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十九
思惑-3
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夜、緊張した食事を終え、ゲオルグとアーシュラは、二人の部屋のある建物を繋ぐ渡り廊下で、名残惜しく立ち話をしていた。
「皇帝陛下、怒ってなかった?」
「お祖父様はいつもあんなものよ」
「エーベルハルト様はご機嫌だったね」
「お父様もいつもあんなものね」
廊下に人の気配が無いのは、クヴェンが気を利かせて人払いをしたからだ。エリンやツヴァイも、二人きりの貴重な時間を邪魔するようなことはしなかった。
ゲオルグに城内で部屋が与えられ、今日からは城で一緒に暮らすことになった、といっても、二人の住まいは離れていて、しがらみが増えた分、二人の距離は遠くなったとさえいえる。
「あー、でも良かった。やっぱり駄目だ! とか言われなくて」
「ふふふ、本当ね。絶対、もっと大変なことになると思っていたのに」
「えっ……もしかして君、陛下を説得する自信、無かった?」
「あったわよ。もしダメだって言われても、『駆け落ちする』って言えばいいでしょう?」
「それ……僕、エリンに殺されない?」
ゲオルグが冗談っぽく肩をすくめると、アーシュラは笑顔で首を振る。
「大丈夫よ。エリンはあなたを守るから」
「……そうかな?」
「そうよ。わたくしの一番大切なものを、あの子が守らないはずが無いのだもの」
アーシュラは自信満々だが、ゲオルグは腑に落ちない様子だ。
「僕、エリンにはずっと嫌われていると思うけど」
「そんなことないわよ」
「……それは、君が僕のことを好きってことでしょう?」
ゲオルグは苦笑する。
「そうよ?」
アーシュラは首を傾げる。
「鈍感だなあ。エリンと君は違う人間なんだってことを、君は分かってないよね」
ゲオルグの言葉に責めるような色は無い。彼からすれば全く常識はずれなフィアンセをどこか面白がるように、あくまで優しく諭す。
「エリンと、わたくしが……?」
「そう。エリンはエリンだし、君は君でしょう?」
「そうだけど……」
恋人の言葉が理解できないアーシュラは首を傾げる。
「彼はさ、まぁ、面白くないと思うよ。僕と君が結婚するなんて」
「どうして?」
「それは……」
ゲオルグは口ごもる。難しい顔で一瞬考えこむが、すぐに顔を上げた。
「僕の口から言うことじゃないし、言ったって仕方のないことだ」
「……わからないわ」
アーシュラは不満げだった。ゲオルグは幸せそうに笑ったまま、曖昧に頷いた。
「まぁ、そうだね。君はそれでいいんだと思う」
幼い日、剣は己の半身と教えられたし、何より今日まで二人でそうやって生きてきた。エリンが自分と違うことを考え、意に反する行動を取るなんて、アーシュラには想像もつかないことだったのだ。
「皇帝陛下、怒ってなかった?」
「お祖父様はいつもあんなものよ」
「エーベルハルト様はご機嫌だったね」
「お父様もいつもあんなものね」
廊下に人の気配が無いのは、クヴェンが気を利かせて人払いをしたからだ。エリンやツヴァイも、二人きりの貴重な時間を邪魔するようなことはしなかった。
ゲオルグに城内で部屋が与えられ、今日からは城で一緒に暮らすことになった、といっても、二人の住まいは離れていて、しがらみが増えた分、二人の距離は遠くなったとさえいえる。
「あー、でも良かった。やっぱり駄目だ! とか言われなくて」
「ふふふ、本当ね。絶対、もっと大変なことになると思っていたのに」
「えっ……もしかして君、陛下を説得する自信、無かった?」
「あったわよ。もしダメだって言われても、『駆け落ちする』って言えばいいでしょう?」
「それ……僕、エリンに殺されない?」
ゲオルグが冗談っぽく肩をすくめると、アーシュラは笑顔で首を振る。
「大丈夫よ。エリンはあなたを守るから」
「……そうかな?」
「そうよ。わたくしの一番大切なものを、あの子が守らないはずが無いのだもの」
アーシュラは自信満々だが、ゲオルグは腑に落ちない様子だ。
「僕、エリンにはずっと嫌われていると思うけど」
「そんなことないわよ」
「……それは、君が僕のことを好きってことでしょう?」
ゲオルグは苦笑する。
「そうよ?」
アーシュラは首を傾げる。
「鈍感だなあ。エリンと君は違う人間なんだってことを、君は分かってないよね」
ゲオルグの言葉に責めるような色は無い。彼からすれば全く常識はずれなフィアンセをどこか面白がるように、あくまで優しく諭す。
「エリンと、わたくしが……?」
「そう。エリンはエリンだし、君は君でしょう?」
「そうだけど……」
恋人の言葉が理解できないアーシュラは首を傾げる。
「彼はさ、まぁ、面白くないと思うよ。僕と君が結婚するなんて」
「どうして?」
「それは……」
ゲオルグは口ごもる。難しい顔で一瞬考えこむが、すぐに顔を上げた。
「僕の口から言うことじゃないし、言ったって仕方のないことだ」
「……わからないわ」
アーシュラは不満げだった。ゲオルグは幸せそうに笑ったまま、曖昧に頷いた。
「まぁ、そうだね。君はそれでいいんだと思う」
幼い日、剣は己の半身と教えられたし、何より今日まで二人でそうやって生きてきた。エリンが自分と違うことを考え、意に反する行動を取るなんて、アーシュラには想像もつかないことだったのだ。
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