5 / 5
甦りの秘密
しおりを挟む
「今回の依頼人は彼」
ルイシーナが今回の依頼人を航海士に紹介する。
航海士としてコリン・プレスコットを雇うことになり、今回の依頼について最終的な打ち合わせをしていた。
「ダン・ファロンと言います。ファロン商会を経営しています」
(おお、思い出した!知ってる!あそこだろう、オレらには随分安価で品物を扱ってて、貴族連中には質のいいもん売って金儲けしてるって言う、上手くやってる店だ)
娘からするとアレな父親レオカディオはこう見えても、大海賊。
世間的に亡くなっているとは言えど、たかが数年前で記憶にも新しく場合によっては酒場にはそこらに姿絵が貼られていたりする。レオカディオのあずかり知らぬところで顔を知られていることは生前から多くあった。
いくら噂話で大海賊キャプテン・コフィーニが亡霊として甦ったと言われていても、大々的に説明する気はルイシーナとレオカディオにはない…ただルイシーナは実体化になって彷徨い遊んでいるレオカディオを見ていると、レオカディオは面白おかしく注目されたいと思っているような気もする。
何にせよ、本音がどうであれ、レオカディオはレインダックス号の船員以外がいる場面では精神体になって血を分けた身内以外には見えないようにしていた。
今回も幽霊になっているのだが…。
「幽霊でもうるさい……」
(失礼なやつだな)
ルイシーナにしか見えないことが分かりきっているレオカディオは言いたい放題だった。
「今回、ファロン商会の船が襲われ船員と積荷が盗まれました。船員を人質に身代金の請求が来ています。我々としては積荷より人命を優先して救助してほしい」
ファロン商会の会頭ダン・ファロンを名乗る人物はどうやら品物より人命を大事にする人柄らしい。ルイシーナは人命優先であることを理由にこの依頼を受けた。
「報酬は…船を出すには金がいるから前払いでいくらか貰った。残りは積荷の金貨よ」
(妥当だ)
「わかった、詳細を教えてくれ」
「場所は──」
「順調な滑り出しね、コリン」
「ああ。見た限り雲もないし、しばらくは問題ないだろう。キャプテン」
ここは船上。
レインダックス号の甲板にルイシーナとコリンは立っていた。準備も整い、数時間前に出航したところである。
軍出身ではあるもののクビにされたというコリンは軍嫌いの多い船員たちに快く受け入れられ、本人も上手く輪に入り込めているようでルイシーナは安心していた。
「…私のことは魔女とかルイシーナって呼んで。この船は私が船長ってことになっているけど…、どっかの誰かさんがキャプテンの肩書きが好きすぎてめんどくさくて。わかるでしょ?」
ルイシーナは肩をすくめる。もちろん、どっかの誰かさんとは自分の父親のことだ。
しつこくキャプテンを自称し続けるレオカディオをここ数週間の付き合いで実感したコリンは、その言葉に苦笑した。彼はきっと。
「…さっきも俺がキャプテンと呼んだらレオカディオが反応していたな。彼はキャプテンであることに誇りを持っていたんだな」
「あら、好意的に受け取ってくれてありがとう。──あなたいい人ね」
しつこい父親のことを肯定的に受け取られ、ルイシーナは思わず眉を上げてしまう。
「…初めて言われた」
思ったことを言っただけなのだが。
「レオカディオのことは、何と説明しているんだ?」
コリンはずっと気になっていたことをルイシーナに聞いた。船員たちは当たり前のように死んだはずのレオカディオを受け入れているのだ。それは甦ったことを理解しての上なのか。
「私からは何も説明しないことにしてるの。レオカディオ本人が話したければ、あなたに話したように経緯を話せばいいし…って放ってある」
「それで上手くいくのか…?」
「上手くいくわけない!普通はね。でも、おかしなことにレインダックス号の昔馴染みの船員は父さんの──キャプテン・コフィー二の数ある伝説の当事者だから、冥界から甦ってもあのキャプテン・コフィー二だからって納得する。で、納得できない人は船から降りる。ただそれだけ」
ルイシーナは苦笑いをした。
実際、レオカディオと馴染みの船員たちとの絆は比較的新入りのルイシーナにもよく分からない。ただ、ルイシーナには計り知れない経験をレオカディオと共に積んできた船員たちは独特の繋がりがあり、ルイシーナが口を出すことではないと判断しているのだ。
「…すごい世界だな。海軍とは毛色が違いすぎる」
「そうよ。昔、私も…父に認められたくて海軍予備隊で訓練受けたことがあったから分かる、別物よね」
「予備隊にいたのか!」
「あっ、つい言っちゃった。ほんのちょっとだけね。ゴタゴタ起こしてすぐにやめたから」
コリンが目を丸くした途端、つい口が滑ったと舌を出すルイシーナであった。
ルイシーナが今回の依頼人を航海士に紹介する。
航海士としてコリン・プレスコットを雇うことになり、今回の依頼について最終的な打ち合わせをしていた。
「ダン・ファロンと言います。ファロン商会を経営しています」
(おお、思い出した!知ってる!あそこだろう、オレらには随分安価で品物を扱ってて、貴族連中には質のいいもん売って金儲けしてるって言う、上手くやってる店だ)
娘からするとアレな父親レオカディオはこう見えても、大海賊。
世間的に亡くなっているとは言えど、たかが数年前で記憶にも新しく場合によっては酒場にはそこらに姿絵が貼られていたりする。レオカディオのあずかり知らぬところで顔を知られていることは生前から多くあった。
いくら噂話で大海賊キャプテン・コフィーニが亡霊として甦ったと言われていても、大々的に説明する気はルイシーナとレオカディオにはない…ただルイシーナは実体化になって彷徨い遊んでいるレオカディオを見ていると、レオカディオは面白おかしく注目されたいと思っているような気もする。
何にせよ、本音がどうであれ、レオカディオはレインダックス号の船員以外がいる場面では精神体になって血を分けた身内以外には見えないようにしていた。
今回も幽霊になっているのだが…。
「幽霊でもうるさい……」
(失礼なやつだな)
ルイシーナにしか見えないことが分かりきっているレオカディオは言いたい放題だった。
「今回、ファロン商会の船が襲われ船員と積荷が盗まれました。船員を人質に身代金の請求が来ています。我々としては積荷より人命を優先して救助してほしい」
ファロン商会の会頭ダン・ファロンを名乗る人物はどうやら品物より人命を大事にする人柄らしい。ルイシーナは人命優先であることを理由にこの依頼を受けた。
「報酬は…船を出すには金がいるから前払いでいくらか貰った。残りは積荷の金貨よ」
(妥当だ)
「わかった、詳細を教えてくれ」
「場所は──」
「順調な滑り出しね、コリン」
「ああ。見た限り雲もないし、しばらくは問題ないだろう。キャプテン」
ここは船上。
レインダックス号の甲板にルイシーナとコリンは立っていた。準備も整い、数時間前に出航したところである。
軍出身ではあるもののクビにされたというコリンは軍嫌いの多い船員たちに快く受け入れられ、本人も上手く輪に入り込めているようでルイシーナは安心していた。
「…私のことは魔女とかルイシーナって呼んで。この船は私が船長ってことになっているけど…、どっかの誰かさんがキャプテンの肩書きが好きすぎてめんどくさくて。わかるでしょ?」
ルイシーナは肩をすくめる。もちろん、どっかの誰かさんとは自分の父親のことだ。
しつこくキャプテンを自称し続けるレオカディオをここ数週間の付き合いで実感したコリンは、その言葉に苦笑した。彼はきっと。
「…さっきも俺がキャプテンと呼んだらレオカディオが反応していたな。彼はキャプテンであることに誇りを持っていたんだな」
「あら、好意的に受け取ってくれてありがとう。──あなたいい人ね」
しつこい父親のことを肯定的に受け取られ、ルイシーナは思わず眉を上げてしまう。
「…初めて言われた」
思ったことを言っただけなのだが。
「レオカディオのことは、何と説明しているんだ?」
コリンはずっと気になっていたことをルイシーナに聞いた。船員たちは当たり前のように死んだはずのレオカディオを受け入れているのだ。それは甦ったことを理解しての上なのか。
「私からは何も説明しないことにしてるの。レオカディオ本人が話したければ、あなたに話したように経緯を話せばいいし…って放ってある」
「それで上手くいくのか…?」
「上手くいくわけない!普通はね。でも、おかしなことにレインダックス号の昔馴染みの船員は父さんの──キャプテン・コフィー二の数ある伝説の当事者だから、冥界から甦ってもあのキャプテン・コフィー二だからって納得する。で、納得できない人は船から降りる。ただそれだけ」
ルイシーナは苦笑いをした。
実際、レオカディオと馴染みの船員たちとの絆は比較的新入りのルイシーナにもよく分からない。ただ、ルイシーナには計り知れない経験をレオカディオと共に積んできた船員たちは独特の繋がりがあり、ルイシーナが口を出すことではないと判断しているのだ。
「…すごい世界だな。海軍とは毛色が違いすぎる」
「そうよ。昔、私も…父に認められたくて海軍予備隊で訓練受けたことがあったから分かる、別物よね」
「予備隊にいたのか!」
「あっ、つい言っちゃった。ほんのちょっとだけね。ゴタゴタ起こしてすぐにやめたから」
コリンが目を丸くした途端、つい口が滑ったと舌を出すルイシーナであった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
行き遅れ令嬢の再婚相手は、ダンディな騎士団長 ~息子イケメンの禁断の守護愛~
柴田はつみ
恋愛
貧乏貴族の行き遅れ令嬢リアナは、28歳で社交を苦手とする大人しい性格ゆえに、結婚を諦めかけていた。
そんな彼女に王宮から政略結婚の命令が下る。再婚相手は、妻を亡くしたダンディな騎士団長ギルバート。
クールで頼れる40代のイケメンだが、リアナは「便利な道具として選ばれただけ」と誤解し、切ない想いを抱く。
さらに、ギルバートの息子で爽やかイケメンのエリオット(21歳)が義理の息子となる。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
どうぞお好きになさってください
みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。
婚約者の第一王子殿下は言った。
「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」
公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。
「好きになさればよろしいわ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる