夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸

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第百六十二話 3人で幸せになってみせる…

季節はすっかり冬となり、首都にも雪が降る日が増えた。
北部のように、外に出るのも大変なぐらいの降り方はないけれど、雪が積もる日もあった。
今日も朝から雪が降り、地面にうっすらと積もっている。
けれども今日は、憲法審議会があるので、皇宮に出かけなければならなかった。
今日の審議会では、審議会メンバーによる憲法改正の是非を決める議決が行われる。
リンツ男爵を中心とした賛成派による票のとりまとめは順調で、おそらく憲法改正は議決されるとみられている。

(今日はいつもの倍ぐらいいる…)

可能性は低いけれども、憲法改正反対派の妨害があるかもしれないということで、今日の皇宮までの護衛はいつもより多く配置されていた。

「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

皇宮へ行くときにはいつも私の護衛を担当してくれる警官とも、すっかり馴染みになった。
彼は、エマヌエルという名の平民の警官で、以前から本邸内の警備にも携わってくれている。
イザークさんとはまた少し違った雰囲気だけど、物腰の柔らかな美青年だ。
イザークさんとは同期で、プライベートでも仲が良いらしい。

「いよいよですね」
「はい。でも、想定していた最短距離での議決ができて良かったす」

当初は翌年まで議決が持ち越すのではないかと見られていたから、年内に議決できるのはかなりスピーディといえるだろう。
今日議決されれば年内には国民投票が行われ、早ければ来年早々には皇女様は皇太女となる。

(原作では、何年も先の話のはずだったのに)

もうとっくに原作とは異なる物語となっていたけれど、物語の主軸であるリリア皇女様の立太子がこれだけ早くなるのは、私自身も想像していなかった。
しかもその流れに、私自身が深く関わることになるなんて…。
一年前には、自分の部屋の中の世界しか知らなかった私が、今はラウル様の妻として、皇女様の侍女としていることが、とても不思議だった。
原作のシャーレットは非業の死を遂げたけど、私は絶対にそうはならない。
きっと、ラウル様とカイルと、3人で幸せになってみせる…。
私は改めてそう心に誓った。


「では、賛成多数で、憲法第一条二項の改正決定する」

裁判長の言葉が重々しく議場に響くと同時に、拍手と歓声が沸き起こった。
反対派の妨害も警戒されたけれどそれもなく、憲法の改正によって、皇位は女性でも継げることが決まった。
リリア皇女様の顔をチラリと見ると、少しホッとした表情で微笑んでいる。

「次に国民投票の日程を発表する。国民投票は、3週間後の12月24日に行う」

国民投票に関しては、平民の間で皇女様の人気が安定しているので、おそらく問題はないと考えられている。
ただそれでも、油断はできない。
反対派が最後のあがきとして、何をしてくるか分からないからだ。

(そういえば…お姉様が近いうちに会いたいって言ってたっけ…)

お姉様の話の内容も、おそらくベーレンドルフ公爵…そしてカスパー公子に関するものだ。
どんな話があるのかは分からないけれど、たぶん私にとってもラウル様にとっても、そしてお姉様にとってもあまり歓迎する話ではないのだろう。

(今日にでもラウル様に話して、お姉様と早めに会うようにしよう…)


「え…セルデア公国に行かれるのですか?」



エグラー伯爵と令嬢がセルデア公国に行ったきり戻ってこないという話は聞いていたけれど、まさか新婚の自分の夫までもが彼の国に行くとは…。
アグネスはいろいろ言いたい気持ちを堪えて、冷静を装いながら聞いた。

「セルデアは政情が不安定だと聞いておりますわ。そのような国に夫が出かけるのは、妻としては心配です。理由をお聞かせ願えませんか?」
「事業の手伝いだよ。お前の父親も一緒に行くんだ。何もやましいところはないぞ」
「やましいとかそういう問題ではなく…国王も不在で混乱のただ中にあるセルデアで、いったい何の事業を行うつもりなのですか?」
「そんなことは、お前の父親のほうがよく知っているだろう。俺はただ、手伝いに呼ばれて行くだけだからな」

父親のグリーン侯爵のことを言われると、アグネスはそれ以上何も聞けなかった。
父は娘も息子も、家門のための道具として思っていない。
余計なことを聞けば、『お前はさっさと跡継ぎを産め。それが仕事だ』と言われてしまうだろう。

「ファーレンハイトの嫁と会っているらしいが、何か聞き出すようにとでも言われたのか?」
「いえ、そのようなことはありません。あの子とは、そういう話は一切しませんから」
「まあ、それならいいが。会うなとは言わないが、向こうも何を探ってくるか分からないから、気をつけろよ」
「はい、承知しました」

夫や父親が自分に何も話さないのは、シャーレットと連絡を取り合っていることも原因なのだろうとアグネスは思った。
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