遥かなる物語

うなぎ太郎

文字の大きさ
12 / 53
第2章

ポリアーヌの戦い

しおりを挟む
「進めー!」
僕の号令によって、ベルタン軍は一斉に進撃を開始した。

片手には一本槍を握りしめ、もう片方で馬の手綱を握り、僕は駆け抜ける。ベルタン家の旗が高く掲げられ、兵士たちは剣や槍を手に、敵軍の待ち受ける方向へと勢いよく突入する。

初陣。その言葉を胸中で唱えるたびに、その重みが身に染みる。なんとしても僕は勝たなければならない。家族と領地を守らねばならない。今はその気持ちだけだった。この先に何があろうとも、ひたすら走るしか無かった。

両軍が衝突し、激しい野戦が始まった。戦場に剣や槍の交わる音が響き、赤い血が地面に飛び散る。
僕の目の前に長剣を携えた敵兵が現れたかと思ったら、突然襲いかかって来た。僕は槍でその敵兵を突き刺した。彼の甲冑に覆われた腹から血が吹き出し、その場に倒れ込んだ。

僕は生まれて初めて人を殺した。

血の匂いが鼻をつき、耳をつんざく悲鳴が響く中、僕は自分の行動に恐怖と罪悪感を覚えた。しかし、戦場に立つ者に躊躇は許されない。次々と襲いかかってくる敵兵たちに、僕は機械的に槍を振るった。

戦いが激しさを増すにつれ、時間の感覚が失われていった。どれほどの時が経ったのか、何人の敵を倒したのか、もはや分からない。ただ、生き残るために戦い続けるしかなかった。

突如、敵の放った矢が僕の目の前に飛んで来た。僕は間一髪で避ける。

「スーパーファイアーボール!」
僕は炎魔法を用いて巨大な火の玉を放った。火の玉は猛スピードで飛んでいき、次々に敵の兵士を倒して行った。最終的に火の玉によって十人ほどの敵兵が死んだ。

開戦から1時間が経過し、ベルタン軍はどんどん不利になっていった。ラロニア軍の抵抗は想定以上に激しく、僕たちはじりじりと後退されられていった。

「シャルル様!これ以上犠牲を出すわけにはいきません!撤退しましょう!」
白馬に跨ったラファエルが駆けつけて来た。
「いや、駄目だ!後方に早馬を走らせて、シモン伯爵に助けを求めるんだ!」
「りょ、了解しました!」

段々と僕は人を殺すのにも慣れて来た。これは異常な感覚には違いないが、戦い続ける、それしか選択肢は無かった。僕は母上やルネ、イザーク、ジャン、フローランの顔を思い出した。

その瞬間、僕の戦意は俄に高まった。僕は大切な家族を、領地の人々を守るために戦っている。戦わなければならない。勝たなければならない。ベルタン家の名に賭けて!

「怯むなー!進めー!」僕は出せるだけの声を張り上げ、軍勢に向かって力強く命令を出した。僕の言葉に従い、兵士たちは再び前進を始めた。

ラロニア軍の抵抗はますます激しくなり、戦場は混乱の中にあった。騎兵が激しくぶつかり合い、歩兵たちは一歩も引かずに戦った。僕は戦いの中心に立ち、敵の動きを見極めながら指揮を執った。

「左翼はそのまま防衛、右翼は突撃だ!中央は奮闘しろー!」前線の兵士たちに向かって精一杯に叫びながら、一本槍で次々に敵兵を倒していった。

時間が経つにつれ、ベルタン軍は少しずつ戦況を挽回し始めた。敵の先鋒が潰走し、その隙間を突いてベルタン軍の傭兵部隊が敵に矢の雨を浴びせた。

そこにシモン伯爵率いるポリアーヌ軍が到着した。シモン伯爵は真っ黒の甲冑を着て、馬上で十字槍を握っていた。
「ベルタン伯爵!アンリ・シモンが参りました!」
「シモン伯爵!駆けつけて下さり感謝致します!前方左翼が手薄になっておりますので、そちらへ回って頂けますか?」
「了解致した!」

ポリアーヌ軍の猛攻が始まると、ラロニア軍もその勢いに押され始めた。シモン伯爵率いる強力な騎士軍は鋭い突撃を繰り出し、敵軍に大きな隙を生じさせた。

「皆の者ー!今こそ反撃だ!彼らを追い詰めろ!」僕は熱い気持ちで叫び、兵士たちに向かって槍を振りかざした。ベルタン軍は一斉に攻勢をかけ、敵の抵抗を一気に打ち破った。

ラロニア軍は国境の防衛設備まで後退し、体勢を立て直そうとしたが、敵に背中を見せたことが仇となり、ベルタン軍の騎馬部隊の攻撃によってついに左右に分裂した。

僕たちの圧倒的な勢いにより、ラロニア軍は急速に混乱状態に陥った。シモン伯爵の騎士軍は敵陣に突撃し、鉄壁の防御を突き破っていった。敵の一部は抵抗を試みたが、ベルタン軍とポリアーヌ軍の連携により、次々と崩れ去っていった。

「退けー!退けー!」敵のロベール将軍の命令で、敵軍は退却を開始した。
しかし、既に敵は僕たちに包囲されており、逃げ場は無かった。

僕は勝利の兆しを感じながらも、敵が最後の抵抗を試みることを予測していた。決して油断せず、部隊に攻撃を続けさせた。

「敵は包囲されている!逃がすな!」僕は兵士たちに指示を出し、敵の残党を追い詰めるよう命じた。ポリアーヌ軍もその勢いに乗じて、敵の後方を切り裂いていった。

ラロニア軍の混乱は最高潮に達し、兵士たちは命がけで抵抗しようとしたが、力尽きて散り散りになっていった。僕とシモン伯爵は共に戦場を見渡し、敵の抵抗が弱まっているのを確認した。

「シモン伯爵、後方を確保してください。残りの敵を掃討する準備を整えましょう。」
「了解しました。ベルタン伯爵には捕虜の確保をお願いします。」

僕たちの勝利は決定的となり、戦場には静寂が戻ってきた。生き残った敵兵は降伏し、捕虜として捕縛された。戦いの余韻が漂う中、捕虜たちは連行され、国境近くの砦に併設されていた牢獄に収容された。ロベール将軍もまた連行されていった。

その夜、僕たちはポリアーヌの宿営地で、戦勝を祝って宴会を開いていた。
シモン伯爵が新鮮な食糧を提供してくれたので、僕たちは肉を焼き、酒を飲むことが出来た。僕も率先して祝宴に加わり、飲んで食べて歌っていた。

そこへシモン伯爵がやって来た。
「ベルタン伯爵、この戦いでの勝利、誠に素晴らしいことですぞ!」シモン伯爵は笑顔で言った。
「シモン伯爵のおかげでここまで来られました。感謝しています。」僕は礼を述べた。
僕はシモン伯爵と勝利の喜びを分かち合った。しかし、戦いは終わったわけでは無い。

「シモン伯爵は今後、ラロニアとの戦いでどのような作戦を考えておられますか?」僕は訊いた。
「アンティロ城攻略戦です」

続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

処理中です...