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第3章 Hatred at the Moment
29. 希望
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しばらく時間が経ったけど、 レニーはキースとずっと話し込んでいて、マノンは不機嫌そうに押し黙ったまま考えごと中。
すごく、気まずい。
「ヴァンサン……まだ気絶してるのかな」
私がぽつりと呟くと、レニーが反応を返してくれる。
「レオがなんも言ってこねぇってことは、そうだろうな」
「……起こしに行ってきていい?」
私の問いに、レニーは少し考える素振りを見せた。
「下手に首を突っ込めば、共倒れになるぜ。……アイツは、そういう地獄にいる」
真剣な表情で、レニーは忠告する。
「もし本気で救いたいんなら、一緒に地獄に堕ちる覚悟を決めな」
「……ポールも、それで……殺されちゃったのかな」
「有り得るな。下手に手を差し伸べて、逆に恨まれるってぇのはよくある話だ」
ずきんと胸が痛む。そんなすれ違い、あまりにも悲しい。
「おーい」
と、ドアの方から明るい声がする。
「起きたぜ!!」
レオナルドが、ヴァンサンを担いで立っていた。
***
マノンはキースに話があるらしく、二人で別室に向かった。……外に出たいって言ってたし、交渉してるのかな?
ヴァンサンはまだ頭がぼんやりしているのか、こめかみを抑えて瞬きを繰り返している。
サングラスの奥を始めて見たけど、瞳の色はポールと全く同じライムグリーンで、ポールと同じく右目の下に泣きぼくろがあった。やっぱり兄弟だなぁ……
「……何でしょうか」
私の視線に気付き、ヴァンサンは再びサングラスをかけ直して隅の方へ移動する。……物理的な距離も置かれているし、心理的な距離も感じる。
「つかよ。おめー、チンコある?」
……と、レオナルドがとんでもない話題をぶち込んでくる。いきなり何……?
「さっき担いだ時、なんつーのか……違和感? 的なのがすごくてよ」
「……ありませんよ。それが何だと言うのですか……」
「なんで?」
「そこ聞いちゃう!?」
思わず口を挟んでしまった。
それだいぶデリケートなことだと思うし、そんなにずけずけ聞いて大丈夫……!?
「……今となっては、覚えていません。母は私の肉体を汚らわしいと言いましたから……つまり、そういうことでしょう……」
けれど、懸念に反して、ヴァンサンは普通に語る。
……そっか、母親はポールの肉体を完璧だって言ってたらしいし、日常的に虐待があったなら去勢されてたっておかしくは……ない、んだ。
ポールとヴァンサンの過酷な生い立ちを、また思い知らされる。……更に、距離が離れていくようにも感じた。
「……そりゃ、兄貴……姉貴? を恨むのも仕方ねぇか。つったって、逆恨みは逆恨みだが……」
レニーの見解にも、納得できてしまう。
ポールは悪くない。……それでも、比較されたことで弊害を受けたなら、恨んでしまっても仕方がない。
ロデリックも、お兄さんやお姉さんと比較されて育って、あまり兄弟仲が良くないんだと聞いたことがある。私は一人っ子だから全然分からないけど、それが辛いことだというのは想像できた。
「……母親の方をどうにかしようとは、思わなかったの?」
だけど……逆恨みであることには間違いない。
恨むべきは、……危害を加えるべきは、ポールじゃなかったはずだ。
私の問いに、ヴァンサンは無理やり口角を持ち上げ、笑顔を作った。
ああ、やっぱり、こういうところはポールと似ている。
「私が強ければ、それを選択できたのでしょうね」
その言葉に、また胸が痛くなる。
本当に……どうして、こうなっちゃったんだろう。
憎い気持ちはある。でも、それ以上に……悔しい。
過去が変えられない以上、ポールの死は覆せない。それでも、せめてヴァンサンが罪を悔い、ポールの想いを受け取ってくれれば……なんて、思ってしまう。
「一緒に、ポールに会いに行こう。ちゃんと話し合ったら、何か変わるよ」
「……」
ヴァンサンは黙り込んだまま、なかなか返事をしない。
やがて、彼は絞り出すように呟いた。
「……やはり、何も分かっていませんね。貴女は……彼女の表面しか、知らないのでしょう」
震える声で、ヴァンサンは私の提案を拒絶する。
「純粋で、穏やかで、明るくて、美しい……人間は、それだけの存在だと思いますか?」
「思わないよ」
ポールは確かに、負の感情を表に出さない人だった。
ううん。出すのが、下手な人だった。
たくさん傷を抱えて、たくさん苦しんで、それでも上手く発露できない……それが、ポールだった。
「あなたはポールを殺した。……そして、罰も受けてない。向き合う必要ぐらいはあるんじゃないの?」
「……それ、は……」
ヴァンサンはハッと息を飲み、がくりと項垂れる。
「それは……その……通り、かも……しれません……」
レニーの方もちらりと見る。キースが会わせられないと言っていた以上、許可は必要だろう。
レニーはやれやれと首を振りつつ、「準備ができりゃ、こっちでお膳立てするつもりだったんだがな」と笑った。
「手間が省けて助かった。レヴィに連絡して、どっかしらで合流と行くかね」
ヴァンサンはまだ死んでいないし、兄弟が話し合うことで、何か進展があるかもしれない。
未来に続く道を、作っていけるかもしれない。
そうすれば……私も、ようやく前を向けるのかも。
「そういや兄弟、ノエルはどうした?」
「どっか行った」
「……おいおい。それ、大丈夫かよ」
レニーとレオナルドは、何やら不穏な会話中。
とりあえず、準備ができるまで待機しておこうかな。
「エレーヌは、本当に満足したのかしら」
……と、どこかしらから声が聞こえる。
彫像の方を見ると、ほとんど消えかけの姿で佇む青年の姿が見えた。ノエル……かな?
「……カミーユが永遠に自分の影に囚われて苦しむからこそ……だった……? ……ああ、もう、他人の感情なんてわかんないわよ……」
どうやら、独り言を呟いているみたい。
たぶん、一人になりたいんだと思うし、そっとしておこう。っていうより、邪魔する勇気がない。殺人鬼だったらしいし……
「あの……」
その時、ヴァンサンに声をかけられた。
「兄は、私の話を……よく、したのですか」
私が振り返ると、ヴァンサンはうつむき加減に問うてくる。
「うん。写真も見せてもらったよ」
「写真……」
「当時からパンクなファッションだったよね。『弟はこういうのにハマってるんだ』って、教えてもらったよ」
「……一緒に、写っていましたか」
「え? ううん、ヴァンサン一人だったと思う」
「……でしょうね……。二人で……撮ったことが、なかったんです。だから、でしょうか……その……実感が、あまり……」
ヴァンサンは言葉に迷いつつ、途切れ途切れに語る。
「プレゼントとか、貰ったことない?」
「何度も……あったはずです。確か、このピアスも……姉からもらったもので……」
恐る恐る、ためらいがちに言葉を連ねているようにも見えた。
「本当は……分からないのです。なぜ、あんなにも、憎み、嫌い、消したいとまで思ったのか……。その……分からないのに……今でも、嫌いで、憎くて仕方がないのです……」
「……好きとか嫌いとか、下手に理由をつけると拗れるよ。今も、ポールやあなたの人格を歪めて捉えてるでしょ」
感情には理由があるけど、それは知覚できる範囲だとは限らない。
理由を探して根本から解決するのも時には大事だけど、主観で目測を誤ってしまった場合、修正するのが難しくなる。……目に見える形がないからね。
「……も、申し訳ありません……」
「謝るなら、私じゃなくポールにね」
「はい……」
あー、もう。ほっとけないなぁ。
……まあ、ポールの弟なら、私の弟みたいなものだしね。将来的には結婚も考えてたし。
そういや、顔立ちから年齢が読みにくいんだけど……彼、いくつなんだろう。老けても見えるし幼くも見えるような……。
「あなたは……その……兄以外を愛したことは……?」
「愛そうとしたことならあるよ。他の人と付き合ったこともあるし。……だけど、無理だった」
「ええと……姉は、そんなに……魅力的ですか……?」
「私にとってはね」
ヴァンサンは納得できなさそうに、「はぁ……」と呟いた。
──私ね、記者になりたいんだ!
夢を語り合った記憶が、また、蘇る。
──そうかい。それは、どうして?
──お父さんが海外で働いてて、アメリカとか中国の新聞をよく買ってきてくれるの! それを見てたらすごく面白くて……私も色んなことを、たくさんの人に伝えたいなって思ったんだ
──良い夢だね。ぼくも応援するよ。きみなら、きっと素敵な記者になれる
──ほんとに!? ありがとう!
彼はいつだって優しく、私の気持ちを包み込んでくれる人だった。
……偽りなんかじゃない。本心で応援してくれていたから、私の復讐に対して「ぼくのせいだ」って涙を流したんだ。きっと、そうだ。
私は信じるよ。……そう、約束したもの。
──信じないでくれ
それなのに、どうして……
どうして、ポール本人まで、そんなことを言うの?
「なんか、私もムカついてきた」
「……は、はい?」
「帰ったら付き合って。美味しいものめちゃくちゃ奢るから」
「お、怒っているの……ですよね……?」
「そう、イライラしてる。だからヴァンサンが美味しいものたくさん食べて幸せーってなるとこ見せて」
ヴァンサンはびくびくと震えながらも、私の言葉に目を丸くする。
「え、は、はぁ……?」
「人の不幸より、笑顔で幸せになりたいの。私の勝手だから、拒否権はあるよ」
そういえば、これもポールが言ってたことだった気がする。
私の笑顔を見てると幸せだって、言ってくれた。
それを嘘だとか、人間はもっと汚いとか言うのは簡単だけど、人が笑うと癒されたり嬉しくなるのは多くの人にある感情だ……と、思う。
世の中に醜いものがたくさんあるのは知っているけど、そういった善性も信じていたい。
たとえ裏切られたとしても、信じた私を馬鹿だとは思わない。善性を守るために行動した私を、誇りに思える。
だって、大切なことだから、「善」って概念があるんでしょう?
ヴァンサンはしばらく口をぱくぱくさせて、「……か、考えておきます……」と答えた。
「……レヴィから連絡が来たんだが……まだ、待っててくれるかい?」
……と、レニーが声をかけてくる。
「なんでも、ポールが突然意識を失ったらしい」
「えっ?」
「ロナルドって野郎と合流したらしく、レヴィはそいつの影響を疑ってやがるが……ロナルド本人は心当たりがねぇって主張してるんだと」
よく分からないけど、揉め事が起こった……ってことで、いいのかな……?
ポール……大丈夫なの……?
すごく、気まずい。
「ヴァンサン……まだ気絶してるのかな」
私がぽつりと呟くと、レニーが反応を返してくれる。
「レオがなんも言ってこねぇってことは、そうだろうな」
「……起こしに行ってきていい?」
私の問いに、レニーは少し考える素振りを見せた。
「下手に首を突っ込めば、共倒れになるぜ。……アイツは、そういう地獄にいる」
真剣な表情で、レニーは忠告する。
「もし本気で救いたいんなら、一緒に地獄に堕ちる覚悟を決めな」
「……ポールも、それで……殺されちゃったのかな」
「有り得るな。下手に手を差し伸べて、逆に恨まれるってぇのはよくある話だ」
ずきんと胸が痛む。そんなすれ違い、あまりにも悲しい。
「おーい」
と、ドアの方から明るい声がする。
「起きたぜ!!」
レオナルドが、ヴァンサンを担いで立っていた。
***
マノンはキースに話があるらしく、二人で別室に向かった。……外に出たいって言ってたし、交渉してるのかな?
ヴァンサンはまだ頭がぼんやりしているのか、こめかみを抑えて瞬きを繰り返している。
サングラスの奥を始めて見たけど、瞳の色はポールと全く同じライムグリーンで、ポールと同じく右目の下に泣きぼくろがあった。やっぱり兄弟だなぁ……
「……何でしょうか」
私の視線に気付き、ヴァンサンは再びサングラスをかけ直して隅の方へ移動する。……物理的な距離も置かれているし、心理的な距離も感じる。
「つかよ。おめー、チンコある?」
……と、レオナルドがとんでもない話題をぶち込んでくる。いきなり何……?
「さっき担いだ時、なんつーのか……違和感? 的なのがすごくてよ」
「……ありませんよ。それが何だと言うのですか……」
「なんで?」
「そこ聞いちゃう!?」
思わず口を挟んでしまった。
それだいぶデリケートなことだと思うし、そんなにずけずけ聞いて大丈夫……!?
「……今となっては、覚えていません。母は私の肉体を汚らわしいと言いましたから……つまり、そういうことでしょう……」
けれど、懸念に反して、ヴァンサンは普通に語る。
……そっか、母親はポールの肉体を完璧だって言ってたらしいし、日常的に虐待があったなら去勢されてたっておかしくは……ない、んだ。
ポールとヴァンサンの過酷な生い立ちを、また思い知らされる。……更に、距離が離れていくようにも感じた。
「……そりゃ、兄貴……姉貴? を恨むのも仕方ねぇか。つったって、逆恨みは逆恨みだが……」
レニーの見解にも、納得できてしまう。
ポールは悪くない。……それでも、比較されたことで弊害を受けたなら、恨んでしまっても仕方がない。
ロデリックも、お兄さんやお姉さんと比較されて育って、あまり兄弟仲が良くないんだと聞いたことがある。私は一人っ子だから全然分からないけど、それが辛いことだというのは想像できた。
「……母親の方をどうにかしようとは、思わなかったの?」
だけど……逆恨みであることには間違いない。
恨むべきは、……危害を加えるべきは、ポールじゃなかったはずだ。
私の問いに、ヴァンサンは無理やり口角を持ち上げ、笑顔を作った。
ああ、やっぱり、こういうところはポールと似ている。
「私が強ければ、それを選択できたのでしょうね」
その言葉に、また胸が痛くなる。
本当に……どうして、こうなっちゃったんだろう。
憎い気持ちはある。でも、それ以上に……悔しい。
過去が変えられない以上、ポールの死は覆せない。それでも、せめてヴァンサンが罪を悔い、ポールの想いを受け取ってくれれば……なんて、思ってしまう。
「一緒に、ポールに会いに行こう。ちゃんと話し合ったら、何か変わるよ」
「……」
ヴァンサンは黙り込んだまま、なかなか返事をしない。
やがて、彼は絞り出すように呟いた。
「……やはり、何も分かっていませんね。貴女は……彼女の表面しか、知らないのでしょう」
震える声で、ヴァンサンは私の提案を拒絶する。
「純粋で、穏やかで、明るくて、美しい……人間は、それだけの存在だと思いますか?」
「思わないよ」
ポールは確かに、負の感情を表に出さない人だった。
ううん。出すのが、下手な人だった。
たくさん傷を抱えて、たくさん苦しんで、それでも上手く発露できない……それが、ポールだった。
「あなたはポールを殺した。……そして、罰も受けてない。向き合う必要ぐらいはあるんじゃないの?」
「……それ、は……」
ヴァンサンはハッと息を飲み、がくりと項垂れる。
「それは……その……通り、かも……しれません……」
レニーの方もちらりと見る。キースが会わせられないと言っていた以上、許可は必要だろう。
レニーはやれやれと首を振りつつ、「準備ができりゃ、こっちでお膳立てするつもりだったんだがな」と笑った。
「手間が省けて助かった。レヴィに連絡して、どっかしらで合流と行くかね」
ヴァンサンはまだ死んでいないし、兄弟が話し合うことで、何か進展があるかもしれない。
未来に続く道を、作っていけるかもしれない。
そうすれば……私も、ようやく前を向けるのかも。
「そういや兄弟、ノエルはどうした?」
「どっか行った」
「……おいおい。それ、大丈夫かよ」
レニーとレオナルドは、何やら不穏な会話中。
とりあえず、準備ができるまで待機しておこうかな。
「エレーヌは、本当に満足したのかしら」
……と、どこかしらから声が聞こえる。
彫像の方を見ると、ほとんど消えかけの姿で佇む青年の姿が見えた。ノエル……かな?
「……カミーユが永遠に自分の影に囚われて苦しむからこそ……だった……? ……ああ、もう、他人の感情なんてわかんないわよ……」
どうやら、独り言を呟いているみたい。
たぶん、一人になりたいんだと思うし、そっとしておこう。っていうより、邪魔する勇気がない。殺人鬼だったらしいし……
「あの……」
その時、ヴァンサンに声をかけられた。
「兄は、私の話を……よく、したのですか」
私が振り返ると、ヴァンサンはうつむき加減に問うてくる。
「うん。写真も見せてもらったよ」
「写真……」
「当時からパンクなファッションだったよね。『弟はこういうのにハマってるんだ』って、教えてもらったよ」
「……一緒に、写っていましたか」
「え? ううん、ヴァンサン一人だったと思う」
「……でしょうね……。二人で……撮ったことが、なかったんです。だから、でしょうか……その……実感が、あまり……」
ヴァンサンは言葉に迷いつつ、途切れ途切れに語る。
「プレゼントとか、貰ったことない?」
「何度も……あったはずです。確か、このピアスも……姉からもらったもので……」
恐る恐る、ためらいがちに言葉を連ねているようにも見えた。
「本当は……分からないのです。なぜ、あんなにも、憎み、嫌い、消したいとまで思ったのか……。その……分からないのに……今でも、嫌いで、憎くて仕方がないのです……」
「……好きとか嫌いとか、下手に理由をつけると拗れるよ。今も、ポールやあなたの人格を歪めて捉えてるでしょ」
感情には理由があるけど、それは知覚できる範囲だとは限らない。
理由を探して根本から解決するのも時には大事だけど、主観で目測を誤ってしまった場合、修正するのが難しくなる。……目に見える形がないからね。
「……も、申し訳ありません……」
「謝るなら、私じゃなくポールにね」
「はい……」
あー、もう。ほっとけないなぁ。
……まあ、ポールの弟なら、私の弟みたいなものだしね。将来的には結婚も考えてたし。
そういや、顔立ちから年齢が読みにくいんだけど……彼、いくつなんだろう。老けても見えるし幼くも見えるような……。
「あなたは……その……兄以外を愛したことは……?」
「愛そうとしたことならあるよ。他の人と付き合ったこともあるし。……だけど、無理だった」
「ええと……姉は、そんなに……魅力的ですか……?」
「私にとってはね」
ヴァンサンは納得できなさそうに、「はぁ……」と呟いた。
──私ね、記者になりたいんだ!
夢を語り合った記憶が、また、蘇る。
──そうかい。それは、どうして?
──お父さんが海外で働いてて、アメリカとか中国の新聞をよく買ってきてくれるの! それを見てたらすごく面白くて……私も色んなことを、たくさんの人に伝えたいなって思ったんだ
──良い夢だね。ぼくも応援するよ。きみなら、きっと素敵な記者になれる
──ほんとに!? ありがとう!
彼はいつだって優しく、私の気持ちを包み込んでくれる人だった。
……偽りなんかじゃない。本心で応援してくれていたから、私の復讐に対して「ぼくのせいだ」って涙を流したんだ。きっと、そうだ。
私は信じるよ。……そう、約束したもの。
──信じないでくれ
それなのに、どうして……
どうして、ポール本人まで、そんなことを言うの?
「なんか、私もムカついてきた」
「……は、はい?」
「帰ったら付き合って。美味しいものめちゃくちゃ奢るから」
「お、怒っているの……ですよね……?」
「そう、イライラしてる。だからヴァンサンが美味しいものたくさん食べて幸せーってなるとこ見せて」
ヴァンサンはびくびくと震えながらも、私の言葉に目を丸くする。
「え、は、はぁ……?」
「人の不幸より、笑顔で幸せになりたいの。私の勝手だから、拒否権はあるよ」
そういえば、これもポールが言ってたことだった気がする。
私の笑顔を見てると幸せだって、言ってくれた。
それを嘘だとか、人間はもっと汚いとか言うのは簡単だけど、人が笑うと癒されたり嬉しくなるのは多くの人にある感情だ……と、思う。
世の中に醜いものがたくさんあるのは知っているけど、そういった善性も信じていたい。
たとえ裏切られたとしても、信じた私を馬鹿だとは思わない。善性を守るために行動した私を、誇りに思える。
だって、大切なことだから、「善」って概念があるんでしょう?
ヴァンサンはしばらく口をぱくぱくさせて、「……か、考えておきます……」と答えた。
「……レヴィから連絡が来たんだが……まだ、待っててくれるかい?」
……と、レニーが声をかけてくる。
「なんでも、ポールが突然意識を失ったらしい」
「えっ?」
「ロナルドって野郎と合流したらしく、レヴィはそいつの影響を疑ってやがるが……ロナルド本人は心当たりがねぇって主張してるんだと」
よく分からないけど、揉め事が起こった……ってことで、いいのかな……?
ポール……大丈夫なの……?
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