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37. ぶつかられるんです
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自室に戻ると、メリーアンに制服からドレスへと着替えさせてもらいます。
お茶の用意を頼んで、私は椅子へと座り込みました。
はしたないとは思いつつも、机へと突っ伏します。
流石に、色々ありすぎて疲れました。
けれどこれからのことを考えずにはいられません。
私の家のしきたりの事、レイドリークス様の命を狙っているのが誰なのか。
何故と考えたって相手ではないのでわかるわけがないけれど、どう対処していくかの心算や方法なら、自身に出来うる限りとはなりますが、考えられます。
どんな事でもいい、レイドリークス様の力になりたい。
微力でもしなかった後悔よりする後悔を選びたい、そう心が訴えています。
ーー心の決めるままにいよう、せめて安全とわかるまでは。
体を起こして気持ちを固めると、ちょうどお茶の用意を調えてメリーアンが入室してきました。
ありがたく入れてもらったお茶をいただきながら、私はすっきりとした思いで寛ぐのでした。
次の日から私は休憩時間はなるべく教室から出て、ひっそりと影ながらレイドリークス様に張り付くことにしました。
付かず離れず、決して対象には気づかれないよう。
時折先生に頼まれた用事で移動する際も、極力見当たるようにします。
そんな時です。
授業で使う教材を教室へと運んでいる最中に、ぶつかられてしまいました。
バササササーっと教材であるテキストが手から離れてしまい、廊下へと広がってゆきます。
「あっ」
私の非難の声を聞き、相手はこちらを振り向くとテキストを拾い始めました。
「すまない。ぼーっとしていてぶつかってしまった。怪我はないか?」
拾った物を手渡してくれながら、相手が言います。
……厄介な相手にぶつかられてしまいました……。
「いえこちらも不注意でしたから。ありがとうございます。」
お近づきになるのは不味いので、やり過ごそうとそのまま立ち去りかけたところで腕を掴まれます。
振り解こうにも不敬になるので出来ずこちらから話しかけるには相手が悪く、されるままになるしかなくて心の中に不快感が広がります。
けれど顔には出さすに相手の方を見ました。
「ああ、これは失礼した。その、君はーー綺麗だな」
つ…と掴まれた手の甲に指を這わされ背筋に冷や汗が伝います。
動きたい、動いてはダメ、その葛藤の中でどうにか動かずにいると、やっと相手が名乗りを上げました。
「俺はフェルナンテス=カルマンという。君の名前は?」
そう尋ねてくると同時に手を離したこの方は、茶髪に濃紺の一重の瞳は切れ長でひょろりと背が高く、物静かな真面目……場合によっては暗いと評されている、この国の第三皇子です。
今年確か十六になるので、私より一つ下の第五学年所属のはず。
「…………ルルーシア=ジュラルタと申します第三皇子殿下」
「ルルーシア……そうか、君があの。弟が迷惑をかけた、何かあれば俺を頼るといい」
「もったいなきお言葉にございます」
「では、また」
別れの挨拶に首を垂れそれを返事とします。
正直、感情の込もらない会話をする気になれませんでした。
それを特に気にも留めず、殿下は去っていきます。
私は自分の身に何が起こっているのか全くわからず少し薄気味悪さすら感じながら、テキストを早く用意しなくては、と本来の目的に気持ちを切り替えるのでした。
お茶の用意を頼んで、私は椅子へと座り込みました。
はしたないとは思いつつも、机へと突っ伏します。
流石に、色々ありすぎて疲れました。
けれどこれからのことを考えずにはいられません。
私の家のしきたりの事、レイドリークス様の命を狙っているのが誰なのか。
何故と考えたって相手ではないのでわかるわけがないけれど、どう対処していくかの心算や方法なら、自身に出来うる限りとはなりますが、考えられます。
どんな事でもいい、レイドリークス様の力になりたい。
微力でもしなかった後悔よりする後悔を選びたい、そう心が訴えています。
ーー心の決めるままにいよう、せめて安全とわかるまでは。
体を起こして気持ちを固めると、ちょうどお茶の用意を調えてメリーアンが入室してきました。
ありがたく入れてもらったお茶をいただきながら、私はすっきりとした思いで寛ぐのでした。
次の日から私は休憩時間はなるべく教室から出て、ひっそりと影ながらレイドリークス様に張り付くことにしました。
付かず離れず、決して対象には気づかれないよう。
時折先生に頼まれた用事で移動する際も、極力見当たるようにします。
そんな時です。
授業で使う教材を教室へと運んでいる最中に、ぶつかられてしまいました。
バササササーっと教材であるテキストが手から離れてしまい、廊下へと広がってゆきます。
「あっ」
私の非難の声を聞き、相手はこちらを振り向くとテキストを拾い始めました。
「すまない。ぼーっとしていてぶつかってしまった。怪我はないか?」
拾った物を手渡してくれながら、相手が言います。
……厄介な相手にぶつかられてしまいました……。
「いえこちらも不注意でしたから。ありがとうございます。」
お近づきになるのは不味いので、やり過ごそうとそのまま立ち去りかけたところで腕を掴まれます。
振り解こうにも不敬になるので出来ずこちらから話しかけるには相手が悪く、されるままになるしかなくて心の中に不快感が広がります。
けれど顔には出さすに相手の方を見ました。
「ああ、これは失礼した。その、君はーー綺麗だな」
つ…と掴まれた手の甲に指を這わされ背筋に冷や汗が伝います。
動きたい、動いてはダメ、その葛藤の中でどうにか動かずにいると、やっと相手が名乗りを上げました。
「俺はフェルナンテス=カルマンという。君の名前は?」
そう尋ねてくると同時に手を離したこの方は、茶髪に濃紺の一重の瞳は切れ長でひょろりと背が高く、物静かな真面目……場合によっては暗いと評されている、この国の第三皇子です。
今年確か十六になるので、私より一つ下の第五学年所属のはず。
「…………ルルーシア=ジュラルタと申します第三皇子殿下」
「ルルーシア……そうか、君があの。弟が迷惑をかけた、何かあれば俺を頼るといい」
「もったいなきお言葉にございます」
「では、また」
別れの挨拶に首を垂れそれを返事とします。
正直、感情の込もらない会話をする気になれませんでした。
それを特に気にも留めず、殿下は去っていきます。
私は自分の身に何が起こっているのか全くわからず少し薄気味悪さすら感じながら、テキストを早く用意しなくては、と本来の目的に気持ちを切り替えるのでした。
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