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第4話 トラブル発生
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さて……女性の肉体になったということは、身体の使い方が普段とは根本的に異なるということだ。
早朝、ベッドから降りて自らの肉体を観察する。
筋肉量や体格はそれなりに変わっているが、身長は10~15センチ程度縮んだくらいか。乳房がそれなりにかさばっているのが邪魔だが、衣服を工夫すればどうにかなる範囲だろう。
問題は、この世界に「魔術」というものが存在する……ということだ。身体的な能力に懸念があれど、魔術を使いこなせればボディーガードとしては充分な役目を果たせるだろう。
……しかし、残念ながら、私に魔術の知識はない。
次に、身体の動きを確認する。
絨毯の上で逆立ちをし、そのまま後方に宙返りを行う。こちらの方は、以前の肉体よりも軽々と行うことができた。身軽さだけでなく、柔軟さもこちらの肉体の方が明らかに上回っている。
しかし、乳房の揺れが邪魔だ。さらしか何かを巻く必要はあるだろう。
付け焼き刃にはなってしまうが、早急に魔術の知識を身につけ、筋力の及ばない部分を敏捷性で補うか……。
あれこれと考えていると、ノックの音が響く。
「誰だ」
声をかけると、「オレだよ、オレ様! レオポルド!」と陽気な声がする。
レオポルド・ビアッツィ。確か、ドン・ビアッツィの甥……だったか?
甥とはいえ歳の離れた兄の息子であるため、ドン・ビアッツィとそこまで年齢は変わらなかったと記憶している。……かつての世界では、の話だが。
わずかにドアを開けると、派手なピンク色に染められた髪と、軽薄そうな表情が目に入る。……髪を蛍光色に染める趣味は、こちらの世界でも変わっていないらしい。
「ちょっとちょっと~薄着は良くねぇぜブラウちゃん。ここにゃ、悪ぃオジサマが闊歩してんだから」
へらへらと笑いつつ、レオポルドは軽口を叩く。
ドン・ビアッツィも口は達者だが、ああ見えて身持ちは固い。……対して、この男はやたらと女癖が悪かったように記憶している。
「なーんか、気になっちまってよ。ナンパしに来ちゃった」
語尾にハートでもつきそうな口調で、レオポルドはヘラヘラと笑う。
ぞわりと鳥肌が立つ。……口説かれたことに対してではない。
その目が、一切笑っていなかったからだ。
「お前さん、どこの誰?」
軽薄な口調を崩さないまま、レオポルドは数段低い声で語りかける。
……ああ、そうだった。
この男は、誰よりも勘が鋭い……!
「……私は、ブラウです」
「ふーん? ……で、パトリツィオ坊ちゃんのボディーガード?」
「……そ、れは……」
パトリツィオ。それが、この世界の坊っちゃまの名前だろう。……だが、私が仕えていたのはパトリツィオ・ビアッツィという名の主ではない。
私が仕えていたのは、パトリツィアお嬢様だ。
「あ、別に無理やり聞き出そうとか思ってねぇから、安心してくんね?」
レオポルドはにこりと笑い、ドアの隙間から手を差し出す。
刹那。嫌な予感が悪寒となって背筋を走り抜ける。背後に飛び退けば、部屋の入口でばちりと火花が散った。……危なかった。少しでも遅れていれば、動けなくなっていただろう。
「自分から話したくなるよう、たーっぷり可愛がってやっからよ……!」
ニィ、と心底楽しそうに笑いながら、レオポルドは部屋のドアを蹴破った。
それは、「無理やり聞き出す」に含まれるのではないだろうか……?
早朝、ベッドから降りて自らの肉体を観察する。
筋肉量や体格はそれなりに変わっているが、身長は10~15センチ程度縮んだくらいか。乳房がそれなりにかさばっているのが邪魔だが、衣服を工夫すればどうにかなる範囲だろう。
問題は、この世界に「魔術」というものが存在する……ということだ。身体的な能力に懸念があれど、魔術を使いこなせればボディーガードとしては充分な役目を果たせるだろう。
……しかし、残念ながら、私に魔術の知識はない。
次に、身体の動きを確認する。
絨毯の上で逆立ちをし、そのまま後方に宙返りを行う。こちらの方は、以前の肉体よりも軽々と行うことができた。身軽さだけでなく、柔軟さもこちらの肉体の方が明らかに上回っている。
しかし、乳房の揺れが邪魔だ。さらしか何かを巻く必要はあるだろう。
付け焼き刃にはなってしまうが、早急に魔術の知識を身につけ、筋力の及ばない部分を敏捷性で補うか……。
あれこれと考えていると、ノックの音が響く。
「誰だ」
声をかけると、「オレだよ、オレ様! レオポルド!」と陽気な声がする。
レオポルド・ビアッツィ。確か、ドン・ビアッツィの甥……だったか?
甥とはいえ歳の離れた兄の息子であるため、ドン・ビアッツィとそこまで年齢は変わらなかったと記憶している。……かつての世界では、の話だが。
わずかにドアを開けると、派手なピンク色に染められた髪と、軽薄そうな表情が目に入る。……髪を蛍光色に染める趣味は、こちらの世界でも変わっていないらしい。
「ちょっとちょっと~薄着は良くねぇぜブラウちゃん。ここにゃ、悪ぃオジサマが闊歩してんだから」
へらへらと笑いつつ、レオポルドは軽口を叩く。
ドン・ビアッツィも口は達者だが、ああ見えて身持ちは固い。……対して、この男はやたらと女癖が悪かったように記憶している。
「なーんか、気になっちまってよ。ナンパしに来ちゃった」
語尾にハートでもつきそうな口調で、レオポルドはヘラヘラと笑う。
ぞわりと鳥肌が立つ。……口説かれたことに対してではない。
その目が、一切笑っていなかったからだ。
「お前さん、どこの誰?」
軽薄な口調を崩さないまま、レオポルドは数段低い声で語りかける。
……ああ、そうだった。
この男は、誰よりも勘が鋭い……!
「……私は、ブラウです」
「ふーん? ……で、パトリツィオ坊ちゃんのボディーガード?」
「……そ、れは……」
パトリツィオ。それが、この世界の坊っちゃまの名前だろう。……だが、私が仕えていたのはパトリツィオ・ビアッツィという名の主ではない。
私が仕えていたのは、パトリツィアお嬢様だ。
「あ、別に無理やり聞き出そうとか思ってねぇから、安心してくんね?」
レオポルドはにこりと笑い、ドアの隙間から手を差し出す。
刹那。嫌な予感が悪寒となって背筋を走り抜ける。背後に飛び退けば、部屋の入口でばちりと火花が散った。……危なかった。少しでも遅れていれば、動けなくなっていただろう。
「自分から話したくなるよう、たーっぷり可愛がってやっからよ……!」
ニィ、と心底楽しそうに笑いながら、レオポルドは部屋のドアを蹴破った。
それは、「無理やり聞き出す」に含まれるのではないだろうか……?
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