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第一章【初々しい恋心は】

1 付き合いたての美男美女

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「おっはよー!」
「白雪っ!いやだから叩くなって!」
 俺たちって付き合ってるんだよな…?昨日の出来事は夢じゃなかったかと疑ってしまうほど、現状、俺たちは付き合っても何も変わっていなかった。
 ただ一つ、変わったことといえば──
「お前らって付き合ってんの?」
 以前までは軽く流せていたこの一言だ。クラスや学校の連中には交際のことを明かしていないため、この質問が飛んでくるとなんと答えたら良いか分からなくなる。
「ま、まさかねー?」
 お前は演技下手か!白雪は上手く誤魔化したつもりでいるのだろう。明らかなるドヤ顔でこっちを見てきた。まぁ、そんなところも可愛いところではあるんだけど。
「もしかしてお前ら、ホントに付き合ってんのっ?」
 興味津々といった感じで迫ってくる南斗の顔に、俺は手をつき出す。
「そういうプライベートなこと、そうやって詮索するんじゃねぇよ。」
「ちぇー!蓮のケチー!教えてくれたっていいじゃんねー白雪?」
「南斗はいつまでなんですかー?モテない男は辛いね!」
 完全に煽っている白雪に、南斗は唇を尖らせていた。
 そういえば白雪はみんなから「白雪」と呼ばれていて(クラスの人気者且つ姉貴のような存在)、俺もみんなと変わらず白雪と呼んでいる。だが俺たちが本当になら、下の名前で呼んでも許されるのではないだろうか…?
「白雪!提案がある!」
「蓮?そんな改まっちゃって、何ー?」
 そうだ、白雪は俺のことを下の名前で呼んでいるのだから、きっと俺から提案しても変に思われないはずだ!
「今度から白雪じゃなくて、は、はなって呼んじゃだめか…?」
 絵に描いたように一気に赤面して下を向く白ゆ…華は、なんとも愛らしい。
「別にいいけど?私は結構自分の名前気に入ってるし?」
 そういう問題なのか…。
「俺も華って名前、好きだよ。」
 思ったことを口にするとまた華は赤面して、まるでオモチャで遊んでいる気分になる。ほーん。これはからかいようがあるじゃねぇか。
「ちょっと蓮、何ニヤニヤしてるの?」
 おっといけない、こういうことは顔に出さずにコソコソ眺めるものなのだ。バレてしまっては一大事。
「いや華が、可愛いなぁと思ってさ。」
 俺は上手いことはぐらかすことに成功した。おまけにまたも華の照れ顔ゲットした。これはいいコンボだ。
「蓮ってもしかして、女慣れしてる?」
 これは本当に良く言われることだ。俺は、いわゆることをするそうだ(他人事)。確かに一ミリくらいは自覚がある。よく女子をからかったりするし、ちょっかいをかけたりもしている。自覚はあるからまだセーフだ。
「俺、交際するのは華が初めてなんだけどな。」
「えっ、嘘?蓮ってモテそうだと思ってたから。」
「おい、モテると交際は別件だぞ?」
 どうやら俺と華は、お互いにだと思っていたらしい。
 自分の容姿に自信をもったことなどなかったから、華にそう思ってもらえるのは嬉しかった。
「じゃあ私たち、美男美女なんだね!」
「それ、顔赤くしながら言うことか?」
「それは言わないでっ!」
 コロコロ変わる華の表情に俺は笑ってしまう。俺がからかえば華は赤くなって、俺が笑わせれば華も笑う。
「あぁ、幸せだなぁ。」
「えっ!?今なんて──」
「じゃあ行こうか。」
「ちょっと蓮ー!?今誤魔化したよねっ!?」
 笑いの絶えない俺たちの付き合いは、まだ始まったばかりだ。
 
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