美人なのに不人気?逆モテ異世界の真実

かのん

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セレブ美女、孤独な死②

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それでも、生活は続いた。
孤独を認めるのは、あまりにも惨めだったから。

それでも、今までは平気だった。
“必要ないもの”だと、切り捨ててきただけだと、思っていたから。

 
ソファに腰を下ろし、シャンパンの栓を抜く。
乾いた音が、やけに大きく部屋に響いた。
グラスに注がれた泡を眺めながら、私は自分に言い聞かせる。

――私は、恵まれている。
――誰よりも。

一口含むと、冷たい液体が喉を通った。
美味しいはずなのに、なぜか味がしない。

そのとき、不意にスマホが震えた。

一瞬、胸が高鳴る。
誰かが――本当に誰かが、私を思い出してくれたのかもしれない。

画面を確認して、私はすぐに表情を消した。

表示されていた名前は、由梨。

学生時代からの知り合い。
いや、正確に言えば、“私の周りにいた女”の一人。

地味で、冴えなくて、太っていて。
いつも私を褒め、持ち上げ、羨望の目で見ていた存在。

正直、なぜ今さら連絡してくるのか分からなかった。

私は一度、通知を無視した。
けれど数秒後、また震える。

しつこい。

ため息をつきながら、私は通話ボタンを押した。

「何?」

自分でも驚くほど、素っ気ない声だった。

『あ、出てくれた……』

受話口から聞こえた声は、相変わらず弱々しい。

『今日、誕生日だよね? おめでとう』

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が、ほんの少しだけざわついた。

――知ってたんだ。

でも、それだけだった。

「それで?」

『え……? あ、えっと……それだけじゃなくて』

言葉に詰まる気配。
私は、少し苛立ちを覚えた。

この“遠慮がちで要領を得ない話し方”が、昔から好きではなかった。

「用があるなら、はっきり言って」

『……最近、ちょっと、色々あって』

嫌な予感がした。

どうせ、愚痴だ。
どうせ、私に縋りたいだけ。

「ごめん、今忙しいんだけど」

そう言いかけた瞬間、由梨は意を決したように言った。

『あのね、私……会社、辞めたの』

「は?」

思わず声が出た。

『体調崩しちゃって……それで』

「……だから何?」

冷たすぎる言い方だったかもしれない。
でも、私は止まれなかった。

「それを、私に言ってどうしろっていうの?」

『……』

沈黙。

私は、苛立ちを隠そうともせず続けた。

「正直さ、由梨って、
 昔からそうだよね」

『……え?』

「そうやって、モジモジしてさ…こっちはイライラするんだけど」

言葉は、驚くほど簡単に出てきた。
受話口の向こうで、息を呑む気配がした。

『……ごめん』

「ごめんじゃ、分かんないんだけど?」

『……』

長い沈黙のあと、かすれた声が聞こえた。

『……そっか』

その一言だけだった。

次の瞬間、通話は切れた。

ツーツー、という無機質な音が、やけに耳に残る。

私はスマホを置き、もう一度シャンパンを口に運んだ。

やっぱり、味がしなかった。

胸の奥に、奇妙な違和感が残る。

――今の、言いすぎた?

そんな考えが一瞬よぎったが、すぐに打ち消した。

違う。
私は、正しいことを言っただけ。

彼女の人生は、彼女のもの。
私が責任を負う必要なんて、ない。

そう、自分に言い聞かせながら。

けれど、その夜。
ベッドに横になっても、なぜか眠れなかった。

暗い天井を見つめながら、ふと頭に浮かんだのは、由梨の声だった。

――あんな声、してたっけ。

学生時代、私の後ろを歩きながら、必死に話しかけてきた彼女。
私の一言で、表情を明るくしたり、しょんぼりしたりしていた姿。

今思えば、あれは“対等”ではなかった。

でも、その事実を認めるのは、ひどく不快だった。

だから私は、目を閉じた。

考えるのをやめた。

私は恵まれている。
私は正しい。

そうして眠りに落ちた、その数時間後。
そして、その日は突然やってきた。
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