遥かなる物語2

うなぎ太郎

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終わりの始まり

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ボルフォーヌの領民たちの視線が、壇上に立ったアルベール・ベルタンに集まっている。
町の広場の中央にアルベールが立ち、その周囲をベルタン軍の兵士たちが幾重にも護衛し、その外側を領民たちが取り巻いていた。彼の家族も群衆の中で、若き英雄の誕生を見守る。

アルベールが演説を始めた。「我がボルフォーヌは、3000年前のボルフォーヌ王国建国の際、都とされ、国家の中心とされた。その長男であるエドゥアール王子の家系は途絶え、次男であるアラン王子の子孫、すなわち我らが支配者たり得るはずである」

「しかしながら、私は玉座を温めていない。それは、ルイ・ド・ベルナールが皇帝を称し、帝国を支配しているからだ。彼らはルロワ家から不当に帝位を簒奪したにも関わらず、おこがましくもそのルロワ家の君主たり続け、ついには自分たちの保身のため無実の罪を着せて滅ぼした。

奴は正当な報いを受ける。もはやスラーレン皇帝の地位に大義はない。我こそが、正当なる皇帝である!私はもうボルフォーヌ領主セニョールではない。ボルフォーヌ国王ロイである。今、卑劣漢ルイの軛から、自由となり、さらには彼に相応しい報いを与え、正当な地位を得ることを宣言する」

歓声と拍手が渦となって爆発した。
「「「我が国王陛下万歳!アルベール国王陛下万歳!」」」

「大陸を手に入れた時、私は皇帝に即位する。スラーレンという国号はベルタニアベルタン家の国と改められ、ここボルフォーヌを帝都とするであろう!」
いまやアルベールが、その場にいる全ての人々にとって無条件に正義であり、ルイ皇帝は悪人ではないにも関わらず、天敵に仕立て上げられた。

アルベールの離反宣言とほぼ同時に、帝都スラーレンではクーデターが発生した。
アルベールの広めた噂と、血統に関する情報で皇帝への不信に駆られ、密かに内応した貴族たちが、ついに決起したのである。

貴族たちに率いられた、各家の軍と騎士たちが、王城に怒涛の如く押しかける。
次々と王城内に侵入する反乱軍を防ごうと、守衛や国軍の兵士たちは死に物狂いで闘うが、圧倒的な数的パワーの前に後退を余儀なくされた。

「陛下!どうかお逃げ下さい!このままでは!」侍従が必死にルイ皇帝に呼びかける。
「…もはや手遅れだ。ベルナール王朝は滅びる。私が最後の皇帝だ。卑怯な真似をしても死ぬだけだ。朕は潔くここで死ぬ。行きたい者は逃げて構わないから」ルイは決然として言い放ち、剣を抜くと、首の血管を切って命尽きた。

午後3時頃には王城は制圧された。スラーレン国旗は下ろされ、ベルタン家の軍旗が掲げられたのだった。他の皇族も全員自害し、これにより、スラーレン帝国は滅亡した。

一方、クーデターの発生から数時間しか経っておらず、地方の都市や農村、城にはまだ報せが伝わっていなかった。

ここは旧大ザラリア王国の城、グローサーフェルゼン城である。城主であるマテューは優雅にコーヒーを飲んでいたが、侍従が狂ったようにドアを乱暴に開けて入ってくると、思わず顔色を変えた。

「た…大変です、領主様…ランゲ公爵が反乱を起こしました!」
「…何!?ザラリア時代の、ここの元領主が!?」
「は、はい!農民たちも皆ランゲ公爵に従い、鋤や鍬、松明を持って襲ってきます!」

次の瞬間、数人の農民たちが部屋に踊り込んできた。
彼らの先頭に立っていた、騎士らしき格好の男が剣でマテューに切りかかる。

「やめぬか!」マテューは床に尻餅を突き、必死に剣を抜いて抵抗する。
侍従も主君の盾となってマテューを守ろうとするが、農民の一人に鋤で突き刺され、悲鳴を上げながら床に倒れる。

「さらば、卑劣な侵略者よ!」
騎士は瀕死のマテューに近づき、首を切り落とした。

こうして、帝都、地方都市、農村、漁村、山村、城塞など、大陸のほとんどの場所は、アルベールの手に握られた。
一部の地域では反乱が失敗し、現地領主や国軍に鎮圧されるも、周辺の領地はほとんど反乱軍に占領されており、孤立無援となり、数日後には陥落する運命にあった。

まもなく大陸全土が衣替えをし、世界の主はルイ・ド・ベルナールからアルベール・ベルタンとなった。クーデター発生からわずか6日後のことであった。

続く
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