天使に恋をした。

かのん

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デート

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「真莉亜!」





ベンチに座っている真莉亜に声をかける。






「遅くなってごめん!」






雅の方を向き嬉しそうに真莉亜が微笑かける。




「雅君、これ広げてもらってもいい?」






真莉亜がレジャーシートをかばんからだす。






「うん。」






“バサバサッ…”






「はい、敷いたよ。」



「ありがとう。雅君、これ開けてみて。」





真莉亜が差し出した箱をあけると中身は豪華なお弁当だった。





形がいびつだが、おにぎりは一つ一つ味が違っていた。





おかずも肉じゃがやから揚げ、ウィンナーと雅の好きなものばかりだった。






「これ…」




「私が作ったの。形とか味とか変なところも多いと思うけど。」






見た目は確かに綺麗ではない。





だけど愛情がこもっているお弁当ってこういうことなんだ。





そういえば母親のお弁当も綺麗ではなかったけど、お弁当を作ってくれるだけで愛されている気がした。






「食べて。食べて。」



(俺のために見えなくて不自由なのにこんな豪華なお弁当を作ってくれるなんて…)





真莉亜を見つめると左手の中指に絆創膏が貼ってった。






「あれ?昨日は絆創膏貼ってなかったよね?」






「あ、これ?久しぶりに切っちゃった。」




真莉亜が恥ずかしそうに笑った。






「真莉亜…」






雅は真莉亜の両手を包んで話しかける。






「俺のためにありがとう。」









周りからみれば本当にお似合いのカップルだった。




















彼女はこの後婚約する。


















彼女を俺の嫌いな不倫する女にさせたくないんだ。






「本当、美味しいよ!お店の味みたい!俺いっつも外食だから結構いろんなお店食べているから本当に美味しいよ!」






「よかった~本当は料理人になりたかったな。」






「ならないの?」






「…うん、やっぱりさ、目が見えないから厨房に立つの厳しいし、見た目も綺麗にできないし。」



「だから結婚して奥さんとして旦那さんにたくさん料理作るのが夢かな。」







「そっか、旦那になる奴は幸せだな、こんな美味しいの食べれて。」(これを毎日食べれるのはきっとアイツなんだろうな。)






「雅君は?」






「え?」






「雅君の夢は何?」



「夢?」






「うん、何かやりたいこととかある?」







「俺は№1になって…それから…」(それから俺何したいんだろう。)






「何で№1になりたかったの?」






「お金も入るし、それに…」





雅は真莉亜の顔をみる。






真莉亜は目線はずれてはいるものの、真莉亜の大きな瞳には雅が写っていた。






自分と向き合ういい機会なのかもしれない。







「№1になって…母さんに会いたいんだ。」






そう剛にも言ったことはない。






それが本当の自分の気持ちだ。





「お母さん?」






「俺を捨てた母さん…夜の仕事をしてるらしいんだ。だからこの業界で俺の名前や顔をみたら思い出してくれるかなって。俺本名で仕事しているんだ。結構源氏名っていって本名じゃない名前で働いている人多いんだけどね。」






「そっか。何かお母さんの情報つかめた?」






「いや…生きているかもわからないよ。」






雅はレジャーシートの上に仰向けに転がった。




「会いたいんだね。」






「何で俺を捨てたんだ!とかあれから色々人生あったんだぞ!とか色々文句言いたくて…ッ」(本当は文句も言いたいけど、ただ会いたいんだ。)






雅の目から涙がポロポロと流れる。






泣いたのなんていつぐらいだろう。









大人の男が泣くなんてと雅が起き上がろうとした瞬間





“グイッ…”






「え!?」






真莉亜の膝に雅を引き寄せて、膝枕をしてくれた。





「雅君、髪の毛サラサラだね。」



真莉亜は雅の頭をなでる。






声に出してないてはいないけど真莉亜は気づいている。






だからこそ他の人に泣いているのが見えないように膝枕してくれた。






母親への感情と真莉亜の優しさでさらに泣いた。






人の優しさってこんなにも温かいのだろうか。







こんな時間がずっと続けば…











俺が今まで女性を人として扱わなかったから
そんな俺が恋をしたから
神様は許してくれなかったんだね






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