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「お会計を」
また速やかに支払いを済ませようとした凌貴に伊吹生はすかさず言い放つ。
「俺も出す」
「伊吹生君はいいよ」
「……いや、あのな。ずっと疑問に思ってるんだが」
「?」
結局、ランチの代金も有無を言わさず凌貴に支払われた。
街路樹が規則正しく連なる通りに出た伊吹生はわざわざ彼と向かい合い、今日一日持て余していた疑問をぶつける。
「今日はお前の誕生日なのに、どうして俺にプレゼントばかりしてくるんだ?」
今日は凌貴の誕生日だった。
それなのに服を買ってもらい、ランチまでご馳走になり、調子が狂った伊吹生は正直に違和感を打ち明ける。
「普通、逆だろ」
「最初に言ったよね、伊吹生君。今日は何でも僕の言うことを聞いてくれるって」
『今日はお前の誕生日だから、この間の礼も込めて一日言うことを聞く』
結局、スマホの件で帳消しだと思いながらも。
その追跡アプリを頼りに助けにきてくれた凌貴にお返しをしないでいるのは、どうにも後味が悪くてモヤモヤし、伊吹生は一日奴隷……一日イエスマンになることを自ら提案したのだ。
「大好きな人を自分の好きなように着飾って、一緒にランチをして、僕にとって最上級に有意義な誕生日を過ごしているつもりだけど?」
そう言って、凌貴が正面から腰を抱き寄せてきたものだから伊吹生は咄嗟に顔を背けた。
「何? キスされると思った?」
「……勘弁してくれ」
「何でも言うこと聞いてくれるんだよね? 伊吹生君自身が僕へのプレゼントなんだよね?」
通行人の視線を痛いくらい感じて伊吹生は逃げ出したくなる。
しかし自分から一日イエスマンを宣言した手前、引くに引けない……。
「君と行きたいところがまだまだあるんだよ」
伊吹生は両腕の輪を一向に緩めようとしない凌貴を横目でジロリと睨んだ。
「不健全な場所には行かないぞ、俺はまだ未成年なんだからな」
「そっか。僕はもう成人済みで、まだ十七歳の伊吹生君は未成年なのか。それって何だかすごくそそられるね……」
「ッ……おい、押しつけてくるな!」
凌貴が次に選んだデート場所は、それはもう健全極まりないスポットであった。
(本気なのか、凌貴)
自家用車で一時間かけて移動して辿り着いた先は郊外の遊園地だった。
装飾されたゲートの前には人が疎らにいる、週末ということもあってアトラクションを楽しむ利用者の歓声やら悲鳴が園内から盛んに聞こえてきた。
「伊吹生君と来てみたかったんだ」
どうやら本気らしい凌貴の言葉に伊吹生は覚悟を決める。
「絶叫系とか平気なのか、お前」
「絶叫系?」
「最初に断言しておく、お化け屋敷は絶対無理だからな」
「おばけやしき」
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