遥かなる物語

うなぎ太郎

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第3章

暗殺者シャルル

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宿営地に退却したスラーレン軍は、激しい混乱状態に陥っていた。
ベルタン軍では、僕やラファエル、ロジェ、ジョゼフが拡声器を使って兵士たちに呼びかけ、何とかパニックはおさまった。

皇帝陛下のテントに再び召集された僕たちは、今後の行動をどうするべきか、頭を抱えていた。

「敵の氷魔法の威力は凄まじく、よほど魔力の強い魔法使いでしょう。さらにベルタン伯爵の炎魔法と相性の悪い氷魔法を使って来たことから、スパイによってこちら側の何らかの情報を得ていると思われます」ルロワ侯爵が言った。

皇帝陛下は深く考え込んだ後、「情報の漏れを防ぐために、情報管制を強化し、偵察部隊の配置を見直す必要があるだろう。そして、氷魔法の脅威に対抗するために急いで対策を練らなければならない。」と言った。

「陛下、一つよろしいでしょうか?」僕が進み出た。
「実は、ジョゼフの偵察部隊が、敵の氷魔法の使い手を特定しております。それが、テオという騎士です。」

陛下と侯爵は驚いた表情を浮かべた。
侯爵が口を開こうとしたが、陛下が先に言った。「それは貴重な情報だ。そのテオという者を捕らえるか排除するかの方法を考えねばならない」

「そこで陛下、私は一つの方法を考えています。それが暗殺です」
自分でも驚くほど冷酷な言葉が口をついて出た。最近では戦いに次ぐ戦いで、僕は残酷な発言も行為も抵抗が無くなってきている。

テントの中は一瞬静まり返った。陛下が静かに頷いた後、口を開いた。

「暗殺という手段も考慮すべきだろう。しかし、その場合、失敗のリスクも大きいということを念頭に置かねばならない。暗殺を実行するには、情報収集と計画を徹底的に行う必要がある。また、その成功には高度な技術と機密保持が求められる」

「私がその役をやりましょうか?」
驚いたことに、ラファエルが暗殺の任務を買って出た。
「ラファエル、君の覚悟は理解できる。しかし、暗殺は極めて危険な任務であり、成功率は高くない。僕たちは決して無駄な犠牲を出す訳にはいかない」僕が慌てて止めた。

「暗殺を行うからには、言い出した僕自身がやろうと思っております。」
そう言った後でまた後悔してしまったが、僕は剣や魔法の訓練を怠っていないだけの自信がある。暗殺という危険で残虐な行為も、戦争に慣れてきた今なら出来る気がした。

「分かったシャルル。そちにテオの暗殺を命じる。幸運を祈る」
皇帝陛下の一言に、テント内は一気にざわつき出したが、陛下はどうやら本気らしい。
「頼んだぞシャルル」
テントを後にし、ベルタン軍の持ち場に戻った僕は、暗殺のための計画を立て始めた。

ラファエル、ロジェ、ジョゼフら側近たちを前に、僕は自分の考えを述べた。
「とにかく慎重に行動しなければならない。テオの暗殺は、成功率が低く、失敗のリスクが大きい危険な任務だ。
まず、情報収集が必要だ。テオの日常的な行動、弱点、護衛の配置などを探る。偵察を強化して、彼の動向を把握しよう。
そして計画を練る。敵の陣地にどうやって侵入するのか、どのように接近し、彼を殺害するかを検討しよう。また、逃走経路や偽装の手段も考慮しなければならない。」

僕は一気に喋り、息を吐いた。
「分かりましたシャルル様。今夜、偵察部隊の精鋭を敵陣に忍び込ませ、テオのテントの位置を確認させます。さらに明日の朝から昼にかけて、彼の行動を把握します。」ジョゼフが言った。

「了解した。では決行は明日の夜だ。」

翌日、陽が沈むと、僕たちは暗殺実行のために動き出した。
僕に従ったのはラファエル、ロジェ、ジョゼフとその他何人かの取り巻きだった。

商人のふりをして国境を通過し、敵陣近くの森の空き家で、再び武装して剣を携えた。
「まず敵陣に侵入する際には剣を抜き、地図に従って一気にテオのテントまで駆け抜けるぞ。周りの兵士に袋叩きにされても怯まずに斬り倒して行こう。いざとなったら僕の炎魔法もあるし、そうだポール、お前の結界魔法で身を守ることもできる。」
僕は部下のポールに指示を出した。彼は頷いた。

「よし次にテオのテントまで行ったら、彼の首を一撃で刎ねる。腕や足を切り落とすだけではダメだ。回復魔法の得意な者がいれば、すぐに治ってしまう。首を取ったら急いで敵陣を脱出し、国境までダッシュだ」
「しかしそこまで体力が持つでしょうか?敵陣から国境まで3キロはありますよ」ラファエルが言った。

「途中で結界を張れば1分程度なら休憩できる。追いつかれたら、結界を解くと同時に僕の炎魔法を使うぞ」
「「「了解!」」」

いよいよ草原の中に、怪しげな合従軍陣地の光が見えてきた。全員剣を抜いて構える。
「行くぞー!」
「「「おーっ!」」」

一斉に走り出した僕たちは、陣地の内部へと走っていった。
「何だコイツら!殺せ!」
簡単には殺されない。周りの兵を次々と斬り殺して走り去る。だんだんと爽快感すら覚えてきてしまった、これは危険だ。

「あれだ!テオのテントだ!」
ジョゼフが、一つだけ巨大な白のテントを指差す。
「よし、とっとと首を刎ねて撤退だー!」

そこに長槍を持った騎士たちが立ちはだかった。
剣と槍とでは、とても勝負にならない。こうなったら魔法を使うしか無い。
「ファイア・ウィンドウ・バースト」
僕の目の前に大きな魔法陣が現れ、真っ赤な激しい炎が飛び出した。

「ぎゃあああああああ」
次々に倒れて行く騎士たちを横目に、僕たちはテントの中へと進んでいった。
そこには、青い甲冑に身を包み、剣を構えた男が立っていた。いかにも騎士、貴族という雰囲気だった。

「大変ですテオ様!」召使いらしい男が言った。
「バカめ、名前呼ぶな!」

「ほうほうコイツがテオか!」僕たちはテオに襲いかかった。

カチーン!
剣と剣との交わる音が響く。流石は騎士だけあって、簡単には倒せなかった。
「これじゃあ埒があかないな」

卑怯にも僕は炎魔法を使った。決闘に魔法を使うのは騎士道精神に反するかもしれないが、暗殺にルールなどない。
「インフェルノブレイズ」
僕が手をかざすと、火の玉が飛び出してテオの腹を直撃した。

テオは2、3歩よろめきながら後ずさりすると、仰向けに倒れ込んだ。
「よし!テオの首、このシャルル・ベルタンが頂戴した!」
大声で叫びながらテオの首を切り落とし、用意してきた袋に入れた。床にはテオの血が飛び散っている。

テントを飛び出した僕たちは、襲ってくる周りの敵兵たちを次々と倒しながら、敵陣の入口まで戻った。
「よし、このまま国境までダッシュだ!」
追っ手を炎魔法で追い払いながら、僕たちは夜の草原を必死に走った。
任務は完了した、後は生きて帰るだけだ。

宿営地に戻った僕たちは、兵士たちから拍手喝采で迎えられた。ベルタン軍の宿営地には、皇帝陛下御自らやって来ていた。
「シャルル、これは驚いたよ!まさかテオの暗殺を成功させるなんて!」
「皇帝陛下、ありがとうございます。テオの暗殺は困難な任務でしたが、テオの脅威を排除できたことを誇りに思います。これからも帝国と陛下のために尽力致します。」

翌朝、スラーレン軍は改めて戦場へ向かうことになった。
テオの氷魔法の脅威が排除された今、僕たちの勝利は一気に容易となっただろう。だがこの戦いが運命の決戦であることに変わりはない。一瞬の油断が命取りとなる。

「ピーーーーッ!」
笛の音が戦場に響き、僕たちは攻撃を開始した。

続く
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