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第百六十一話 最初に約束を違えたのは(※挿絵あり)
「エグラー伯爵と令嬢が、セルデア公国の王城に居を移したそうです。帝国内の邸にいた使用人達も、ほとんどがセルデア公国に移ったとか」
セルデア公国の件を任せていたマルティンが報告すると、ラウルは首をかしげた。
「事前に皇宮警察のほうに報告はなかったようだが」
「はい。報告はされていません」
「短期滞在ならともかく、長期の滞在には許可が必要なはずだが…」
誰もが知っている当然のことを、念のためにラウルは口に出して言ってみた。
「ええ…ですが、今はまだ、短期の滞在だと言い張ることもできる状況です」
「もう少し様子を見るしかないか」
「そうですね。本当に何を考えているのかよく分からない家門です…」
たとえセルデア公国の王城を買ってそこに長期滞在するにしても、事前に報告があれば法的に問題はない。
事前に報告がない状態がこのまま続けば、皇宮警察が動く必要が出てくる。
事前の報告手続きは面倒でも難しいものではなく、貴族ならなおさら簡略されている。
手続きをせずに出国したこと自体が不可解だった。
ただ現在はまだ長期の滞在とはいえないため、当面は手出しができない状態が続くことになるのだろう。
「私は皇女殿下からの指示で別ルートで伯爵令嬢の調査をしていたのですが…」
ちょうど報告があるといって来ていたイザークが口を挟んだ。
「警察が介入しても問題なさそうな情報が入ってきました」
何やら不穏な気配をはらんだ報告に、少し緊張が走った。
「どんな情報だ?」
「職を失った公国の民を集めているそうです」
「例の慈善事業とやらのためではないのか?」
「傭兵としての募集だという証言が複数あります」
マルティンとディルクは思わず顔を見合わせた。
「それは、確かに警察が介入できるな」
「介入しますか?それとも、もう少し様子を見ますか?」
「ディルクはどうすれば良いと思う?」
ラウルはディルクに話を振ってみた。
こういうとき、一番冷静で現実的な意見を言ってくれるのがディルクだった。
「今の状態では、言い逃れをされる可能性もないとは言えませんので、もう少し静観するのが良いかと。ただし、監視は怠らずに」
自分の意見とほぼ一致した意見が出て、ラウルはうなずいた。
「そうだな、そうしよう。少しでも動きがあれば、即座に介入する。イザークとマルティンは、そのまま調査と監視を続けてほしい」
「私はエグラー伯爵家の資金源を少し探ってみたいのですが」
ディルクがそう告げてきたので、ラウルは頷いた。
「それも必要なことだ。ディルクに任せてもいいか?」
「はい」
「警官の手が必要なら言ってください。貴族の調査に優れた者が何名かいますので」
「3名ほど派遣してもらえると助かる」
「承知しました。後ほど、向かわせます」
セルデア公国とエグラー伯爵家への対策は、綺麗にまとまった。
エグラー伯爵令嬢フロレンティーナは、車椅子に乗って窓の外を眺めていた。
彼女がいるのは、セルデア王国の王城、そのもっとも格式高い部屋の窓だ。
城を知る者の話では、以前は王妃がこの部屋を使っていたのだという。
「ザラ様、お望み通り、城は手に入れました。あなたの僕となる騎士たちも、集めています。約束は守ってくださるのでしょうね?」
フロレンティーナが視線を向けた先には、『ザラ』と呼ばれた黒衣の女性の姿があった。
「良いだろう。少しこちらに分の悪い契約のような気もするが」
ザラの言葉に、フロレンティーナはくすりと笑う。
「あら…最初に約束を違えたのはザラ様のほうではありませんか。契約には厳格な魔女が、そのようなことで良いのですか?」
「魔女を相手に説教をするなど、そなたぐらいのものだろう」
「お説教ではありませんわ。公平な契約をお願いしているだけです」
「まあ、あれは出来心だった」
ザラは苦笑しながらため息をつき、そして頷いた。
「そういうそなただからこそ、今回の契約にも応じた。何があっても折れない信念を持つ者の体は、我々にとって深海の底に沈む希少な宝石よりも貴重なものだ。そなただけではなく、あの男もな」
「10年お待ちいただければ、両方手に入りますわ」
「分かっている。10年か…まあ、手に入れた10年を心ゆくまで楽しむと良い」
「ええ、そうしますわ」
魔女は窓の外に視線を向けた。
「そろそろ帝国が騒がしくなる頃だろうな」
「ええ。帝国だけではなく、こちらも」
「警官たちが右往左往する姿が見えるようだ」
「きっと、右往左往どころではないはずですわ」
フロレンティーナは自分で車椅子を動かし、窓の外を眺める。
今日は冷え込みが強くなり、外にはうっすらと雪が積もっていた。
もうすぐ、本格的な冬がやってくる。
そして、ようやくラウルを手に入れる時も、やってくるのだ。
(9年……長かったわね…)
初めてラウルと会った時のことはよく覚えている。
たぶん、向こうは覚えていないだろうが…。
両親に連れられていった舞踏会で、兄と一緒に嫌々参加していた彼を見つけた。
彼に見とれて慣れないヒールで躓きそうになった時、咄嗟に腕を伸ばして支えてくれた。
その時、きっと運命だと思った。
どうしてもほしくなった。
手に入れようとしても、なかなか上手くはいかなかった。
身分の問題もあったし、彼の祖父でもある当時の皇帝の監視も厳しかった。
ベーレンドルフ家の公子をそそのかして機会を作ったけど、それも失敗した。
皇帝が邪魔だった。
ラウルを戦場に連れて行き、会う機会も奪われた。
皇帝を殺そうと思った。
ただ、皇帝はフロレンティーナが手を下す前に死んだ。
誰か別の人間が殺したのだろうが、おそらくラウルの兄のランベルトではないかとフロレンティーナは考えている。
皇帝は死んだが、今度は彼の兄・ランベルトが邪魔になった。
フロレンティーナは魔女と契約し、両足と片手を引き換えに、ランベルトとその妻子を殺させた。
しかしその代償の大きさのため、フロレンティーナは今年の初めまで、ほぼ寝たきりの生活を余儀なくさせられた。
それは大きな計算ミスだった。
ラウルが北部へ行ってしまったことも、フロレンティーナの計画を大きく狂わせた。
フロレンティーナが動けなかった間に、ラウルは結婚してしまった。
(でも、今度こそ、手に入れるわ…)
セルデア公国の件を任せていたマルティンが報告すると、ラウルは首をかしげた。
「事前に皇宮警察のほうに報告はなかったようだが」
「はい。報告はされていません」
「短期滞在ならともかく、長期の滞在には許可が必要なはずだが…」
誰もが知っている当然のことを、念のためにラウルは口に出して言ってみた。
「ええ…ですが、今はまだ、短期の滞在だと言い張ることもできる状況です」
「もう少し様子を見るしかないか」
「そうですね。本当に何を考えているのかよく分からない家門です…」
たとえセルデア公国の王城を買ってそこに長期滞在するにしても、事前に報告があれば法的に問題はない。
事前に報告がない状態がこのまま続けば、皇宮警察が動く必要が出てくる。
事前の報告手続きは面倒でも難しいものではなく、貴族ならなおさら簡略されている。
手続きをせずに出国したこと自体が不可解だった。
ただ現在はまだ長期の滞在とはいえないため、当面は手出しができない状態が続くことになるのだろう。
「私は皇女殿下からの指示で別ルートで伯爵令嬢の調査をしていたのですが…」
ちょうど報告があるといって来ていたイザークが口を挟んだ。
「警察が介入しても問題なさそうな情報が入ってきました」
何やら不穏な気配をはらんだ報告に、少し緊張が走った。
「どんな情報だ?」
「職を失った公国の民を集めているそうです」
「例の慈善事業とやらのためではないのか?」
「傭兵としての募集だという証言が複数あります」
マルティンとディルクは思わず顔を見合わせた。
「それは、確かに警察が介入できるな」
「介入しますか?それとも、もう少し様子を見ますか?」
「ディルクはどうすれば良いと思う?」
ラウルはディルクに話を振ってみた。
こういうとき、一番冷静で現実的な意見を言ってくれるのがディルクだった。
「今の状態では、言い逃れをされる可能性もないとは言えませんので、もう少し静観するのが良いかと。ただし、監視は怠らずに」
自分の意見とほぼ一致した意見が出て、ラウルはうなずいた。
「そうだな、そうしよう。少しでも動きがあれば、即座に介入する。イザークとマルティンは、そのまま調査と監視を続けてほしい」
「私はエグラー伯爵家の資金源を少し探ってみたいのですが」
ディルクがそう告げてきたので、ラウルは頷いた。
「それも必要なことだ。ディルクに任せてもいいか?」
「はい」
「警官の手が必要なら言ってください。貴族の調査に優れた者が何名かいますので」
「3名ほど派遣してもらえると助かる」
「承知しました。後ほど、向かわせます」
セルデア公国とエグラー伯爵家への対策は、綺麗にまとまった。
エグラー伯爵令嬢フロレンティーナは、車椅子に乗って窓の外を眺めていた。
彼女がいるのは、セルデア王国の王城、そのもっとも格式高い部屋の窓だ。
城を知る者の話では、以前は王妃がこの部屋を使っていたのだという。
「ザラ様、お望み通り、城は手に入れました。あなたの僕となる騎士たちも、集めています。約束は守ってくださるのでしょうね?」
フロレンティーナが視線を向けた先には、『ザラ』と呼ばれた黒衣の女性の姿があった。
「良いだろう。少しこちらに分の悪い契約のような気もするが」
ザラの言葉に、フロレンティーナはくすりと笑う。
「あら…最初に約束を違えたのはザラ様のほうではありませんか。契約には厳格な魔女が、そのようなことで良いのですか?」
「魔女を相手に説教をするなど、そなたぐらいのものだろう」
「お説教ではありませんわ。公平な契約をお願いしているだけです」
「まあ、あれは出来心だった」
ザラは苦笑しながらため息をつき、そして頷いた。
「そういうそなただからこそ、今回の契約にも応じた。何があっても折れない信念を持つ者の体は、我々にとって深海の底に沈む希少な宝石よりも貴重なものだ。そなただけではなく、あの男もな」
「10年お待ちいただければ、両方手に入りますわ」
「分かっている。10年か…まあ、手に入れた10年を心ゆくまで楽しむと良い」
「ええ、そうしますわ」
魔女は窓の外に視線を向けた。
「そろそろ帝国が騒がしくなる頃だろうな」
「ええ。帝国だけではなく、こちらも」
「警官たちが右往左往する姿が見えるようだ」
「きっと、右往左往どころではないはずですわ」
フロレンティーナは自分で車椅子を動かし、窓の外を眺める。
今日は冷え込みが強くなり、外にはうっすらと雪が積もっていた。
もうすぐ、本格的な冬がやってくる。
そして、ようやくラウルを手に入れる時も、やってくるのだ。
(9年……長かったわね…)
初めてラウルと会った時のことはよく覚えている。
たぶん、向こうは覚えていないだろうが…。
両親に連れられていった舞踏会で、兄と一緒に嫌々参加していた彼を見つけた。
彼に見とれて慣れないヒールで躓きそうになった時、咄嗟に腕を伸ばして支えてくれた。
その時、きっと運命だと思った。
どうしてもほしくなった。
手に入れようとしても、なかなか上手くはいかなかった。
身分の問題もあったし、彼の祖父でもある当時の皇帝の監視も厳しかった。
ベーレンドルフ家の公子をそそのかして機会を作ったけど、それも失敗した。
皇帝が邪魔だった。
ラウルを戦場に連れて行き、会う機会も奪われた。
皇帝を殺そうと思った。
ただ、皇帝はフロレンティーナが手を下す前に死んだ。
誰か別の人間が殺したのだろうが、おそらくラウルの兄のランベルトではないかとフロレンティーナは考えている。
皇帝は死んだが、今度は彼の兄・ランベルトが邪魔になった。
フロレンティーナは魔女と契約し、両足と片手を引き換えに、ランベルトとその妻子を殺させた。
しかしその代償の大きさのため、フロレンティーナは今年の初めまで、ほぼ寝たきりの生活を余儀なくさせられた。
それは大きな計算ミスだった。
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