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「……窓際の特等席があるだろ、取り巻きが陣取ってる」
「今日からは君と昼休みを過ごしたくて」
完全に委縮している拓斗と警戒態勢に入ったのが一目瞭然な心春を他所に、凌貴は、取り澄ました笑顔のまま伊吹生と同じテーブルについた。
「伊吹生君とクラスが別々になってしまったから、残り少ない高校生活、少しでも恋人の君と一緒にいたいと思って」
伊吹生は眩暈がした。
しかし何とか踏ん張り、自分の斜向かいに座る、しかめっ面の心春の隣で静々と食事を始めた凌貴を一瞥して味噌汁を飲み干そうとした。
「それにしても伊吹生君、二股していたの?」
危うく噎せそうになった。
「それとも三股?」
「は?」
「オメガの心春さん、それからベータの拓斗君と」
伊吹生の隣でぎこちなくラーメンを啜っていた拓斗は完全に噎せた。
「僕がちょっと目を離していた隙に随分と大胆なことをするね」
不自然に静かな周囲が聞き耳を立てているのは明らかで、拓斗と心春に迷惑をかけないよう、伊吹生は馬鹿馬鹿しいにも程がある凌貴の発言を律儀に咎める。
「デマの元になるから適当なことを抜かすのはやめてくれ。お前の言葉を鵜呑みにする信者が大勢いるんだ」
「デマ、ね。春休み中に君が引っ越しのバイトをしていたのは本当だよね」
「えっ……イブキ、バイトしてたの?」
「……知らなかった」
拓斗・心春にも伝えていなかったバイトのことを凌貴にさらりと明かされて伊吹生は面食らう。
「なんで知ってるんだ」
「君に相応しいバイト、僕が紹介してあげたのに。何なら時成兄さんを通じてもっと条件のいい仕事をあてがうこともできた」
「自分にどんな仕事が合ってるかは自分で決める」
卒がない所作でビーフシチューを味わう凌貴から視線を逸らし、日替わり定食を食べ進めながらも、伊吹生は疑問に思う。
自分の行動が凌貴に筒抜けだ。
花見のときも怪しんだが、家族にしか知らせていなかった引っ越しバイトについて、一体どうやって知りえたのか。
(誰かに見張らせているんじゃないだろうな)
……いや、そういえば最近覚えがある、誰かに見られているような妙な感覚が時々あった。
「凌貴、お前……」
「?」
問い質したい気持ちもあったが、拓斗と心春を自分たちの諍いの巻き添えにしたくはなく、伊吹生は苦虫を噛み潰したような顔で日替わり定食を半ば自棄気味に平らげた。
夜、リビングで家族が見ていたニュース番組から気になるワードが聞こえて伊吹生はテレビに目を向けた。
「……忽那ホテル&リゾート……」
格式高い高級志向に重きをおき、リゾート地や主要都市にブランド展開している大手のホテルグループ。
東南アジアに海外進出もし、新規開業を祝して開かれた現地でのオープニングパーティーの様子が流れていた。
ほんの数秒間、華やかな輪の中にスーツ姿の凌貴が映り込んで伊吹生は思わず息を止める。
(だからしばらく休んでたのか)
でも、海外にいたのなら尚更、どうして俺の動向を把握していたのか。
まさか本当に誰かを使って監視でもしているのか?
(悪趣味な奴)
バイトをしたのは少しでも凌貴への借りを軽くするためだ。
一千万なんて金額、そうそう簡単には用意できないが、今の内からコツコツ返していけば。
(気が遠くなる話だ、でも、やるしかない)
そういえばと、伊吹生はテレビに意識を戻したが番組は次のニュースを報じていた。
実際に一千万を調達してくれたという凌貴の兄・時成(ときなり)も映っていたのか、見逃した……。
「今日からは君と昼休みを過ごしたくて」
完全に委縮している拓斗と警戒態勢に入ったのが一目瞭然な心春を他所に、凌貴は、取り澄ました笑顔のまま伊吹生と同じテーブルについた。
「伊吹生君とクラスが別々になってしまったから、残り少ない高校生活、少しでも恋人の君と一緒にいたいと思って」
伊吹生は眩暈がした。
しかし何とか踏ん張り、自分の斜向かいに座る、しかめっ面の心春の隣で静々と食事を始めた凌貴を一瞥して味噌汁を飲み干そうとした。
「それにしても伊吹生君、二股していたの?」
危うく噎せそうになった。
「それとも三股?」
「は?」
「オメガの心春さん、それからベータの拓斗君と」
伊吹生の隣でぎこちなくラーメンを啜っていた拓斗は完全に噎せた。
「僕がちょっと目を離していた隙に随分と大胆なことをするね」
不自然に静かな周囲が聞き耳を立てているのは明らかで、拓斗と心春に迷惑をかけないよう、伊吹生は馬鹿馬鹿しいにも程がある凌貴の発言を律儀に咎める。
「デマの元になるから適当なことを抜かすのはやめてくれ。お前の言葉を鵜呑みにする信者が大勢いるんだ」
「デマ、ね。春休み中に君が引っ越しのバイトをしていたのは本当だよね」
「えっ……イブキ、バイトしてたの?」
「……知らなかった」
拓斗・心春にも伝えていなかったバイトのことを凌貴にさらりと明かされて伊吹生は面食らう。
「なんで知ってるんだ」
「君に相応しいバイト、僕が紹介してあげたのに。何なら時成兄さんを通じてもっと条件のいい仕事をあてがうこともできた」
「自分にどんな仕事が合ってるかは自分で決める」
卒がない所作でビーフシチューを味わう凌貴から視線を逸らし、日替わり定食を食べ進めながらも、伊吹生は疑問に思う。
自分の行動が凌貴に筒抜けだ。
花見のときも怪しんだが、家族にしか知らせていなかった引っ越しバイトについて、一体どうやって知りえたのか。
(誰かに見張らせているんじゃないだろうな)
……いや、そういえば最近覚えがある、誰かに見られているような妙な感覚が時々あった。
「凌貴、お前……」
「?」
問い質したい気持ちもあったが、拓斗と心春を自分たちの諍いの巻き添えにしたくはなく、伊吹生は苦虫を噛み潰したような顔で日替わり定食を半ば自棄気味に平らげた。
夜、リビングで家族が見ていたニュース番組から気になるワードが聞こえて伊吹生はテレビに目を向けた。
「……忽那ホテル&リゾート……」
格式高い高級志向に重きをおき、リゾート地や主要都市にブランド展開している大手のホテルグループ。
東南アジアに海外進出もし、新規開業を祝して開かれた現地でのオープニングパーティーの様子が流れていた。
ほんの数秒間、華やかな輪の中にスーツ姿の凌貴が映り込んで伊吹生は思わず息を止める。
(だからしばらく休んでたのか)
でも、海外にいたのなら尚更、どうして俺の動向を把握していたのか。
まさか本当に誰かを使って監視でもしているのか?
(悪趣味な奴)
バイトをしたのは少しでも凌貴への借りを軽くするためだ。
一千万なんて金額、そうそう簡単には用意できないが、今の内からコツコツ返していけば。
(気が遠くなる話だ、でも、やるしかない)
そういえばと、伊吹生はテレビに意識を戻したが番組は次のニュースを報じていた。
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