【R18】Sweet or Bitter

かのん

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窮屈な日々

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35歳――



周りからは結婚しろといわれる年になった。



そんな時社長に取引先の秘書課の女性を紹介された。



綺麗で落ち着いていて素敵な女性だとは思う。



だけど結婚は一緒に生活を共にする



それが一番ネックなところだった。



「え…?禁煙?」



「そう、だって部屋にも服にも臭いがつくし、健康にも禁煙したほうがいいわよ。」




彼女の家で寛いでタバコを吸っている時に、衝撃的な一言だった。



15年間ずっと毎日吸ってきたタバコを辞めるという選択肢は自分の中にはなかった。



「じゃあ、外で吸ってくるよ。」



「ベランダはやめてね。ご近所迷惑になるから。」



「…じゃあコンビニで買い物してくるよ。」



「じゃあ、ついでにお水買ってきてくれる?」



「うん…」



“ガチャッ…”




まだ結婚の話は出ていないが、このまま彼女と暮らしたら窮屈な日々になりそうだった。



こうやって外に出た瞬間、背伸びをしたくなるぐらい開放感であふれていた。



「服に臭いがつく…か。」



15年間吸ってきたタバコをやめて彼女と結婚すれば昇進間違いなしの人生だ。



「ありがとうございました。」



水を買って外でタバコを吸いながらボーっと空を見上げた。



“ピロリン…”



携帯電話に目をやると早苗からラインがきていた。



【課長、今度の日曜日時間ありますか?】



「今度の日曜…」



今度の日曜は社長と田所の父親と彼女とその後の話をする会食の約束をしていた。



【ごめん…その日は予定が…どうした?】



【大丈夫です。お休み中すいませんでした。課長、おやすみなさい。】



「お休みってまだ8時だし…」



課長は早苗が送ってきたラインを見ながら自然と笑顔になっていた。



満点の星空をみながら来週のことを考えた。



「7月7日……誕生日?」



早苗が七夕が誕生日だと以前言っていたのを覚えていた。



「誕生日って言ってくれればいいのに…フゥーッ」



早苗は普段は強気の面もあるが、しおらしい面もあった。



それに比べ秘書課の彼女は強気で威圧的な感じだった。



このまま逃げ出して早苗のところへいけばいい。



簡単なことなのに、社長のことなどを考えると優柔不断な自分は決断できなかった。
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