【R18】Sweet or Bitter

かのん

文字の大きさ
上 下
50 / 54

禁断の出張

しおりを挟む
「え…出張ですか?」



「如月さんと私の二人なんですが…今週どうですか?」



「はい、大丈夫です。」



「出張といっても近場なので、今回は現地集合にしようと思うんですが…ここに来れますか?」



「はい、大丈夫です。」



「あとで詳しい資料を渡しますので、よろしくお願いします。」



「はい、よろしくお願いします。」



席に戻ると隣の田所と目があった。



目は合ったもののそらされてしまった。



「…」



隣の席にほぼ毎日座って、この間まで出社するときは毎日話してしたいたのに、今は他人みたいだった。



よく考えてみれば田所とは入社したその日からほぼ毎日話していた――



もうこのままずっと話さないまま時だけが過ぎてしまうの?













私は…どうしたいんだろう?











――出張の日――



結局田所とは話せずに課長と出張の日を迎えた。



現地集合だから以前のように移動距離のときに一緒にいなくてすむ…



今は仕事以外、課長と二人きりになるのが何となく気まずかった。



日帰り出張の予定で帰りも現地解散だったから、ちょっと観光でもして帰ろうと思っていた。


















そういう予定だった


















「疲れましたか?」



「はい…ちょっと…普段歩かないので…」



普段デスクワークで歩かないからか、今日は課長とプライベートの会話をしないぐらい歩いて挨拶して歩いての繰り返しで疲れてしまった。



“ゴロゴロゴロッ…”



「雨が…」



ぽつぽつと雨が降ってきて一気に前が見えないぐらい土砂降りになった。



「駅どっちでしたっけ!?」



「こっち!」



課長が早苗の肩を自分のほうに引き寄せ、自分のカバンを傘代わりにして早苗が雨にできるだけ濡れないようにしてくれた。



駅についたものの、帰宅ラッシュというのもあって人で溢れ返っていた。



「電車、動いていないみたいだね…土砂崩れがあったみたいだ。」



「そんな…」



早苗は課長がぬれないようにしてくれたとはいえ、あまりの土砂降りに体が濡れて寒くて体が震えだした。



「どこか泊まるところを探そう。」



課長が上着を脱いで早苗に着せ、近くのビジネスホテルへと向かった。



「え?満室ですか?」



「先ほど電車で帰れないというお客様が押し寄せましたので…」



「じゃあ、ツインはないですか?」



課長がホテルの人に聞いてみた。



「申し訳ございませんがダブルしか空いておりません。」



「…ソファありますか?」



「はい、お部屋にソファはございます。」



「じゃあ、僕はソファに寝るから…」



そうして課長とひとつの部屋に泊まることになった――




しおりを挟む

処理中です...