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改稿版
15 悪女は断罪される【改稿版】
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彼らは三人ほどいて、どうやら私に声をかけた禿げ頭の人が一番偉いらしかった。
他の一人のうち、小柄でおかっぱの方が私を後ろ手に縛り、足枷の鎖をベッドの脚から外して持つ。
「ウルム=シュテール、国王様並びに王妃様の決定によって、本日これより刑を執行する」
「異論があるけど従うわ」
「お前、生意気なっ!」
大柄で角刈りの残りの一人が、私の言葉が気に入らなかったようで威圧してきた。
負けじと私の方でも背筋を伸ばしてその瞳を見返す。
姿がみすぼらしくても、気持ちくらいは凛としていたかった。
私に返されると思っていなかったんだろう。
角刈りは少しばかり目を見開くと「チッ」と舌打ちをした。
「ダン、静かに。罪状を言い渡す、王太子の次期婚約者に対しての数々の暴行及び殺害未遂。刑はギロチンによる死刑だ。首を切る前に大切な者に言い残す時間の自由があるが、使うか」
王太子の次期婚約者、という強い言葉に少しの眩暈がする。
そこまで話が進んでいたのなら何故、という益体もない考えが浮かんだけれど言葉にはしなかった。
執行官に言ってもそれはお門違いだ。
「使います」
最後の自由を使い切ろうと、力強く返事をした。
※ ※ ※
王国の精神的最果て、処刑場にやってきた。
ギロチンに首吊り、引きずり回すための馬などありとあらゆる苦痛集まる場所。
石積みとモルタルで円形に整えられた鉢底のようなそこは、周りをぐるりと腰掛けられる席が設けられ今、観衆がはちきれんばかりだ。
遠くその表情は窺い知れないが、処刑場は現在私を眺める者の怒号や歓声がひしめいている。
一番よく見える特別席には今、王子とその取り巻きらしき人達が座っていた。
国王などの姿は見えない。
もしかしたら、これは王子の単独での行動なのかも知れなかった。
そうした中、私の首はギロチン台にかけられ別れの時を待つ。
「この者は、王太子の次期婚約者への非道極まりない暴行、果ては殺害未遂を起こした! 王太子並びに第二王子を誑かそうとし、国の中枢の未来まで脅かした!!」
一番偉い刑執行官のその一言に、観衆から割れんばかりの罵詈雑言が聞こえてきた。
気を良くしたのか、彼はさらに言い募る。
「傾国の悪女を野放しにしていては、いずれこの国へ災いをもたらしやがて民草根絶やしにされん。今こそ正義を!!」
言葉が終わるなり「正義を!!」と言う民衆の復唱と歓声が沸き起こる。
方々から、やれ盗人だの、色情魔だのという単語も聞こえて。
どうやら大分根も葉もない噂が駆け巡ってしまったらしい、と王子側の根回しの良さにある種の感心までしてしまった。
「さりとて、如何なる罪人とて最期に等しく自由与えられん。言い残しはあるか」
執行官の問いに私は形だけはしおらしく頭を台の上に乗せて、息を深く吸い込み言葉の拳を力一杯振り上げた。
「ひと思いに殺してくださいまし! 私は謗られるようなこと、しておりませんけれど!」
腹の底から全力で。
「黙れ悪女!! 反省する気持ちはないのか!」
刑執行の場での言葉は、しおらしい反省以外受け付けていないらしい。
反抗的な態度に、角刈り執行官に押さえつけられ脇腹を蹴られた。
「かはっ……!」
手は後ろで拘束され膝をつきくの字に曲がった体、その先にある頭は台の上にあり、暴力から逃げることもできない。
だけど口はまだ動く。
私は反抗上等とばかりに、台の上に押しつけられた頭を目一杯持ち上げ執行官の押さえつけから解放し、痛みすら無視して、ただ自分の思いを言葉にした。
「私は本当に何もしておりません! 証人も探せばいるはずですわ!! 裏を返せば私に罪を被せたい者がいるということ! 王族につけられた傷は私の背中にこそあるのです!! それでも国の知とならんと勉強してきた誇りも、この背中こそに!!!!」
「黙らないか!!」
脇腹を先ほどより強く蹴られ、頭も再び台へと押しつけられてしまった。
「ぐっ!」
痛みを堪える私に冷ややかな目を向けながら、禿げた執行官が口を開いた。
「それでは刑の」
「待たれよ!!」
そこへいななきと共に駆けってきたのか馬が飛び込んできた。
聞き慣れた声もする。
「ぜ、ふぁ……?」
ざわめきが会場を埋め尽くした。
馬から下乗しつつ彼が何か言っているようにも見えるけれど、掻き消えて聞こえない。
「静粛に、静粛に!!」
執行官が場を鎮めるために三人揃って民衆へと声を張り上げた。
そこへ第二、第三の馬が飛び込んでくる。
混乱の中で私はゼファーに縛られていた手を解かれ、ギロチン台から救い出されていた。
「静粛に!!!!」
何度目かの声かけの後、民衆は何事かと口をつぐんだらしく場が静寂に包まれた。
その中で、一番偉い刑執行官がゼファーへと声をかける。
「第二王子、これは何事ですかな」
「刑は取りやめです、証人を連れてきました」
彼の言葉に、執行官が狼狽える。
「しかし」
「そもこの刑、誰の主導で執り行っている? 王の許可はいただいたのか」
執行官の声に呼応しゼファーがより強い口調で尋ねた。
「国王様と王妃様の許可はございます。そして王太子が、お調べになった事件の数々稀に見る非道の為、両名へ嘆願され聞き入れなさり即日判断した、と……」
「父上! それは誠ですか!!」
場に通る声でゼファーが高らかに呼びかける。
「否!!」
呼びかけへの応答に、その場が騒然となる。
声のした方を見ると特別席の後方に、他を圧倒するほどの威厳ある国王様の姿があった。
ゆったりと歩きながら、こちらへと歩いてきている。
その後ろ。
王子と、既に婚約者然としてそばにいたらしいデューデン様も、連れ立って席からこちらへと移動してくる。
他の一人のうち、小柄でおかっぱの方が私を後ろ手に縛り、足枷の鎖をベッドの脚から外して持つ。
「ウルム=シュテール、国王様並びに王妃様の決定によって、本日これより刑を執行する」
「異論があるけど従うわ」
「お前、生意気なっ!」
大柄で角刈りの残りの一人が、私の言葉が気に入らなかったようで威圧してきた。
負けじと私の方でも背筋を伸ばしてその瞳を見返す。
姿がみすぼらしくても、気持ちくらいは凛としていたかった。
私に返されると思っていなかったんだろう。
角刈りは少しばかり目を見開くと「チッ」と舌打ちをした。
「ダン、静かに。罪状を言い渡す、王太子の次期婚約者に対しての数々の暴行及び殺害未遂。刑はギロチンによる死刑だ。首を切る前に大切な者に言い残す時間の自由があるが、使うか」
王太子の次期婚約者、という強い言葉に少しの眩暈がする。
そこまで話が進んでいたのなら何故、という益体もない考えが浮かんだけれど言葉にはしなかった。
執行官に言ってもそれはお門違いだ。
「使います」
最後の自由を使い切ろうと、力強く返事をした。
※ ※ ※
王国の精神的最果て、処刑場にやってきた。
ギロチンに首吊り、引きずり回すための馬などありとあらゆる苦痛集まる場所。
石積みとモルタルで円形に整えられた鉢底のようなそこは、周りをぐるりと腰掛けられる席が設けられ今、観衆がはちきれんばかりだ。
遠くその表情は窺い知れないが、処刑場は現在私を眺める者の怒号や歓声がひしめいている。
一番よく見える特別席には今、王子とその取り巻きらしき人達が座っていた。
国王などの姿は見えない。
もしかしたら、これは王子の単独での行動なのかも知れなかった。
そうした中、私の首はギロチン台にかけられ別れの時を待つ。
「この者は、王太子の次期婚約者への非道極まりない暴行、果ては殺害未遂を起こした! 王太子並びに第二王子を誑かそうとし、国の中枢の未来まで脅かした!!」
一番偉い刑執行官のその一言に、観衆から割れんばかりの罵詈雑言が聞こえてきた。
気を良くしたのか、彼はさらに言い募る。
「傾国の悪女を野放しにしていては、いずれこの国へ災いをもたらしやがて民草根絶やしにされん。今こそ正義を!!」
言葉が終わるなり「正義を!!」と言う民衆の復唱と歓声が沸き起こる。
方々から、やれ盗人だの、色情魔だのという単語も聞こえて。
どうやら大分根も葉もない噂が駆け巡ってしまったらしい、と王子側の根回しの良さにある種の感心までしてしまった。
「さりとて、如何なる罪人とて最期に等しく自由与えられん。言い残しはあるか」
執行官の問いに私は形だけはしおらしく頭を台の上に乗せて、息を深く吸い込み言葉の拳を力一杯振り上げた。
「ひと思いに殺してくださいまし! 私は謗られるようなこと、しておりませんけれど!」
腹の底から全力で。
「黙れ悪女!! 反省する気持ちはないのか!」
刑執行の場での言葉は、しおらしい反省以外受け付けていないらしい。
反抗的な態度に、角刈り執行官に押さえつけられ脇腹を蹴られた。
「かはっ……!」
手は後ろで拘束され膝をつきくの字に曲がった体、その先にある頭は台の上にあり、暴力から逃げることもできない。
だけど口はまだ動く。
私は反抗上等とばかりに、台の上に押しつけられた頭を目一杯持ち上げ執行官の押さえつけから解放し、痛みすら無視して、ただ自分の思いを言葉にした。
「私は本当に何もしておりません! 証人も探せばいるはずですわ!! 裏を返せば私に罪を被せたい者がいるということ! 王族につけられた傷は私の背中にこそあるのです!! それでも国の知とならんと勉強してきた誇りも、この背中こそに!!!!」
「黙らないか!!」
脇腹を先ほどより強く蹴られ、頭も再び台へと押しつけられてしまった。
「ぐっ!」
痛みを堪える私に冷ややかな目を向けながら、禿げた執行官が口を開いた。
「それでは刑の」
「待たれよ!!」
そこへいななきと共に駆けってきたのか馬が飛び込んできた。
聞き慣れた声もする。
「ぜ、ふぁ……?」
ざわめきが会場を埋め尽くした。
馬から下乗しつつ彼が何か言っているようにも見えるけれど、掻き消えて聞こえない。
「静粛に、静粛に!!」
執行官が場を鎮めるために三人揃って民衆へと声を張り上げた。
そこへ第二、第三の馬が飛び込んでくる。
混乱の中で私はゼファーに縛られていた手を解かれ、ギロチン台から救い出されていた。
「静粛に!!!!」
何度目かの声かけの後、民衆は何事かと口をつぐんだらしく場が静寂に包まれた。
その中で、一番偉い刑執行官がゼファーへと声をかける。
「第二王子、これは何事ですかな」
「刑は取りやめです、証人を連れてきました」
彼の言葉に、執行官が狼狽える。
「しかし」
「そもこの刑、誰の主導で執り行っている? 王の許可はいただいたのか」
執行官の声に呼応しゼファーがより強い口調で尋ねた。
「国王様と王妃様の許可はございます。そして王太子が、お調べになった事件の数々稀に見る非道の為、両名へ嘆願され聞き入れなさり即日判断した、と……」
「父上! それは誠ですか!!」
場に通る声でゼファーが高らかに呼びかける。
「否!!」
呼びかけへの応答に、その場が騒然となる。
声のした方を見ると特別席の後方に、他を圧倒するほどの威厳ある国王様の姿があった。
ゆったりと歩きながら、こちらへと歩いてきている。
その後ろ。
王子と、既に婚約者然としてそばにいたらしいデューデン様も、連れ立って席からこちらへと移動してくる。
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