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第4章 Save and Live
59. 忠告
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サーラから何も起こる気配がないと連絡が来て、気は進まないが兄さんと相談することにした。
少し動揺していたが、いつも通りに笑う兄さん。
……俺の前では、まだ狂ったままか。
「どうしたのロッド?」
「……兄さん、もう1人に協力を頼んでて」
「どんな人?俺が連れてったらいい?」
ニコニコと笑いながら、望んでいた答えをくれる。……けど、その行動自体は望んだものじゃない。やっぱりいつもと、似たような感じだ。
「えーと、サーラって人で……まあ、とにかくそれで人手は増えるし、ロバートも助け」
「待って」
ふと、瞳に影が差した。どっちかの名前に反応した気がするけど……どっちだ?
どこか虚像を写していたかのようなターコイズブルーが、俺を見据える。
「…………ロッド。その人はこっちに来るべきじゃない」
引きつった笑顔から、痛みに喘ぐような声が漏れていく。
「さらに外側から見れることは絶対ある。その視点を手放す必要なんかない」
しっかりとした口調が、懐かしかった。思わず涙腺が緩む。涙を堪えつつ、伝えたい言葉を──
「兄さん、俺、ずっと謝りたかっ」
「お前もかロッド。時と場合を考えろスットコドッコイ。いつまで頭ん中でガーデニング続けてんだ」
確かに、正論だ。今はそんな場合じゃない。頭ではわかってたし、今もわかってる。……まあ、ちょっとショックだけどわかってる。
……そういや昔、うちの兄貴にはよくこんな口聞いてたな……。……あの野郎相手と同じ対応は複雑だけど……。
「……離れた立場から見えることもある。そうだな……どこか、場所のわかるところに……」
ぜえ、ぜえと、呼吸が乱れていく。
……苦しそうな姿に、思わず顔を背けた。
「……!兄さん、こっちでアドルフって人に会うのは……?」
レニーとレオナルドはサーラを知っている。
その兄弟は、「アドっさん」という呼び名から察するにアドルフと接触している。
何より、サーラもアドルフもコルネリスと因縁がある。
「……アリだな。アドルフに伝えるか」
「メールは俺からも送れる。……ええと、兄さんは……」
突如、俺を見る瞳に燃えだした憤怒。
兄さんは頭を押さえ、呻く。
「…………ああ、くそ。あの野郎……!!」
「兄さん?」
「ロッド、メールを送ったら派手に動くな。お前は安全圏にいなきゃ役たたずになる」
……ん?それって今は……
「……俺、役に立ててる?」
「はぁ?何分かりきったこと聞いてんだ。脳内ガーデニングは程々にしてそろそろ花屋にでも出荷しろ」
「す、すいません」
めちゃくちゃ久しぶりに怒られた気がする。
軍服に血の染みが広がっていく。痛みからか、兄さんは片膝をつく。
……兄さんに狂っていてほしい相手がいるんじゃないのか、これ。
「……ッ、とにかくだロッド。なんかあっても考えてから動けよ」
「……考えて違ったら?」
「動かないのも自己責任に決まってんだろ。豚小屋でエサ待ちするのは気楽でいいだろうけどな」
「すいません」
こめかみに青筋の浮かんだ笑顔のまま、兄さんは肩を押さえる。
「……?怪我……?」
「気にしなくていい。……呼ばれた。行ってくる」
そのまま裂け目に身を投げ、兄さんは姿を消した。……心配する暇すらくれなかったけど、仕方ねぇよな。
すぐさまサーラに電話をかける。
「えーと、すみません。あの……行ってほしい場所があるんですけど……」
通話中、メールの着信音が響く。
パソコンの方で確認しようと、モニターを見る。
見るな
画面が、真っ黒に覆われた。
少し動揺していたが、いつも通りに笑う兄さん。
……俺の前では、まだ狂ったままか。
「どうしたのロッド?」
「……兄さん、もう1人に協力を頼んでて」
「どんな人?俺が連れてったらいい?」
ニコニコと笑いながら、望んでいた答えをくれる。……けど、その行動自体は望んだものじゃない。やっぱりいつもと、似たような感じだ。
「えーと、サーラって人で……まあ、とにかくそれで人手は増えるし、ロバートも助け」
「待って」
ふと、瞳に影が差した。どっちかの名前に反応した気がするけど……どっちだ?
どこか虚像を写していたかのようなターコイズブルーが、俺を見据える。
「…………ロッド。その人はこっちに来るべきじゃない」
引きつった笑顔から、痛みに喘ぐような声が漏れていく。
「さらに外側から見れることは絶対ある。その視点を手放す必要なんかない」
しっかりとした口調が、懐かしかった。思わず涙腺が緩む。涙を堪えつつ、伝えたい言葉を──
「兄さん、俺、ずっと謝りたかっ」
「お前もかロッド。時と場合を考えろスットコドッコイ。いつまで頭ん中でガーデニング続けてんだ」
確かに、正論だ。今はそんな場合じゃない。頭ではわかってたし、今もわかってる。……まあ、ちょっとショックだけどわかってる。
……そういや昔、うちの兄貴にはよくこんな口聞いてたな……。……あの野郎相手と同じ対応は複雑だけど……。
「……離れた立場から見えることもある。そうだな……どこか、場所のわかるところに……」
ぜえ、ぜえと、呼吸が乱れていく。
……苦しそうな姿に、思わず顔を背けた。
「……!兄さん、こっちでアドルフって人に会うのは……?」
レニーとレオナルドはサーラを知っている。
その兄弟は、「アドっさん」という呼び名から察するにアドルフと接触している。
何より、サーラもアドルフもコルネリスと因縁がある。
「……アリだな。アドルフに伝えるか」
「メールは俺からも送れる。……ええと、兄さんは……」
突如、俺を見る瞳に燃えだした憤怒。
兄さんは頭を押さえ、呻く。
「…………ああ、くそ。あの野郎……!!」
「兄さん?」
「ロッド、メールを送ったら派手に動くな。お前は安全圏にいなきゃ役たたずになる」
……ん?それって今は……
「……俺、役に立ててる?」
「はぁ?何分かりきったこと聞いてんだ。脳内ガーデニングは程々にしてそろそろ花屋にでも出荷しろ」
「す、すいません」
めちゃくちゃ久しぶりに怒られた気がする。
軍服に血の染みが広がっていく。痛みからか、兄さんは片膝をつく。
……兄さんに狂っていてほしい相手がいるんじゃないのか、これ。
「……ッ、とにかくだロッド。なんかあっても考えてから動けよ」
「……考えて違ったら?」
「動かないのも自己責任に決まってんだろ。豚小屋でエサ待ちするのは気楽でいいだろうけどな」
「すいません」
こめかみに青筋の浮かんだ笑顔のまま、兄さんは肩を押さえる。
「……?怪我……?」
「気にしなくていい。……呼ばれた。行ってくる」
そのまま裂け目に身を投げ、兄さんは姿を消した。……心配する暇すらくれなかったけど、仕方ねぇよな。
すぐさまサーラに電話をかける。
「えーと、すみません。あの……行ってほしい場所があるんですけど……」
通話中、メールの着信音が響く。
パソコンの方で確認しようと、モニターを見る。
見るな
画面が、真っ黒に覆われた。
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