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反乱の序曲
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シャルル・ベルタン。その名は、決して完璧な響きを持ち合わせていなかったが、ベルタン家の人々にとっては、決して忘れられるものではなかった。
彼の死からちょうど1年が経過した。ベルタン家は当主である22歳のアルベール、21歳の妻イヴォンヌ、40歳の母マリー、3歳の息子アントワーヌ、叔父である32歳のイザーク、その妻の29歳のソフィーで構成されている。他に、シャルルの幼少期から仕えている使用人のジャン、シェフのギョームがいる。
アルベールは一領主に甘んじたいとは思っていなかった。大それた野望、ベルナール王朝の滅亡と新帝国の建国を密かに計画していたのである。
彼は、完全なる現国家の転覆を望んでいた。3000年前に、ここボルフォーヌの地に王国を建国したド=ルー王の正統な直系子孫は、ド=ルーの長男・エドゥアール王子の子孫であるルロワ家のはずで、当初は王室だったが、2700年前に、三男・マルク王子の子孫であるベルナール家、つまり現帝室に簒奪されたのだ。
5年前に謀反の疑いでルロワ家は粛清され、親類縁者に至るまで処刑され、絶えた。従って、次男・アラン王子の子孫であるベルタン家が正統だというのである。
ある初夏の日、ついにアルベールは反乱の計画書を完成させた。彼は家族と数人の家臣を屋敷の大広間に集め、計画の全貌を語った。
「帝国の貴族の最大の重臣であったルロワ家の粛清により、貴族たちの間には皇帝ルイに対する不信が生じている。これを利用し、さらにルイを貶めるような噂を広め、さらに血統に対する疑念も撒き散らす。これにより、他の貴族たちの協力を得ることができる。
次に、父上の時代に滅ぼされた国々の、王族や貴族たちを仲間に引き入れる。大陸は統一され、全て帝国の領域となったが、まだ支配は安定していない。かつての王族や貴族たちは復讐の機会を窺っており、領民からも未だに支持と尊敬を受けている。彼らにかつての領地を返し、優遇すると約束して味方に引き入れれば、その領民も喜んで従うだろう。
さらに、父上の代から縁のあるトマ家は、貴族商人として成功を収めており、帝室に次ぐ経済力を誇っている。
トマ家の当主、フィリップ殿の協力が得られれば、軍資金や武器、物資を大量に手に入れることができる。
こうして準備が整った段階でボルフォーヌは帝国からの離反を宣言し、同時に帝都エラルトでクーデターを起こし、王城を制圧する。各地の協力者たちにも蜂起させ、大陸全土を手中に収める」
この計画の壮大さに、周囲の家族と家臣たちは息を呑み、一瞬、静寂が大広間を包み込んだ。
だが、すぐに家臣のオリヴィエが同意する。「私はアルベール様に従います。本来、帝冠はあなた様の頭上にあるはずです。正当な自分のものを手に入れて、何も悪いことはありません」
「私もあなたを信じますわ、アルベール様」イヴォンヌが言った。
「必ずこの計画はうまくいきます。あなた様が皇帝として、全世界の支配者となられる日を心待ちにしております」
「そうだ、イヴォンヌ」アルベールは頷き、それからゆっくりと微笑んだ。
「5年前のルロワ家粛清の際、ルロワ家の謀反に手を貸したとされた他の貴族も多く粛清された。私たちも危うくギロチンにかけられるところだった。しかし私が皇帝となれば、もう私たちの幸せを奪おうとは出来ない。お前は皇后として、私と共にこの世の全てを所有できる」
「宮廷での工作、旧諸国での工作、トマ家との交渉を含め、準備期間は1年を要する。来年の今日、反乱を決行する」アルベールは胸を張り、Dデイの日付を言った。
続く
彼の死からちょうど1年が経過した。ベルタン家は当主である22歳のアルベール、21歳の妻イヴォンヌ、40歳の母マリー、3歳の息子アントワーヌ、叔父である32歳のイザーク、その妻の29歳のソフィーで構成されている。他に、シャルルの幼少期から仕えている使用人のジャン、シェフのギョームがいる。
アルベールは一領主に甘んじたいとは思っていなかった。大それた野望、ベルナール王朝の滅亡と新帝国の建国を密かに計画していたのである。
彼は、完全なる現国家の転覆を望んでいた。3000年前に、ここボルフォーヌの地に王国を建国したド=ルー王の正統な直系子孫は、ド=ルーの長男・エドゥアール王子の子孫であるルロワ家のはずで、当初は王室だったが、2700年前に、三男・マルク王子の子孫であるベルナール家、つまり現帝室に簒奪されたのだ。
5年前に謀反の疑いでルロワ家は粛清され、親類縁者に至るまで処刑され、絶えた。従って、次男・アラン王子の子孫であるベルタン家が正統だというのである。
ある初夏の日、ついにアルベールは反乱の計画書を完成させた。彼は家族と数人の家臣を屋敷の大広間に集め、計画の全貌を語った。
「帝国の貴族の最大の重臣であったルロワ家の粛清により、貴族たちの間には皇帝ルイに対する不信が生じている。これを利用し、さらにルイを貶めるような噂を広め、さらに血統に対する疑念も撒き散らす。これにより、他の貴族たちの協力を得ることができる。
次に、父上の時代に滅ぼされた国々の、王族や貴族たちを仲間に引き入れる。大陸は統一され、全て帝国の領域となったが、まだ支配は安定していない。かつての王族や貴族たちは復讐の機会を窺っており、領民からも未だに支持と尊敬を受けている。彼らにかつての領地を返し、優遇すると約束して味方に引き入れれば、その領民も喜んで従うだろう。
さらに、父上の代から縁のあるトマ家は、貴族商人として成功を収めており、帝室に次ぐ経済力を誇っている。
トマ家の当主、フィリップ殿の協力が得られれば、軍資金や武器、物資を大量に手に入れることができる。
こうして準備が整った段階でボルフォーヌは帝国からの離反を宣言し、同時に帝都エラルトでクーデターを起こし、王城を制圧する。各地の協力者たちにも蜂起させ、大陸全土を手中に収める」
この計画の壮大さに、周囲の家族と家臣たちは息を呑み、一瞬、静寂が大広間を包み込んだ。
だが、すぐに家臣のオリヴィエが同意する。「私はアルベール様に従います。本来、帝冠はあなた様の頭上にあるはずです。正当な自分のものを手に入れて、何も悪いことはありません」
「私もあなたを信じますわ、アルベール様」イヴォンヌが言った。
「必ずこの計画はうまくいきます。あなた様が皇帝として、全世界の支配者となられる日を心待ちにしております」
「そうだ、イヴォンヌ」アルベールは頷き、それからゆっくりと微笑んだ。
「5年前のルロワ家粛清の際、ルロワ家の謀反に手を貸したとされた他の貴族も多く粛清された。私たちも危うくギロチンにかけられるところだった。しかし私が皇帝となれば、もう私たちの幸せを奪おうとは出来ない。お前は皇后として、私と共にこの世の全てを所有できる」
「宮廷での工作、旧諸国での工作、トマ家との交渉を含め、準備期間は1年を要する。来年の今日、反乱を決行する」アルベールは胸を張り、Dデイの日付を言った。
続く
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