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恭平サイド⑧
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「これ…読んでもらいたいの。」
敦子は恭平に母親がつけた日記を渡した。
パラパラと恭平は日記に目を通す。
「お母さんの気持ち…本音が書いていると思う。」
「あっちゃん…ごめん。」
「…」
敦子は無言で病院のベンチから立ち上がり数歩歩いて恭平の前に立った。
「お母さんが…ハナさんなんだよね?」
恭平は無言でうなづく。
俺とハナさんの関係は、片思い、不純愛、不倫…
色んな風に思う人がいるだろう――
とくに敦子は父親の不倫でかなり嫌気が差している
敦子にはどう思われているのだろう…
「恭ちゃん…一緒に歩かない?あの公園のベンチまで。」
敦子が恭平の手をとり歩き出した。
いきなり手を繋がれてドキッとした…
彼女の手はハナさんの手と感触が似ている。
だけど温もりが――
敦子の手は温かくて包みこんでくれる、そんな手だった。
“カサカサカサ…”
公園はあの日みたいに葉っぱがこすれ合う音が聞こえるぐらい誰もいなく静かだった。
「恭ちゃん…」
公園に着くと敦子は急に手を離し、恭平から距離をとった。
「ごめんね…」
「え…?」
「10年前…10月10日ここで待ち合わせしていたんだよね?」
「うん…」
「お母さんは…日記には書いていなかったけど本当は恭ちゃんのところに行くつもりだったと思う。」
「どうして…そう思うの?」
お母さんが来なかったのは――
私のせいだから――
――数日前
“ピンポーン…”
「はい…敦子!?」
「こうちゃん…助けてッ…」
玄関で敦子は泣きながら座り込んでしまった。
「どうしたんだよ!?とりあえず中に入れよ。」
「……うん。」
幸治は敦子の体を支えながらリビングへ誘導した。
「おじさんやおばさんは?」
「まだ仕事…てかおばさんは?噂で聞いたけどどうなんだよ?」
「…癌…なんだって。」
「…手術とか!治療は!?」
「…」
敦子は無言で首を横に振った。
「何でおばさんが…」
幸治は小さい頃からお世話になった敦子の母親の現状を受け入れられないようだ。
「こうちゃん…聞きたいことがあるの。」
「うん。」
「10年前…10月10日の私の誕生日覚えてる?私たち小さい頃からこうちゃんとお母さんと三人でご飯食べてたじゃない?その日はどうだった?」
「10年前って…10歳の誕生日?」
「うん。」
「10歳の誕生日は…」
「お腹が痛いって言って学校を休んでたよ。」
「え…?」
小さい頃お腹が痛いっていって学校を休むのは大体ズル休みの時だった。
敦子は10年前の記憶を思い出そうと眼をつぶって過去を振り返ってみた。
そうだ――
あの日リコーダーのテストがあって
全然練習していなくて
誕生日の日まで怒られたくなくて
学校をズル休みしたんだ…
あの日学校をズル休みしなかったら――
お母さんと恭ちゃんは会えてたの?
「あの公園の男と関係あるのかよ?」
「え…?何か知っているの?」
「別に…」
「知っているなら教えて!」
「でもお前その男のことが好きなんだろ?」
「…そうだけど…ずっとあの公園で毎年誰かを待っている姿を見ていたからこそ、会わせてあげたい気持ちもあるの…だけどッ」
敦子の瞳から大きな涙がこぼれだした。
「やっぱり会わせたくないって…心のどこかでそう思っちゃう私は親不孝ものかな…」
「…親不孝じゃないよ。そう思うのは当たり前だって。」
「…本当?」
「俺だってお前とあの公園の男に会わせたくなかった。」
「どう…して?」
「…あの男はおばさんのこと…」
「知ってるよ。」
敦子に知っているといわれ幸治は目を見開いて驚いた。
「何で…」
「お母さんの日記を読んで…どうして幸治は知っているの?」
「昔、あの男とおばさんが公園にいるのみたんだ…子供でもわかった。この二人はそういう関係なんだって。」
「…こうちゃんは私のために黙っててくれたんだね…お父さんの不倫を毛嫌いしていたから。」
敦子は恭平に母親がつけた日記を渡した。
パラパラと恭平は日記に目を通す。
「お母さんの気持ち…本音が書いていると思う。」
「あっちゃん…ごめん。」
「…」
敦子は無言で病院のベンチから立ち上がり数歩歩いて恭平の前に立った。
「お母さんが…ハナさんなんだよね?」
恭平は無言でうなづく。
俺とハナさんの関係は、片思い、不純愛、不倫…
色んな風に思う人がいるだろう――
とくに敦子は父親の不倫でかなり嫌気が差している
敦子にはどう思われているのだろう…
「恭ちゃん…一緒に歩かない?あの公園のベンチまで。」
敦子が恭平の手をとり歩き出した。
いきなり手を繋がれてドキッとした…
彼女の手はハナさんの手と感触が似ている。
だけど温もりが――
敦子の手は温かくて包みこんでくれる、そんな手だった。
“カサカサカサ…”
公園はあの日みたいに葉っぱがこすれ合う音が聞こえるぐらい誰もいなく静かだった。
「恭ちゃん…」
公園に着くと敦子は急に手を離し、恭平から距離をとった。
「ごめんね…」
「え…?」
「10年前…10月10日ここで待ち合わせしていたんだよね?」
「うん…」
「お母さんは…日記には書いていなかったけど本当は恭ちゃんのところに行くつもりだったと思う。」
「どうして…そう思うの?」
お母さんが来なかったのは――
私のせいだから――
――数日前
“ピンポーン…”
「はい…敦子!?」
「こうちゃん…助けてッ…」
玄関で敦子は泣きながら座り込んでしまった。
「どうしたんだよ!?とりあえず中に入れよ。」
「……うん。」
幸治は敦子の体を支えながらリビングへ誘導した。
「おじさんやおばさんは?」
「まだ仕事…てかおばさんは?噂で聞いたけどどうなんだよ?」
「…癌…なんだって。」
「…手術とか!治療は!?」
「…」
敦子は無言で首を横に振った。
「何でおばさんが…」
幸治は小さい頃からお世話になった敦子の母親の現状を受け入れられないようだ。
「こうちゃん…聞きたいことがあるの。」
「うん。」
「10年前…10月10日の私の誕生日覚えてる?私たち小さい頃からこうちゃんとお母さんと三人でご飯食べてたじゃない?その日はどうだった?」
「10年前って…10歳の誕生日?」
「うん。」
「10歳の誕生日は…」
「お腹が痛いって言って学校を休んでたよ。」
「え…?」
小さい頃お腹が痛いっていって学校を休むのは大体ズル休みの時だった。
敦子は10年前の記憶を思い出そうと眼をつぶって過去を振り返ってみた。
そうだ――
あの日リコーダーのテストがあって
全然練習していなくて
誕生日の日まで怒られたくなくて
学校をズル休みしたんだ…
あの日学校をズル休みしなかったら――
お母さんと恭ちゃんは会えてたの?
「あの公園の男と関係あるのかよ?」
「え…?何か知っているの?」
「別に…」
「知っているなら教えて!」
「でもお前その男のことが好きなんだろ?」
「…そうだけど…ずっとあの公園で毎年誰かを待っている姿を見ていたからこそ、会わせてあげたい気持ちもあるの…だけどッ」
敦子の瞳から大きな涙がこぼれだした。
「やっぱり会わせたくないって…心のどこかでそう思っちゃう私は親不孝ものかな…」
「…親不孝じゃないよ。そう思うのは当たり前だって。」
「…本当?」
「俺だってお前とあの公園の男に会わせたくなかった。」
「どう…して?」
「…あの男はおばさんのこと…」
「知ってるよ。」
敦子に知っているといわれ幸治は目を見開いて驚いた。
「何で…」
「お母さんの日記を読んで…どうして幸治は知っているの?」
「昔、あの男とおばさんが公園にいるのみたんだ…子供でもわかった。この二人はそういう関係なんだって。」
「…こうちゃんは私のために黙っててくれたんだね…お父さんの不倫を毛嫌いしていたから。」
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