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「やめろ、凌貴」
凌貴は指通りのいい髪の毛を乱していた伊吹生の手を掴み、右腕に刻まれた二つの傷痕に順々にキスをした。
「初めて名前で呼んでくれましたね」
当時の記憶が生々しく宿る古傷に乱杭歯をあてがい、やんわり刺激する。
「頼むから俺に触るな」
「伊吹生さん、勃起していますが」
「……してない」
「この状態のまま、接客するんですか……?」
繊細な輪郭をした手が伊吹生の昂ぶりを服越しに包み込んだ。
「ほら。もうこんなに硬くしてる」
捕食的な口づけで隈なく濡れた胸の突起に唇を被せ、新たな唾液で濡らしながら、凌貴は多感な熱源をじっくり揉みしだいた。
「ぁッ……おい、凌貴……ッ」
「立派な雄の象徴。過去の恋人達はさぞ悦んで咽び泣いたでしょうね」
「触るな……」
「ただし。菖さんのことがあってから、これといった恋人の影はなかった。どうしていたんです? 一夜限りの関係ですか?」
抗う気力も失せかけ、凌貴の真下で悶えるしかなかった伊吹生はそっぽを向く。舌打ちして些細な反抗心を示せば、招かれざる客人がゴクリと喉を鳴らしたのがわかった。
「う……」
片手で器用に伊吹生のベルトを外し、ファスナーを全開にすると、凌貴はボクサーパンツの内側に利き手を忍び込ませてきた。
「すごい」
「ふ……っ……ぅぅ……」
「僕の手の中でビクビクしています。もしかして誰かに触れられるのは久し振りですか?」
先月のカーニバル・デイ以来、ほぼ一ヶ月振りとなる飲血に伊吹生の体はひどく昂揚していた。押し寄せてくる性的興奮も一入だった。
外気に取り出された、脈打つペニスに真珠色の五指が絡みつくと、独りでに腰が跳ねる。上下に愛撫されると先端の鈴口は罪深げに濡れた。根元からせり上がってくる射精欲に弛みがちな口は陶然と喘いだ。
「はッ……はぁ……ッ」
胸を反らせば貪欲な唇に再び捕らわれた。コリコリとしてきた乳首を交互に舐め吸われ、同時に熱源をしごかれる。
伊吹生はきつく目を閉じた。
「伊吹生さん」
余念のない奉仕を続ける凌貴に、うっとりとした声で強請られる。
「閉じないで。貴方の綺麗な目、見せてください」
催眠術にでもかかったかのように伊吹生は従順に目を開く。
その瞳の色は凌貴と同じ赤銅色に染まっていた。
「吸血種らしい獰猛なおめめですね」
「……今、何時だ……早く終わらせろ……」
「セックスしてもいいんですか?」
「ち、違……」
恍惚と理性の間を忙しなく行き来していた伊吹生は焦る。すっかり濡れそぼって、とろとろになった乳首を悪戯に爪弾かれると「は……ぁ」と鼻から甘い吐息が抜けていった。
「来客の時間まで残り五十分です」
テーブルの端に置いていた、飲みかけのグラスに凌貴は手を伸ばした。
「!」
伊吹生は絶句する。下の着衣をずり下ろされ、グラスに残っていたワインを屹立したペニスに注がれた。
テーブルに零れる寸前、凌貴は勢いよく吸いついてきた。
「ッ……ッ……!」
葡萄酒が絡んで匂い立つ肉杭を吟味された。甲斐甲斐しい口淫に下半身は一段と滾る。過保護な舌が引っ切り無しに纏わりつき、カリ首から上の剥け育った亀頭を舐め尽くされると、電流じみた快感が伊吹生の全身を駆け巡った。
「は……!」
為す術もなく達した。
革靴を纏う爪先に力を込め、しばらく溜め込まれていた肉欲を凌貴の唇奥で解放させた。
「……ん……」
凌貴は雄々しく痙攣するペニスを労わるように口内で包み込む。伊吹生の最後の一滴まで喉に迎え入れた。
「……ご馳走様でした、伊吹生さん……?」
テーブル上のボトルを手に取り、グラスに注ぐと、仄かな甘味や酸味、刺激的な隠し味の効いたワインで口直しする。
欲望を解放させたことで一時的な興奮の波が引きつつある伊吹生に、辞去の挨拶がてら、彼は最後に告げた。
「拓斗君、夕方には帰ってきますよ」
――深黒の災厄が去った後、伊吹生は掃除に追われた。
除菌スプレーをかけまくり、テーブルはウェットティッシュでしつこく拭いた、久し振りに窓を開けて換気もした、最終的に自分に除菌スプレーを振り撒いた。
「今日、なんか酒臭くないっすか?」
努力の甲斐も虚しく、とは正にこのことか。来客の第一声に伊吹生は肩を落とすのだった。
(俺はアイツが嫌いだ)
自分自身への誓いを破らせた凌貴に対する悪感情は尽きない。憎たらしくて、歯痒くて、許せなかった。
それ以上に自分のことが許せないでいる。
吸血本能、血への渇望。屈しているのは他の誰でもない、自分自身だ。
どうしようもない弱さをはぐらかしたいがため、凌貴に八つ当たりしている部分もあった。
(いや、性悪なアイツが確実に悪い部分も圧倒的にある)
「所詮、ただの吸血種か」
ブラインドが取り零した西日に瞼を閉ざして伊吹生は凌貴の言葉をなぞった。
凌貴は指通りのいい髪の毛を乱していた伊吹生の手を掴み、右腕に刻まれた二つの傷痕に順々にキスをした。
「初めて名前で呼んでくれましたね」
当時の記憶が生々しく宿る古傷に乱杭歯をあてがい、やんわり刺激する。
「頼むから俺に触るな」
「伊吹生さん、勃起していますが」
「……してない」
「この状態のまま、接客するんですか……?」
繊細な輪郭をした手が伊吹生の昂ぶりを服越しに包み込んだ。
「ほら。もうこんなに硬くしてる」
捕食的な口づけで隈なく濡れた胸の突起に唇を被せ、新たな唾液で濡らしながら、凌貴は多感な熱源をじっくり揉みしだいた。
「ぁッ……おい、凌貴……ッ」
「立派な雄の象徴。過去の恋人達はさぞ悦んで咽び泣いたでしょうね」
「触るな……」
「ただし。菖さんのことがあってから、これといった恋人の影はなかった。どうしていたんです? 一夜限りの関係ですか?」
抗う気力も失せかけ、凌貴の真下で悶えるしかなかった伊吹生はそっぽを向く。舌打ちして些細な反抗心を示せば、招かれざる客人がゴクリと喉を鳴らしたのがわかった。
「う……」
片手で器用に伊吹生のベルトを外し、ファスナーを全開にすると、凌貴はボクサーパンツの内側に利き手を忍び込ませてきた。
「すごい」
「ふ……っ……ぅぅ……」
「僕の手の中でビクビクしています。もしかして誰かに触れられるのは久し振りですか?」
先月のカーニバル・デイ以来、ほぼ一ヶ月振りとなる飲血に伊吹生の体はひどく昂揚していた。押し寄せてくる性的興奮も一入だった。
外気に取り出された、脈打つペニスに真珠色の五指が絡みつくと、独りでに腰が跳ねる。上下に愛撫されると先端の鈴口は罪深げに濡れた。根元からせり上がってくる射精欲に弛みがちな口は陶然と喘いだ。
「はッ……はぁ……ッ」
胸を反らせば貪欲な唇に再び捕らわれた。コリコリとしてきた乳首を交互に舐め吸われ、同時に熱源をしごかれる。
伊吹生はきつく目を閉じた。
「伊吹生さん」
余念のない奉仕を続ける凌貴に、うっとりとした声で強請られる。
「閉じないで。貴方の綺麗な目、見せてください」
催眠術にでもかかったかのように伊吹生は従順に目を開く。
その瞳の色は凌貴と同じ赤銅色に染まっていた。
「吸血種らしい獰猛なおめめですね」
「……今、何時だ……早く終わらせろ……」
「セックスしてもいいんですか?」
「ち、違……」
恍惚と理性の間を忙しなく行き来していた伊吹生は焦る。すっかり濡れそぼって、とろとろになった乳首を悪戯に爪弾かれると「は……ぁ」と鼻から甘い吐息が抜けていった。
「来客の時間まで残り五十分です」
テーブルの端に置いていた、飲みかけのグラスに凌貴は手を伸ばした。
「!」
伊吹生は絶句する。下の着衣をずり下ろされ、グラスに残っていたワインを屹立したペニスに注がれた。
テーブルに零れる寸前、凌貴は勢いよく吸いついてきた。
「ッ……ッ……!」
葡萄酒が絡んで匂い立つ肉杭を吟味された。甲斐甲斐しい口淫に下半身は一段と滾る。過保護な舌が引っ切り無しに纏わりつき、カリ首から上の剥け育った亀頭を舐め尽くされると、電流じみた快感が伊吹生の全身を駆け巡った。
「は……!」
為す術もなく達した。
革靴を纏う爪先に力を込め、しばらく溜め込まれていた肉欲を凌貴の唇奥で解放させた。
「……ん……」
凌貴は雄々しく痙攣するペニスを労わるように口内で包み込む。伊吹生の最後の一滴まで喉に迎え入れた。
「……ご馳走様でした、伊吹生さん……?」
テーブル上のボトルを手に取り、グラスに注ぐと、仄かな甘味や酸味、刺激的な隠し味の効いたワインで口直しする。
欲望を解放させたことで一時的な興奮の波が引きつつある伊吹生に、辞去の挨拶がてら、彼は最後に告げた。
「拓斗君、夕方には帰ってきますよ」
――深黒の災厄が去った後、伊吹生は掃除に追われた。
除菌スプレーをかけまくり、テーブルはウェットティッシュでしつこく拭いた、久し振りに窓を開けて換気もした、最終的に自分に除菌スプレーを振り撒いた。
「今日、なんか酒臭くないっすか?」
努力の甲斐も虚しく、とは正にこのことか。来客の第一声に伊吹生は肩を落とすのだった。
(俺はアイツが嫌いだ)
自分自身への誓いを破らせた凌貴に対する悪感情は尽きない。憎たらしくて、歯痒くて、許せなかった。
それ以上に自分のことが許せないでいる。
吸血本能、血への渇望。屈しているのは他の誰でもない、自分自身だ。
どうしようもない弱さをはぐらかしたいがため、凌貴に八つ当たりしている部分もあった。
(いや、性悪なアイツが確実に悪い部分も圧倒的にある)
「所詮、ただの吸血種か」
ブラインドが取り零した西日に瞼を閉ざして伊吹生は凌貴の言葉をなぞった。
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