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その後の話

誠二の想い人

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「おかえり。」



「ただいま。」



家に帰ってドアを開ければおかえりと言ってくれる人がいる。
真っ暗なはずの家に明かりが灯っている。
最近私のココロも家の明かりみたいに明るい気がする。



「ご飯食べる?」



「あ、うん。ありがとう。」



会話だけみれば私たちはカップルみたいだと思う。
だけど実際は名前以外知らない。
晩御飯を食べる関係をもう10年も続けているけど
誠二が何歳なのか、何をしている人か全く知らない。



逆に誠二も飾ってある遥人の写真について何も触れてこない。




でもこの何も聞いてこない感じが私には居心地が良すぎて
このまま時が過ぎていくのも悪くない、そう思っていた。



「あれ……これシャンパン?」



「円花、飲める?」



「飲めるけど……」



「じゃあ付き合って。」



「今日誕生日か何か?」



「……息子の誕生日。」



「え!?子供いるの!?」



まさか、誠二に子供がいるだなんてちっとも思っていなかった。
てか、誠二にも好きな人……いたんだ。



「何歳なの?」



「9歳。」



「………」



今までお互いにつっこんだ話はしてこなかったのに
シャンパンのせいなのか私も誠二に色々と聞きたくなったし
自分も話したくなった。



「いいな、子供……私も欲しかったな。」



子供がいたら……遥人の形見があったら幸せだったかもしれない。



「……会いたいな。」



「え…会ってないの?いつから?」



「産まれる前からずっと会ってない。」



「何それ…どうして?父親はあなたなんでしょ?」



ずっと会っていない息子の誕生日を
こうやって一人でずっと毎年お祝いしてきたってこと?
会ったこともない息子に愛情を注げるものなの……?



「俺は父親じゃない。」



「え?」



「父親は兄さんだよ。」



この一言でわかった。
誠二の好きな人はお兄さんの奥さんなんだ。
本当は誠二の子供だけどお兄さんの子供として育っているんだ。



「誠二は……それで幸せなの?愛している人に会えなくて…」



「……それでみんな幸せならいい。」



遥人もこんな感じだったのかな?
自分が苦しい思いをすれば、私がまた好きな人を見つけて幸せな人生を歩めると思っていたのかな?
そんなの……みんな苦しいだけだよ。



「それに……子供が大人になったら迎えに行くつもりだから。」



「それじゃ……遅いよ。」



「え?」



「子供が大人になったとき、生きているって保証はないじゃない。私たちみたいに……離れ離れになるかもしれないじゃない。」



「円花……」



「相手がいなくなったら後悔したって遅いんだからっ……」



「……飲みすぎちゃったかな。」



「水飲むか?」



「うん……」



この時私の第六感がざわついた。
第六感というものはないのはわかってる。
だけど、胸の内がざわついて
遥人のことが一気に思い出されたんだ。



「誠二……足…痛いの?」



「え?いや……」



「いつからそんな風に歩いているの!?ねぇ、いつから!?」



「円花?」



遥人と同じ歩き方……
私が誠二と出会ったのはある意味運命なの?
また、私は遥人と同じく誠二を見送らないといけなの……?



「ALS……?」



心配で誠二の診察に一緒についていった。
神様はどうして私から大事な人たちを同じ病で奪っていくの?



「……よかった。」



「よかった…?何で……何でよかったなんて言えるの!?」



「これで苦しまなくてすむから……」



「どういう……こと?これから体の自由が奪われていって……大変なんだよ…っ」



「確かに体は不自由になっていく。だけどココロは自由になれるから。」






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