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6-1-週末
「あ~泣けた~、やばい~、予想以上に面白かった、この映画」
「予定調和で凝り固めたみたいな内容じゃなかったか?」
「イブキはそう言うと思った~」
週末、拓斗に誘われて伊吹生は映画を見に駅ビルを訪れていた。
エンドロールが終わり、隣でえらく感嘆している様子の拓斗に伊吹生は首を傾げる。
「今までアクション映画が多かったのに、今日は珍しく恋愛映画だったな」
「あ~。Caetlaがおすすめしてたんだよ」
「サエラ……?」
「イブキね~、高校生なんだから話題のインフルエンサーくらい把握しとかないと」
「そんなに有名なのか」
「めっちゃくちゃ可愛い美少女インフルエンサー! 今見せるから、えーと」
「とりあえず出よう、拓斗」
スマホをいじり始めた拓斗を促して伊吹生は映画館を出た。
「ていうかイブキ自分で検索してみて!」
「昼、どうする、上で何か食べるか?」
「ちゃんとCaetla見て! 早く!」
あまり興味のないインフルエンサーについて調べろと拓斗に急かされ、伊吹生は斜め掛けのショルダーバッグからスマホを取り出そうとした。
ふと何気なく視線を向けた先に凌貴がいて反射的に立ち竦んだ。
ほんの一瞬、幻覚でも見ているのかと白昼夢に足を掬われ、黒ずくめの私服姿で濃厚な存在感を放つ彼に微笑みかけられて我に返った。
「伊吹生君、こんにちは」
ゆったりとした足取りで歩み寄ってきた凌貴に伊吹生は仏頂面と化す。
「すごい偶然だね」
「こんな偶然あるか」
訝しむ伊吹生が即座に言い切れば凌貴は艶やかな唇を吊り上げてみせた。
「僕と君の間に偶然はない。約束もしていない週末に巡り会うのは必然ってことかな。まるで固い絆で結ばれたツガイみたいだね」
(適当なことばかり抜かす奴め)
俗世を疎んじている凌貴が駅ビルにいること自体がちぐはぐで、まるで待ち構えていたような対応ぶりは自分の行動を把握しているとしか言いようがなく、伊吹生は眉間の縦皺をもう一つ増やした。
(絶対に小細工があるはずだ)
「イブキぃ」
自分の後ろに隠れている拓斗に腕を突っつかれて、公共の場で凌貴と詰り合うのも不毛かと、伊吹生は眉間の縦皺を減らす。
「今から一緒にランチでもどうかな」
「行かない」
「時成兄さんもいるけど」
「……お前の兄さんが?」
「会いたがっていたよね? お礼がしたいって」
確かに凌貴の兄には一度会っておかなければと思っていた。
一千万円を出してくれた礼をしたいと常々考えていた。
「それなら行く。悪いが、拓斗、今日はここで――」
「拓斗君も一緒においで」
伊吹生は再び仏頂面に戻った。
「拓斗はいいだろ」
「仲間外れはよくないと思って」
「わざとらしい嘘はやめろ、拓斗、もう帰っていい」
「伊吹生君と一番仲がいい拓斗君と僕も親しくなりたいんだ」
大人びたミドル丈のコートを羽織った凌貴に笑いかけられて拓斗は子犬みたいにビクビクする。
真っ向から圧倒してくるアルファから庇うように立ち塞がった伊吹生は、板挟みになって困惑しているベータのクラスメートを肩越しに見、歯痒さに駆られた。
「拓斗君もぜひおいで」
どうにも凌貴に引く気はないらしい。
一体、どういう思惑があるのか……。
「予定調和で凝り固めたみたいな内容じゃなかったか?」
「イブキはそう言うと思った~」
週末、拓斗に誘われて伊吹生は映画を見に駅ビルを訪れていた。
エンドロールが終わり、隣でえらく感嘆している様子の拓斗に伊吹生は首を傾げる。
「今までアクション映画が多かったのに、今日は珍しく恋愛映画だったな」
「あ~。Caetlaがおすすめしてたんだよ」
「サエラ……?」
「イブキね~、高校生なんだから話題のインフルエンサーくらい把握しとかないと」
「そんなに有名なのか」
「めっちゃくちゃ可愛い美少女インフルエンサー! 今見せるから、えーと」
「とりあえず出よう、拓斗」
スマホをいじり始めた拓斗を促して伊吹生は映画館を出た。
「ていうかイブキ自分で検索してみて!」
「昼、どうする、上で何か食べるか?」
「ちゃんとCaetla見て! 早く!」
あまり興味のないインフルエンサーについて調べろと拓斗に急かされ、伊吹生は斜め掛けのショルダーバッグからスマホを取り出そうとした。
ふと何気なく視線を向けた先に凌貴がいて反射的に立ち竦んだ。
ほんの一瞬、幻覚でも見ているのかと白昼夢に足を掬われ、黒ずくめの私服姿で濃厚な存在感を放つ彼に微笑みかけられて我に返った。
「伊吹生君、こんにちは」
ゆったりとした足取りで歩み寄ってきた凌貴に伊吹生は仏頂面と化す。
「すごい偶然だね」
「こんな偶然あるか」
訝しむ伊吹生が即座に言い切れば凌貴は艶やかな唇を吊り上げてみせた。
「僕と君の間に偶然はない。約束もしていない週末に巡り会うのは必然ってことかな。まるで固い絆で結ばれたツガイみたいだね」
(適当なことばかり抜かす奴め)
俗世を疎んじている凌貴が駅ビルにいること自体がちぐはぐで、まるで待ち構えていたような対応ぶりは自分の行動を把握しているとしか言いようがなく、伊吹生は眉間の縦皺をもう一つ増やした。
(絶対に小細工があるはずだ)
「イブキぃ」
自分の後ろに隠れている拓斗に腕を突っつかれて、公共の場で凌貴と詰り合うのも不毛かと、伊吹生は眉間の縦皺を減らす。
「今から一緒にランチでもどうかな」
「行かない」
「時成兄さんもいるけど」
「……お前の兄さんが?」
「会いたがっていたよね? お礼がしたいって」
確かに凌貴の兄には一度会っておかなければと思っていた。
一千万円を出してくれた礼をしたいと常々考えていた。
「それなら行く。悪いが、拓斗、今日はここで――」
「拓斗君も一緒においで」
伊吹生は再び仏頂面に戻った。
「拓斗はいいだろ」
「仲間外れはよくないと思って」
「わざとらしい嘘はやめろ、拓斗、もう帰っていい」
「伊吹生君と一番仲がいい拓斗君と僕も親しくなりたいんだ」
大人びたミドル丈のコートを羽織った凌貴に笑いかけられて拓斗は子犬みたいにビクビクする。
真っ向から圧倒してくるアルファから庇うように立ち塞がった伊吹生は、板挟みになって困惑しているベータのクラスメートを肩越しに見、歯痒さに駆られた。
「拓斗君もぜひおいで」
どうにも凌貴に引く気はないらしい。
一体、どういう思惑があるのか……。
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