【R18】Sweet or Bitter

かのん

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香の恋【香編】

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高校時代は周りから美人だってよく言われて、告白してくる男子も多かった



自分は綺麗だって、周りの男はみんな私を好きになるって



うぬぼれるぐらいモテていた…



どんなに格好がいい人でも、条件がよくても振っていた



それは好きな人がいたから――



寝ても覚めても、その人のことばかり考えるぐらい



本当に大好きだった――




最初の出会いはバス停だったーー



バス停で並んでいる時、春一番が吹いて、私の長い髪の毛が隣に並んでいた彼の読書を邪魔してしまった。



「あ、すいません。」



「いえ、長くて綺麗な髪の毛ですね。」



微笑みながらいった彼の顔が一日中頭から離れなくて、高校生の私には大人な彼に憧れた。



学生服じゃなくてスーツで、制汗剤じゃなくてタバコの香りで、エロ雑誌じゃなくて文庫本を読んでる彼が、自分がいる世界から遠く感じた。



彼の隣に座ろうと思えば座れたのに、その勇気がなかったーー



見つめるだけの生活を1年



高校二年生になってしまった



バスにのるのはあと2年



バスに乗っている間にどうにかしないとと焦りがでてきたーー



彼の隣に座りたい



朝一番でその日はバス停で彼を待つことにした。



(おはようございますって挨拶して…)



彼との妄想で頭がいっぱいだった。



“ザッ…”



(彼かな?)



ドキドキしながら振り向くといつも一緒に乗っているサラリーマンの人だった。



(なんだ、この人か――)



結局彼は5番目ぐらいに並んで離れてしまった。



(今日は隣に座るの無理だったから、明日こそは――)



「!?」



隣に座っているサラリーマンの男が膝に手を置いてきた。



(何?気持ち悪い…)



男は少しづつ、スカートの中へと手をずらしていく。



(気持ち悪いのに声がでない…誰か…)



通路を挟んで座っている彼のほうに目をやる。



(お願い、こっち向いて…)



文庫本を読んでいる彼が気づく確率は少ない――



それでも彼しか助けを頼めない…



「あ…」



彼の手から文庫本が通路に落ちた。



このとき彼と目があったときは、神様に感謝した――



「すいません、ちょっといいですか?」



彼が隣のサラリーマンに声をかけてくれた。



「彼女が嫌がるようなことしているんじゃないんですか?」



「別に…何もいわねぇから触ってただけだよ!」



そういって男はバスからいそいそと降りていった。



「大丈夫?」



「はい…」



「ごめん…逃げられてしまって…」



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