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第3章 Link at the Lights
51. from: Natalie
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ローランドは、憎い相手の息子だった。……いいえ、今となってはもうわからないわね。
あろうことか自身の妻にけしかけられて、あの最低男は私を汚した。……ごめんなさい、あなたにとっては父と母だったわね。酷いことを言ったわ。
以前から好きだったと、欲しかった、と、意味のわからないことを言っていたけど……私にその気はなかった。本当よ。
夫には相談したけれど、あの人すら恥を恐れて見て見ぬふりをした。
生まれた子は、私に似ていた。
どちらの子かわからなかった。
検査をする必要はない。私の子だ……と、夫は言った。
あの人にとってはきっと、そんなことすら些細なことだったの。
「母さん、大丈夫?」
よくそう聞いてくれる、優しい子だった。
長男は、ロジャーは、少し夫に似たのかプライドが高くて、それでも真面目なしっかり者。
夫の子ではないかもしれない次男は、ローランドは本当に気配り上手で、それでも兄に臆せず意見する子だった。そうそう、口が悪いのはロジャーよりローランドだったのよ。
どちらも自慢の息子だった。本当に愛していた。
夫は私を愛していたようだけど、家名の方を重んじた。……仕事もそう。そっちを選んでいたのは結婚する時には分かりきっていたけど。
そういう家系だから息子達にも厳しく接していたけど、決して手を上げるようなことはしなかった。
ただ、まだ憎らしい男と家族ぐるみの付き合いをするのだけは……それだけは、なかなか納得できなかった。
三男のロバートが産まれたのは、次男が産まれて8年もしてから。
ローランドが弟を欲しがったからよ。……今思えば、あなたのこともあったのでしょう。あなたが、ローランドに弟が欲しいと漏らしたんでしょう?きっとね。
やがてロジャーは、あの夫妻の長女……ローザと恋に落ちた。
向こうの父であるあの男とは、顔を合わせても口なんかきかなかったし、相手も特に話しかけてこなかった。
ロジャーの恋路を邪魔する気もないし、彼女はローランドとも仲が良かった。ロバートの面倒も時折見てくれたのよ。
全て闇に葬り去ってしまえば、幸せだと思ったわ。
だって、3人とも自慢の息子達だから。
……だけど、あの女は、それを許さなかった。
「……ナタリーさん。ローは……ローランドは僕の父の子だと聞いたんですが、本当ですか?」
父と顔が似てきた、あの男とあの女の長男……ロナルドが、そう聞いた。ロジャーの親友で、あの時は確か、2人とも10代の半ば。彼らは、両家の父と同じ道を歩む青年だった。
「……ッ、馬鹿なこと言わないで!」
その動揺が、きっと肯定のようなものだった。
そいつは瞳を見開いて、あの男と同じように、
「……なら、彼は弟なんですね」
目をそらして軽く舌打ちし、あの性悪女と同じように、
「貴女もいい趣味を持ったものだ」
あの女とそっくりな、卑俗な嘲笑を口元に浮かべた。
私は、何もしていないのに。
「母さん、大丈夫?」
彼は、優しい子だった。
大丈夫よ、ロー。あなたが気にすることじゃない……って、ずっと言っていた。変わらず接していたつもり。愛していたつもり。
恨んではいけない。あんなくそ男の息子じゃない。いや、例えそうだったとしても、愛している。
愛しているのよ、大事な息子だもの。
ロジャーの表情に、疲労が見えるようになった。
話を聞いても、彼は何も言わなかった。
彼の妻に聞こうとしたけど、彼女は何も知らないと言った。
嘘をついている気がした。
ローランドも沈んだ顔をするようになった気がした。ロバートだけは、変わらず天真爛漫に笑っていた。
何をしたんだ、ローザ・アンダーソン。あんたもあの性悪女の血を引いてるはず。
だって、あの女は私の不幸を望んでるんだ。そうに違いないんだ。
あんたはロジャーのことも愛してなんかいないんだ。この家に取り入りたかっただけ。
表に出す気はさらさらなかった。なかったけど、人の不幸を喜ぶ女と、人様のものばかり欲しがる男の面影がローザの顔に重なって、腹が立っていたのかもしれない。
あの子が、ロジャーが死んだ時のことは忘れないわ。
まだ若かったのに、まだ23歳なのに、脳の血管が切れた。信じられる?
突然愛した息子が死んでしまったのよ。信じられる?
私は今でも信じられない。もう10年は前なのに、信じられない。信じられるわけがない。
「あんたが死ねばよかった」
覚えてるわ。そんな言葉で、軽はずみな言葉で、あの子も死んでしまった。
2年後、たった21歳で、肉体も含めて帰らぬ人になった。
私が、殺してしまった。
「母さん、ロー兄さんがね」
ロバートは、それから何度も死んだ兄の話をした。短期間に2人も死んだのだから、幻覚を見てもおかしくないって、
そう、思っていたのに。
「母さん、大丈夫?」
ああ、彼は、優しい子だから、
優しすぎたから……
本当に、気にしなくてよかったのよ。
私の暴言なんか、私の、一言なんか、
気にしちゃいけなかったの……
ごめんね。ごめんね、ローランド……。
私があんなことさえ言わなかったら、きっと、今も元気でいたのにね。
ロッド、ごめんなさいね。
あなたにも冷たく当たって、ごめんなさい。あなたに罪なんかないの。最近はちゃんと食べていますか?
これが、私が知る限りの真実です。……ああ、小切手も入れておきますね。少しでいいから足しにしてください。あなたの作品、素敵だった。
***
引き出しの奥に閉まった手紙を、また開いた。……真実を知りたい、と、数年前送った手紙の返事。
差出人はナタリーさん。……ロー兄さんと、ロバートの母親だ。
俺にとっても、母みたいな人だった。
俺らのお袋は、まあ優しかった。俺にはそこまででもなかったけど、たぶん、兄貴や姉貴に比べて何もできないやつだったからだ。
俺からしたら、突然優しかった人に冷たくされて、姉貴も婚約してから八つ当たりが多いって激怒していて、ロジャー兄さんがいきなり死んで、ロー兄さんが……って、意味がわからなかったからな。
…………正直、知りたくなかったことばかり書いてあるけど、読みやすいように直して送る。ナタリーさんには悪いが、全部が全部真実じゃねぇってのは……まあ、最初から分かってた。……でも、たぶん、参考にはなると思う。
隠しちゃいけなかったんだよ、俺も。
なかったことにして、ロー兄さんに甘えちゃいけなかった。
俺は兄貴のことはよく知ってる。
あの人は……俺の親父にそっくりだ。人のものばかり欲しがるとこが特に。
それで、お袋にもそっくりだ。……欲深さとか、手段を選ばないとことかな。
だからこそ、早く送らねぇと。……だけど、
解決したら、もう死別になっちまうんだよな……?
……いや、あの人のことはもう楽にしてやるべきだよな。
でも、正気に戻ったんなら、まだ何とか……ならねぇ……かなぁ……。
ㅤ俺にはまだ、話したいことが、たくさんあるのに。
あろうことか自身の妻にけしかけられて、あの最低男は私を汚した。……ごめんなさい、あなたにとっては父と母だったわね。酷いことを言ったわ。
以前から好きだったと、欲しかった、と、意味のわからないことを言っていたけど……私にその気はなかった。本当よ。
夫には相談したけれど、あの人すら恥を恐れて見て見ぬふりをした。
生まれた子は、私に似ていた。
どちらの子かわからなかった。
検査をする必要はない。私の子だ……と、夫は言った。
あの人にとってはきっと、そんなことすら些細なことだったの。
「母さん、大丈夫?」
よくそう聞いてくれる、優しい子だった。
長男は、ロジャーは、少し夫に似たのかプライドが高くて、それでも真面目なしっかり者。
夫の子ではないかもしれない次男は、ローランドは本当に気配り上手で、それでも兄に臆せず意見する子だった。そうそう、口が悪いのはロジャーよりローランドだったのよ。
どちらも自慢の息子だった。本当に愛していた。
夫は私を愛していたようだけど、家名の方を重んじた。……仕事もそう。そっちを選んでいたのは結婚する時には分かりきっていたけど。
そういう家系だから息子達にも厳しく接していたけど、決して手を上げるようなことはしなかった。
ただ、まだ憎らしい男と家族ぐるみの付き合いをするのだけは……それだけは、なかなか納得できなかった。
三男のロバートが産まれたのは、次男が産まれて8年もしてから。
ローランドが弟を欲しがったからよ。……今思えば、あなたのこともあったのでしょう。あなたが、ローランドに弟が欲しいと漏らしたんでしょう?きっとね。
やがてロジャーは、あの夫妻の長女……ローザと恋に落ちた。
向こうの父であるあの男とは、顔を合わせても口なんかきかなかったし、相手も特に話しかけてこなかった。
ロジャーの恋路を邪魔する気もないし、彼女はローランドとも仲が良かった。ロバートの面倒も時折見てくれたのよ。
全て闇に葬り去ってしまえば、幸せだと思ったわ。
だって、3人とも自慢の息子達だから。
……だけど、あの女は、それを許さなかった。
「……ナタリーさん。ローは……ローランドは僕の父の子だと聞いたんですが、本当ですか?」
父と顔が似てきた、あの男とあの女の長男……ロナルドが、そう聞いた。ロジャーの親友で、あの時は確か、2人とも10代の半ば。彼らは、両家の父と同じ道を歩む青年だった。
「……ッ、馬鹿なこと言わないで!」
その動揺が、きっと肯定のようなものだった。
そいつは瞳を見開いて、あの男と同じように、
「……なら、彼は弟なんですね」
目をそらして軽く舌打ちし、あの性悪女と同じように、
「貴女もいい趣味を持ったものだ」
あの女とそっくりな、卑俗な嘲笑を口元に浮かべた。
私は、何もしていないのに。
「母さん、大丈夫?」
彼は、優しい子だった。
大丈夫よ、ロー。あなたが気にすることじゃない……って、ずっと言っていた。変わらず接していたつもり。愛していたつもり。
恨んではいけない。あんなくそ男の息子じゃない。いや、例えそうだったとしても、愛している。
愛しているのよ、大事な息子だもの。
ロジャーの表情に、疲労が見えるようになった。
話を聞いても、彼は何も言わなかった。
彼の妻に聞こうとしたけど、彼女は何も知らないと言った。
嘘をついている気がした。
ローランドも沈んだ顔をするようになった気がした。ロバートだけは、変わらず天真爛漫に笑っていた。
何をしたんだ、ローザ・アンダーソン。あんたもあの性悪女の血を引いてるはず。
だって、あの女は私の不幸を望んでるんだ。そうに違いないんだ。
あんたはロジャーのことも愛してなんかいないんだ。この家に取り入りたかっただけ。
表に出す気はさらさらなかった。なかったけど、人の不幸を喜ぶ女と、人様のものばかり欲しがる男の面影がローザの顔に重なって、腹が立っていたのかもしれない。
あの子が、ロジャーが死んだ時のことは忘れないわ。
まだ若かったのに、まだ23歳なのに、脳の血管が切れた。信じられる?
突然愛した息子が死んでしまったのよ。信じられる?
私は今でも信じられない。もう10年は前なのに、信じられない。信じられるわけがない。
「あんたが死ねばよかった」
覚えてるわ。そんな言葉で、軽はずみな言葉で、あの子も死んでしまった。
2年後、たった21歳で、肉体も含めて帰らぬ人になった。
私が、殺してしまった。
「母さん、ロー兄さんがね」
ロバートは、それから何度も死んだ兄の話をした。短期間に2人も死んだのだから、幻覚を見てもおかしくないって、
そう、思っていたのに。
「母さん、大丈夫?」
ああ、彼は、優しい子だから、
優しすぎたから……
本当に、気にしなくてよかったのよ。
私の暴言なんか、私の、一言なんか、
気にしちゃいけなかったの……
ごめんね。ごめんね、ローランド……。
私があんなことさえ言わなかったら、きっと、今も元気でいたのにね。
ロッド、ごめんなさいね。
あなたにも冷たく当たって、ごめんなさい。あなたに罪なんかないの。最近はちゃんと食べていますか?
これが、私が知る限りの真実です。……ああ、小切手も入れておきますね。少しでいいから足しにしてください。あなたの作品、素敵だった。
***
引き出しの奥に閉まった手紙を、また開いた。……真実を知りたい、と、数年前送った手紙の返事。
差出人はナタリーさん。……ロー兄さんと、ロバートの母親だ。
俺にとっても、母みたいな人だった。
俺らのお袋は、まあ優しかった。俺にはそこまででもなかったけど、たぶん、兄貴や姉貴に比べて何もできないやつだったからだ。
俺からしたら、突然優しかった人に冷たくされて、姉貴も婚約してから八つ当たりが多いって激怒していて、ロジャー兄さんがいきなり死んで、ロー兄さんが……って、意味がわからなかったからな。
…………正直、知りたくなかったことばかり書いてあるけど、読みやすいように直して送る。ナタリーさんには悪いが、全部が全部真実じゃねぇってのは……まあ、最初から分かってた。……でも、たぶん、参考にはなると思う。
隠しちゃいけなかったんだよ、俺も。
なかったことにして、ロー兄さんに甘えちゃいけなかった。
俺は兄貴のことはよく知ってる。
あの人は……俺の親父にそっくりだ。人のものばかり欲しがるとこが特に。
それで、お袋にもそっくりだ。……欲深さとか、手段を選ばないとことかな。
だからこそ、早く送らねぇと。……だけど、
解決したら、もう死別になっちまうんだよな……?
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