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第3章 Hatred at the Moment
28. side: Levi
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オリーヴ・サンダースの携帯電話に、ロデリック・アンダーソンからの着信があるのは理解できる。
……だが、画面に映し出されている名前はロナルド・アンダーソンだ。何度も確認したが、見間違いではない。
ローランド……いや、アンドレアか。彼……彼女だったか? ともかく、あの人が現実世界に帰っている以上、ロジャーの肉体(肉はほぼないが)は魂を持たない状態で「こちら」にあるだろう。……ならば、何らかの目的で一度ロジャーの肉体を離れ、戻ってきた、という可能性も考えられる。目的はまだ分からないが、用心するに越したことはない。
……と、通話を許可していないのにも関わらず、音声が流れ始めた。
『レヴィ、聞こえているかい? 実は、しくじってしまってね。うっかり取り込まれてしまったんだ』
……ん?
まさか、姿を消していたのは何かを企んでいたわけではなく、被害者となっていたからか……?
いや、まだ結論を急ぐのは早い。相手はあのロナルド・アンダーソンだ。あいつが平気で嘘をつき、平然と他人を騙す男だと忘れてはならない。
『身体の方は「骨だけだし要らない」とどこかに放置されたようだが、魂の方は見事に取り込まれてしまってね。なかなか身動きが取れなかった。
まったく、どいつもこいつもロジャーの肉体の扱いが雑すぎる。 確かに骨だけだし折れてもいるし、憂さ晴らしをするくらいにしか用途はないが、骨だけだからこそ馴染まなくても多少は扱えるんだ。まあ、抜け殻でも私が自由に動く邪魔をするのは、如何にも彼らしくて腹が立つけれどね』
ロジャーが好きなのか嫌いなのか、どっちなんだこいつは。
……まあ、それはいい。
先程ポール・トマの肉体を乗っ取った「何者か」は、悪を憎み、滅ぼさんとしているように見えた。
かつてのコルネリス・ディートリッヒに近いスタンスとも言えるだろうが、奴が混乱の原因であるとするなれば、ロナルド・アンダーソンに真っ先に攻撃を仕掛けるのは全くもって当然と言える。
姿を消した際、「また何か企んでいるのか」と考えたのは完全にこちらのミスだ。いや、どう考えてもこいつの普段の行いやねじ曲がった性格のせいにも思えるが、真相を探る必要がある以上、余計な偏見に目を曇らせるのはよろしくない。
ロナルド・アンダーソンにも非は当然ある。だが、俺のミスであることに変わりはない。それはそうとしてロナルド・アンダーソンが外道であることも事実だ。それでいい。
……と、それまで黙っていたポール・トマが口を開く。
「どうやって、オリーヴの番号を知ったんだい?」
その言葉を待っていた、とばかりに、オリーヴ・サンダースの携帯電話から黒い液体が溢れだす。
ぼたぼたと地面に落ちながら、粘ついた液体は人の姿を成していく。
「そこに、潜んでいたからだよ」
悪寒が走る。おそらくは、囚われた場所から抜け出す際に労力を使い、適当な場所に潜り込む必要があったのだろうが……。
なんだ、この感覚は。なにか、厭な予感が背筋を這い回っているような……?
「名前はポール……だったか。可愛い子だね。処女かな」
こいつ、いい加減ぶっ飛ばしても構わないだろうか。
確かに、厭な予感は当たっていたが……! 当たってはいたが……!!!
「君の中のほうが居心地が良さそうだ。人の形を保つのも大変でね……どうか、入れさせてもらっても構わないかな」
おい、なんだその言い方は。まったく厭らしい話ではないはずだが、厭らしいようにしか聞こえんぞ。
「……何の話だろう?」
「貴様の……その、なんだ。仮の肉体に間借りさせてもらってもいいか……という話なのだが、生理的に無理だろう。断れ」
「レヴィ、それを決めるのは君じゃないだろう? 相変わらず反抗的だね。そこが愛らしいのだけれど」
「死ね。……ああ、いや、口が悪くなったな。殺す」
「それ、悪化して……ッ!?」
ポール・トマが声にならない悲鳴を上げる。
辛うじて人型を保っていた泥状の思念体は、ポール・トマの胸元に空いた「穴」に触れ、融けるように形を失った。
ひび割れた表面をなぞるように蠢き、そのまま体内へと侵入していく。
「ひ……っ!?」
「ああ……その反応、悪くないね。ナカに挿れたのは初めてかい?」
綺麗に塞がれた「穴」から声が響く。
頼むから、もう黙っていて欲しいものだ。
「おい、せめて同意を取ってからにしろ」
「今にも消滅しそうなところだったんだ。仕方ないじゃないか」
「そうか。惜しかったな。そのまま消滅すれば良かったものを」
俺とロナルド・アンダーソンの会話を他所に、ポール・トマは目を白黒させて自分の胸元を確認していた。
「ええと……何を言ってるのか、ぼくにはよく分からなかったんだけど……傷、塞いでくれたのかい?」
黄緑色の瞳が、キラキラとこちらを見つめる。
……これは……どう、説明すればいい……?
……だが、画面に映し出されている名前はロナルド・アンダーソンだ。何度も確認したが、見間違いではない。
ローランド……いや、アンドレアか。彼……彼女だったか? ともかく、あの人が現実世界に帰っている以上、ロジャーの肉体(肉はほぼないが)は魂を持たない状態で「こちら」にあるだろう。……ならば、何らかの目的で一度ロジャーの肉体を離れ、戻ってきた、という可能性も考えられる。目的はまだ分からないが、用心するに越したことはない。
……と、通話を許可していないのにも関わらず、音声が流れ始めた。
『レヴィ、聞こえているかい? 実は、しくじってしまってね。うっかり取り込まれてしまったんだ』
……ん?
まさか、姿を消していたのは何かを企んでいたわけではなく、被害者となっていたからか……?
いや、まだ結論を急ぐのは早い。相手はあのロナルド・アンダーソンだ。あいつが平気で嘘をつき、平然と他人を騙す男だと忘れてはならない。
『身体の方は「骨だけだし要らない」とどこかに放置されたようだが、魂の方は見事に取り込まれてしまってね。なかなか身動きが取れなかった。
まったく、どいつもこいつもロジャーの肉体の扱いが雑すぎる。 確かに骨だけだし折れてもいるし、憂さ晴らしをするくらいにしか用途はないが、骨だけだからこそ馴染まなくても多少は扱えるんだ。まあ、抜け殻でも私が自由に動く邪魔をするのは、如何にも彼らしくて腹が立つけれどね』
ロジャーが好きなのか嫌いなのか、どっちなんだこいつは。
……まあ、それはいい。
先程ポール・トマの肉体を乗っ取った「何者か」は、悪を憎み、滅ぼさんとしているように見えた。
かつてのコルネリス・ディートリッヒに近いスタンスとも言えるだろうが、奴が混乱の原因であるとするなれば、ロナルド・アンダーソンに真っ先に攻撃を仕掛けるのは全くもって当然と言える。
姿を消した際、「また何か企んでいるのか」と考えたのは完全にこちらのミスだ。いや、どう考えてもこいつの普段の行いやねじ曲がった性格のせいにも思えるが、真相を探る必要がある以上、余計な偏見に目を曇らせるのはよろしくない。
ロナルド・アンダーソンにも非は当然ある。だが、俺のミスであることに変わりはない。それはそうとしてロナルド・アンダーソンが外道であることも事実だ。それでいい。
……と、それまで黙っていたポール・トマが口を開く。
「どうやって、オリーヴの番号を知ったんだい?」
その言葉を待っていた、とばかりに、オリーヴ・サンダースの携帯電話から黒い液体が溢れだす。
ぼたぼたと地面に落ちながら、粘ついた液体は人の姿を成していく。
「そこに、潜んでいたからだよ」
悪寒が走る。おそらくは、囚われた場所から抜け出す際に労力を使い、適当な場所に潜り込む必要があったのだろうが……。
なんだ、この感覚は。なにか、厭な予感が背筋を這い回っているような……?
「名前はポール……だったか。可愛い子だね。処女かな」
こいつ、いい加減ぶっ飛ばしても構わないだろうか。
確かに、厭な予感は当たっていたが……! 当たってはいたが……!!!
「君の中のほうが居心地が良さそうだ。人の形を保つのも大変でね……どうか、入れさせてもらっても構わないかな」
おい、なんだその言い方は。まったく厭らしい話ではないはずだが、厭らしいようにしか聞こえんぞ。
「……何の話だろう?」
「貴様の……その、なんだ。仮の肉体に間借りさせてもらってもいいか……という話なのだが、生理的に無理だろう。断れ」
「レヴィ、それを決めるのは君じゃないだろう? 相変わらず反抗的だね。そこが愛らしいのだけれど」
「死ね。……ああ、いや、口が悪くなったな。殺す」
「それ、悪化して……ッ!?」
ポール・トマが声にならない悲鳴を上げる。
辛うじて人型を保っていた泥状の思念体は、ポール・トマの胸元に空いた「穴」に触れ、融けるように形を失った。
ひび割れた表面をなぞるように蠢き、そのまま体内へと侵入していく。
「ひ……っ!?」
「ああ……その反応、悪くないね。ナカに挿れたのは初めてかい?」
綺麗に塞がれた「穴」から声が響く。
頼むから、もう黙っていて欲しいものだ。
「おい、せめて同意を取ってからにしろ」
「今にも消滅しそうなところだったんだ。仕方ないじゃないか」
「そうか。惜しかったな。そのまま消滅すれば良かったものを」
俺とロナルド・アンダーソンの会話を他所に、ポール・トマは目を白黒させて自分の胸元を確認していた。
「ええと……何を言ってるのか、ぼくにはよく分からなかったんだけど……傷、塞いでくれたのかい?」
黄緑色の瞳が、キラキラとこちらを見つめる。
……これは……どう、説明すればいい……?
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