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一章
1:プロローグ
しおりを挟むレムリア大陸と呼ばれるこの世界は、魔法が息づく広大な大地だ。
空には浮遊する島々が点在し、森には精霊が宿り、川には水の魔力が光を放つ。
古の時代から、魔法は人々の暮らしを支え、時に争いの火種ともなってきた。
そんな大陸の中央にそびえるのが、「聖ミルフィア魔法学院」である。
全寮制の女学校として名を馳せ、各国から才能ある少女たちが集うこの学院は、レムリアの未来を担う魔法使いを育てる神聖な学び舎だ。
学院の尖塔は雲を突き抜け、校舎を囲む庭園には異国の花々が咲き乱れる。
そこに集う生徒たちは人間だけではない。
優雅な耳を持つエルフ、褐色の肌に白髪が映えるダークエルフ、小柄ながら頑強なドワーフ、鋭い爪を持つ獣人――種族を超えた少女たちが、魔法という共通の夢を追い求めている。
彼女たちの笑い声や呪文の響きが石畳にこだまし、学院はまるでレムリア大陸の縮図のようだ。
その学院に、サリアという少女がいた。
彼女は大陸の辺境、小さな村からやってきた。
名前をフィオルといい、そこは魔法とは縁遠い場所だ。
石と土でできた粗末な家々が並び、作物は痩せた土地で細々と育つ。
村に魔法使いは一人もおらず、人々は汗と泥にまみれて日々を生き抜いている。
そんな村で、サリアは特別な存在だった。黒髪を肩まで伸ばし、澄んだ瞳に純粋な光を宿した少女。
彼女が魔法の素質を持つとわかったとき、村人たちは目を輝かせた。
「ねえ、サリア。こんな機会、二度と来ないよ」
村長がそう言って、なけなしの金を差し出した。
老婆が震える手で僅かなコインを握らせ、子供たちが
「サリアならできるよ!」
と笑顔を見せた。
乏しい食料を分かち合い、村人たちは口々に言った。
「サリアが魔法を学べば、村に豊かさをもたらしてくれるかもしれない」
サリアは目を潤ませながら、村人たちの手を取った。
「ありがとう、みんな。私、絶対に一人前の魔法使いになって、フィオルを笑顔でいっぱいにするから」
彼女の肩には、村全員の希望が乗っていた。そう心に誓い、サリアはフィオルを後にした。
そして、聖ミルフィア魔法学院に足を踏み入れた瞬間、サリアは息を呑んだ。
磨かれた大理石の廊下、色鮮やかな魔法陣が描かれた天井、貴族の娘たちが身にまとう絹の制服――すべてがフィオルの粗末な暮らしとはかけ離れていた。
「こんなすごい場所、私が入っていいなんて…」
サリアは自分の手織りの服を見下ろし、みすぼらしい布の擦れる音に肩をすくめた。
訛りの残る言葉は、周囲の洗練された会話に埋もれていく。
「村のみんなが頑張ってくれたのに、私、ここでちゃんとやれるかな…」
教室の隅で小さくなりながら、彼女は不安を呟いた。
それでも、サリアは諦めなかった。
村の人々の笑顔を思い出し、魔法の教科書に目を落とす。
指先で呪文をなぞり、唇を動かして詠唱を練習する。
「頑張らなきゃ。私、負けないよ」
慣れない魔法の流れに戸惑いながらも、サリアは一歩ずつ前へ進もうとしていた。
けれど、心のどこかで、彼女は感じていた。
この学院での日々が、想像以上に過酷なものになることを。
そして、自分の中に眠る何かが、静かに目を覚まそうとしていることを――。
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