遥かなる物語

うなぎ太郎

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第4章

我が子の誕生、燃え上がる戦火

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スラーレン帝国と大ザラリア王国との間で勃発した戦争は、大陸全土を巻き込む規模のものとなり、かつて無いほどの激しさとなった。国境では両国の軍が互いに激しい戦闘を繰り広げ、前線は絶えず変化していった。前線での戦闘は熾烈を極め、多くの兵士が命を落とした。

次第にボルフォーヌにもその影響は及んでいった。物資の不足が生活に影を落とし、領民の不安も深刻化していった。僕自身バーに出向き、町の人々を鼓舞することもあった。

マリーの体調も変化していった。出産が近づくにつれて、彼女の体は疲弊し、医師たちは注意深く彼女を診察していた。戦争と家族の両立に奮闘しながらも、彼女の健康を最優先に考えることが僕にとっての最重要事項だ。

ある晩、マリーの容態が急変した。彼女の呼吸は浅く、苦しそうな表情を浮かべていた。僕はすぐに医師や助産師たちを呼び寄せ、踏ん張る彼女に励ましの言葉をかけた。「マリー、もう少しだ。君は強い。僕たちがここにいるから、安心して。」

医師や助産師たちもマリーの出産をサポートしながら、彼女を励ましていた。「奥様、もう少しです。赤ちゃんは後少しで産まれます。落ち着いて頑張ってください。」

マリーは辛そうにうなずきながらも、必死に息を整えた。僕は彼女の手を強く握りしめ、心からの励ましを送る。「マリー、君ならできる。君がどれだけ強いか、僕は知っているから。最後まで頑張ろう。」
「奥様、もうすぐです。あと少しの辛抱ですから、もう一頑張りです!」助産師の声も響く中、マリーはその指示に従い、最後の力を振り絞った。

ついに赤ん坊の泣き声が部屋に響き渡った。僕の心臓が高鳴り、涙が自然と溢れた。医師が赤ん坊を暖かい毛布に包んでマリーの腕に渡す。マリーの顔に安堵の表情が広がり、喜びと安堵の涙を流した。

「おめでとう、マリー。」僕は彼女に微笑みかけ、涙を拭いた。「元気な男の子が生まれたよ。君は本当に頑張った。」
マリーは疲れ果てた体を抱えながらも、赤ん坊を優しく見つめ、その小さな手を触れた。「ありがとう、私たちの子よ。ありがとう、シャルル。」

医師や助産師たちも喜びの表情を浮かべ、僕たちを祝福してくれた。彼らはマリーと赤ん坊の健康状態を確認した後、部屋を静かに後にした。

「マリー、この子に何と名付けようか?」僕が言った。
しばらく静かに考え込んでから、ゆっくりと口を開いた。「この子には…アルベールと名付けたいわ。アルベールとは『高貴な光』と言う意味よ。」

僕はその名前を聞いて、深くうなずいた。「アルベール…いい名前だね。この子が、僕たちの光となってくれることを願おう。」

アルベールは安心した様子で眠り、マリーはその小さな息を感じながら、安らかな表情を浮かべていた。僕もまた、家族の新たな始まりを感じながら、その小さな命を見守り続けた。

数週間後には町の教会でアルベールの洗礼が行われた。我が子が無事に誕生し、洗礼を受けられたことは、僕たちにとってこの上ない喜びだった。
戦争が続く中、我が子の笑顔は僕たちにとって新たな希望と光をもたらしてくれるものだった。

アルベールが生まれてからの生活は非常に平和だった。しかし戦争の影が増していることは僕も理解していた。アルベールの誕生によって家庭には新たな喜びと安らぎがもたらされたものの、戦争の影響は依然として強い。

それでも、アルベールの笑顔を見ていると、一瞬でも戦争の厳しい現実を忘れることができた。彼の小さな手を握るとき、その無垢な存在がどれほどの力を持っているのかを感じることができた。

アルベールの誕生から1ヶ月余りが経った7月のある日、ついにベルタン軍に出撃命令が下った。
帝都の皇帝陛下から書簡が届き、僕たちは遠く離れた国境へ派遣されることになった。

出発当日、町の広場は空が曇り、重苦しい雲が立ち込めていた。アルベールが誕生してからの短い間に感じた平穏は、またもや戦争の影に遮られることとなった。

マリーやアルベール、母上、ルネ、イザークたち家族は、僕の出発を見守っていた。
僕は彼女に安心させるため、手を優しく握りしめながら言った。「マリー、心配しないで。すぐに戻るよ。アルベールのためにも、しっかりと帰るつもりだ。」
アルベールを抱いたマリーは小さくうなずき、涙をこらえながらも微笑んだ。「気を付けて、シャルル。私たちのためにも、安全で帰ってきてね。」

ベルタン軍の兵士たちが整列し、いよいよ出発の時が来た。
僕も甲冑を着て馬に跨り、ラファエルやロジェ、ジョゼフやクロードを連れて広場を出発した。
今回向かう戦場は北半球、遥か遠く離れた国境だった。

景色は高原地帯から田園地帯へと移り、やがて赤道直下の砂漠を横切る。街道を北へ向かい、旧合従諸国の領土へ入った。1週間かけて北方の国境に到達した。

国境には、僕と共に戦うことになったローラン侯爵の陣地が設営されていた。
僕たちも宿営地を設営し、ローラン侯爵のテントへ挨拶に行った。テントの内部は簡素ながらも整えられたもので、戦略図や地図が広げられており、そこには現在の前線の状況や部隊の配置が詳細に描かれていた。

「お迎えありがとうございます、ローラン侯爵。」僕は敬意を表して挨拶をした。「これから共に戦うことになることを嬉しく思います。」

ローラン侯爵は穏やかな笑みを浮かべ、「こちらこそ、ベルタン侯爵。あなたのような実力者が加わってくれるのは心強い限りです。どうかお互いに協力し、戦局を有利に進めていきましょう。」と答えた。

ローラン侯爵と共に、今後の作戦について詳細に考えた。
「現状、敵は北からの侵攻に力を入れている。」ローラン侯爵が指摘した。「我々がまず取るべきは、北方の補給線を断つことでしょう。これによって敵の進軍を遅らせることができるはずです。」

「その通りだ。」僕も同意し、「敵の補給線を断つことで、彼らの補給不足を引き起こし、戦力の減少を狙うという戦略ですね。しかし、そのためにはかなりの数の兵力と周到な計画が必要です。」

「補給線の最も脆弱な地点を狙う必要があります。」ローラン侯爵が指摘した。彼は地図のある地点を指差し、「国境から8.4セルタのここの平坦な場所を攻撃すれば、敵の進軍が一時的にでも止まるでしょう。」

「その通りです。」僕も同意し、「その上で、補給が絶たれた敵陣に攻撃を仕掛けます。敵の数は我々より少ないですが、それほど差は無いため包囲は難しいでしょう。しかし、敵軍は傭兵中心であり、訓練された騎士軍や騎馬部隊を突撃させれば十分な戦果を上げる事が出来ると思われます。」

ローラン侯爵は頷き、「ベルタン侯爵は騎士軍の訓練は行っていますね?」と尋ねた。
「はい、その通りです。」僕は頷いた。「我がベルタン軍の騎士軍は、クロードの指導の下高度な訓練を受けており、迅速かつ効果的な突撃が可能です。」
ローラン侯爵は満足そうにうなずき、「それでは、敵補給線を断ち、敵陣を奇襲する作戦を実行に移しましょう。」と述べた。

会議の後、僕たちは速やかに作戦の準備に取り掛かった。部隊に対して具体的な指示を出し、騎士軍と騎馬部隊の配置を整え、また補給線を断つための詳細な計画を策定した。

数日後、僕たちは作戦に動き出した。作戦決行は夕方だった。敵の補給が行われるのは朝夕だと、偵察によって判明していたからだ。
全軍が補給道を見下ろす崖に上がり、僕は先鋒の精鋭を率いて補給道脇の草原に身を潜めた。

僕たちは静かに待機し、暗くなるにつれて緊張が高まっていった。夕暮れが近づくにつれて、敵の輸送隊が姿を現した。僕たちは細心の注意を払い、食糧や物資を積んだ荷馬車をいつでも襲撃できるよう準備を整えていた。

「準備は整ったか?」僕は小声でラファエルに確認した。
「はい、全員が配置についています。」ラファエルは静かに応えた。

輸送隊が完全に僕たちの近くに達した瞬間、僕は合図を出した。「今だ!」
精鋭部隊が一斉に草原から飛び出し、輸送隊を襲撃した。敵は驚き、混乱の中で防御態勢を整える暇もなく、僕たちの精鋭部隊に襲われた。戦闘が始まり、僕たちは補給物資を次々と押さえた。

「敵の物資を奪え!逃すな!」僕は叫び、部隊を指揮していた。輸送隊の兵士たちは混乱し、防戦に追われていた。敵の抵抗が次第に弱まり、補給道の一部は完全に制圧された。僕たちは攻撃を続け、輸送隊の物資を奪い尽くした。

「よくやった、皆!」僕は部隊をねぎらいながら声をかけた。「これで敵の補給線は大きく断たれた。シコタマ物資を奪ったぞ、今夜は食い放題だ!」
ローラン侯爵も現場に駆けつけて、戦果を確認しながら微笑んでいた。「ベルタン侯爵、素晴らしい成果です。これで我々の優位が確立されるでしょう。今後の戦局に大いに期待できます。」

翌日から、敵の補給が絶たれた影響で、敵陣の動きが鈍くなっていった。1週間経つと敵陣地内の兵士たちは疲弊し、被服不足のため襤褸を纏い、水や食糧もほとんど底を突いた。彼らの士気も低下し、敵軍の前線維持能力が著しく低下した。

「敵の状況を考慮すると、今が攻撃を仕掛ける絶好の機会です。」ローラン侯爵が言った。「前線を突破し、敵陣地を制圧する事で、戦局を一気に有利に進めることができるでしょう。」

僕は答えた。「了解した。作戦決行は明後日にしましょう。」

続く
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