無尽に這う、眠れる彼以外に誰一人住人のいない城。
とっくの昔に光を絶やしたシャンデリアは蜘蛛の巣だらけ。
火の熱さを忘れた暖炉に巣食うは凍てついた暗闇のみ。
どこもかしこも朽ちかけた荒城において彼が眠る塔の最上階だけは整えられていた、それはそれはラグジュアリーでドレッシーでエレガンスな空間に。
「また子守りに来てるのか、シャル」
彼が眠る天蓋つきのベッドに両腕を乗せてニコニコしていたシャルトリュスは振り向いた。
いつの間に背後に精悍な顔立ちをした男が立っていた。
男の名は「隻眼の魔法使い」として各大国に名を馳せる上級ウィザードクラスのラグドル。
左目蓋に縦一文字に走る傷跡も特徴的だが。
しなやか逞しい長身痩せ型筋肉質の超絶モデル体型でロングジャケットを着こなし、まことに映(ば)えるスタイル、いつなんどきどこにいようと女性陣の注目を集める。
ワイルド感満載なレザーパンツと紐ブーツを纏う足は嫌味なくらい長ったらしい。
人に寄っては下手すれば若白髪に見間違われるシルバーアッシュの短髪頭がこれまたキマっていた。
「君だって、私がここに来る度に顔を見せるじゃないですか。ひょっとしたら私よりも君の方が頻繁にこの城を訪れているんじゃないですか?」
なまっちろい肌。
一つに結われた長く柔らかな黒髪。
丸眼鏡に地味な黒ローブ。
二十代半ばに見える外見をしたラグドルよりもいくつか年上っぽい、落ち着いた雰囲気のシャルトリュス。
落ち着いているのもそのはずだろう。
御年数百歳、超上級ウィザードクラスにあられるのだから。
「コイツは殺すべきだったんだ」
先程のシャルトリュスの問いかけを無視したラグドル、物騒なことをのたまった。
「俺が十六で死ぬ呪いをかけてやったのにアンタが余計な魔法を仕掛けやがって、こんな七面倒なことになった」
自分の隣に立ち、乾いた眼差しで眠り人を見下ろすラグドルに、調度品のイスに腰掛けたシャルトリュスは微苦笑した。
眠り人の名はペルシア。
禍々しい「破滅の力」をその身に宿して彼はこの世に生まれ落ちた。
「破滅の力」が開花するのは十七の誕生日を迎えたとき。
ラグドル、そのほか数名の国仕えのウィザードらはある人物から情報を齎され、誕生を祝う宴へ乗り込み、せめてもの慈悲をかけて「十六の誕生日の日没までに死す」という強力な呪いをかけた。
そんな強力な呪いを、さらにさらに強力な別の魔法で上書きしたのがシャルトリュスだった。
『死ぬのではなく眠るだけ。真の恋人からのキスにより目覚める』
よってペルシアは十六になる日まですくすくと育った。
ラグドルらに「破滅の力」を宿していると告げられて恐れた両親から幽閉されたこの塔で。
そうして運命のときは訪れた。
十六になり、半永久の眠りに落ち、これ幸いにと家族は立ち去り、ひとり、豪奢なベッドに取り残された。
代わりにやってきたのがシャルトリュスだった。
決して十七になることのない、十六のまま眠り続ける、自分自身が定めた運命の行末を見守りに度々やってきた。
ペルシアが眠りについて半世紀のときが流れても、尚。
1
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
可哀想は可愛い
綿毛ぽぽ
BL
平民、ビビり、陰キャなセシリオは王立魔術学園へ入学を機に高校デビューを目指したが敢え無く失敗し不良のパシリをさせられる毎日。
同室者の男にも呆れられ絶望するセシリオに天使のような男が現れるが、彼もかなりイカれた野郎のようで……?セシリオは理想の平和な学園生活を送る事が出来るだろうか。また激重感情を抱えた男から逃げられるだろうか。
「むむむ無理無理!助けて!」
━━━━━━━━━━━
ろくな男はいません。
世界観がごちゃごちゃです。余り深く考えずに暖かい目で読んで頂けたら、と思います。
表紙はくま様からお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる