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第9章 魔力クローン兵士
魔力クローン兵士
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仕事明けのユウが街を歩いていると、突然の違和感に襲われた。周囲の空気が変わり、影が忍び寄るような気配を感じた。その瞬間、ユウの体が勝手に動き出した。幼い頃に母から受けた特殊な訓練が、無意識のうちに発動したのだ。
「誰かいるのか?」
ユウは警戒心を強めながら、体を低く構えた。
黒装束の集団がユウを取り囲んだ。彼らの手には不気味な光を放つ武器が握られていた。
「動くな。おとなしく来てもらう」
低い声で命じる男に、ユウの体は瞬時に反応した。母親がスパイだった影響で仕込まれた反射神経と、裏社会に影響力のある祖父から密かに教え込まれた護身術が、ユウの体を自然と動かした。
「くそっ!」
ユウは持ち前の身体能力を活かし、何人かの男をかわした。それは、まるで長年の訓練を積んだ達人のような動きだった。しかし、彼らの数は圧倒的だった。
さらに、彼らの手から放たれた青白い光がユウの体を包み込む。
「な、何だこれは? 体が動かない」
魔力によって拘束されたユウは、なすすべもなく男たちに取り押さえられてしまった。母から教わった護身術も、祖父の裏世界での経験から得た技も、この異常な力の前では無力だった。
「目標確保。本部に戻る」
無線で連絡を取る男の声が聞こえる中、ユウの意識は徐々に遠のいていった。その瞬間まで、ユウの体は抵抗を続けていた。それは、まるで遺伝子レベルで刻み込まれた生存本能のようだった。
気がつくと、ユウは見知らぬ場所に閉じ込められていた。冷たい金属の壁に囲まれた部屋で、彼は状況を把握しようと必死だった。母から教わった諜報技術を思い出し、周囲の情報を素早く収集しようとする。
「ここは、どこだ?」
そこへ、一人の男が入ってきた。彼の胸には、カムチャッカ・サハリン連邦の紋章が輝いている。ユウは瞬時にその意味を理解した。母の仕事を通じて得た知識が、この状況で役立っていた。
「お目覚めか。心配するな、我々はお前を傷つけるつもりはない」
男は冷静な口調で話し始めた。ユウは、その声のトーンから相手の意図を読み取ろうとしていた。
「我々が欲しいのは、お前の友人が持つ魔石ドウリンだ。奴との交換取引材料になってもらう」
ユウは唖然とした。竜也の秘密が、こんな形で露見してしまうとは。そして今、自分がその秘密に巻き込まれてしまったのだ。母親から教わった冷静さを保ちながら、ユウは状況を分析し始めた。ユウが閉じ込められた部屋に、もう一人、別の男が入ってきた。彼の目つきは鋭く、情報部門の責任者らしい雰囲気を漂わせていた。
「澪川ユウ、いや、ユウ・マルテイン。帰国子女と称し現在はホストクラブで働いているな。母親が同胞のスパイだったという興味深い経歴の持ち主だ」
男はユウの詳細な情報を淡々と述べた。ユウは驚きを隠せなかった。
「どうして」
「当たり前だ。我々の情報網を甘く見るな。お前の過去も、現在の状況も把握している」
男は冷ややかに笑った。しかし、その表情にはどこか警戒の色も見えた。
「実はな、お前の出生についても我々は知っている。お前の母親が国のスパイとして日本に潜入し、任務中に身籠もったのがお前だ。つまり、お前自身も貴重な我が国の『資産』と言えるわけだ」
ユウは息を呑んだ。自分の出生に関する真実を、このような場所で聞かされるとは思ってもみなかった。
「だが、我々はお前自身には危害を加えない。裏社会に影響力のあるお前の祖父のことは承知している。それに、お前の潜在的な価値も無視できない。余計な波風は立てたくないのでな」
ユウは祖父の名が出たことに更に驚いた。自分でさえ詳しく知らない家族の闇が、ここでも影を落としていた。
「我々が欲しいのは魔石ドウリンだけだ。友人の竜也に伝えろ。魔石と引き換えに、お前を解放する」
男の言葉に、ユウは複雑な思いを抱いた。自分の過去が、こんな形で現在に影響を与えるとは。そして、竜也の秘密が露見してしまったことへの罪悪感も募った。
「竜也、俺のせいで危険に」
ユウは歯を食いしばった。母から受け継いだ冷静さと、これまでの経験を総動員して、何とかしてこの状況を打開しなければならない。祖父の影響力に頼るわけにはいかない。自分の力で、そして竜也を危険に晒すことなく、この窮地を脱する方法を見つけなければ。
ユウの頭の中で、様々な思いが交錯した。自分の出生の秘密、母の真の姿、そして今直面している危機。全てが絡み合い、ユウの心を激しく揺さぶった。
彼らは富士山麓の臨時アジトへとユウを連れ去り、竜也に対して身柄と引き換えに魔石ドウリンの引き渡しを要求してきた。
松本新と竜也は即座に救出作戦を開始したが、事態は予想以上に複雑化していた。自衛隊内部にもカムチャッカ・サハリン連邦に協力する勢力が存在し、アジトの存在を黙認し彼らは松本新たちの動きを妨害し始めたのだ。
富士山麓に向かう途中、自衛隊の一部部隊が松本新と竜也の行く手を阻んだ。
「とまれ! これ以上進ませるわけにはいかない」自衛隊員が銃を構える。
松本新は冷静に状況を分析し、瞬時に行動に移った。彼はポケットから小さな装置を取り出し、地面に投げ込んだ。突如、強力な電磁パルスが発生し、自衛隊の通信機器や車両のシステムが一斉にダウンした。
「竜也くん、今だ!」
二人は混乱に乗じて突破を図る。松本新は驚異的な格闘術を披露し、次々と自衛隊員を無力化していく。竜也も魔力を適度に使いながら、敵の攻撃をかわし続けた。
「魔力は温存しろ。本当の戦いはこれからだ」
松本新の声に、竜也は頷いた。激しい戦闘の末、二人は自衛隊の包囲網を突破。富士山麓の秘密基地へと到達した。そこにはカムチャッカ・サハリン連邦の精鋭部隊が待ち構えていた。
「ここからは俺の出番だ」竜也が前に出る。
魔力を温存していた竜也は、腕輪から溢れる力を解放した。彼の周りに青い光の渦が巻き起こり、半透明の魔力の鎧が全身を包み込む。
カムチャッカ・サハリン連邦の魔装部隊が一斉に攻撃を仕掛けてきたが、竜也はその動きを完全に先読みしていた。彼は瞬時に敵陣の中心へと飛び込み、魔力を纏った拳で次々と敵を倒していく。
「これがドウリンの真の力か」松本新も驚愕の表情を浮かべる。
わずか数分で、カムチャッカ・サハリン連邦の第一陣は全滅した。しかし、それは戦いの序章に過ぎなかった。
突如、基地の奥から新たな部隊が現れた。その中心にいたのは、竜也の婚約者リュミエールにそっくりな女性だった。
「クローン?」竜也は思わず声を漏らす。
クローン部隊は、リュミエールの遺伝子を基に作られた魔術強化兵士たちだった。彼らの魔力は竜也のそれを凌駕し、戦況は一変する。
竜也は苦戦を強いられる。クローン兵士たちの連携した攻撃に、彼の魔力の鎧も徐々に崩れ始めていた。
「くっ、このままじゃ」
その時、地面が大きく揺れ始めた。突如発生した地震に、戦場は混乱に陥る。
しかし、竜也はその地震に何か特別なものを感じ取っていた。地震のエネルギーが、彼の腕輪の魔石ドウリン、そして彼の魔力と共鳴しているのだ。
「これは魔力共鳴?」
竜也は直感的にその力を取り込もうとした。彼の魔装が輝きを増し、周囲の空間が歪み始める。
クローン兵士たちが恐怖に怯む中、竜也は新たな力を手に入れていた。彼は空間を自在に操り、敵の攻撃を無効化し、同時に彼らの魔力の源を断ち切っていく。彼の魔力が光の縄となり官女たちを捕縛し無力化し倒していくのであった。
「お前たちは、リュミエールの偽物に過ぎない」竜也の声が響く。
次々とクローン兵士たちが倒れていく。最後に残ったリュミエールのクローンを前に、竜也は静かに語りかけた。
「君は本物のリュミエールじゃない。だが、彼女の記憶の一部は持っているはずだ。教えてくれ、リュミエールはどこだ? カムチャッカ・サハリン連邦の次の計画は何だ?」
クローンは抵抗しようとしたが、竜也の魔力の前には無力だった。クローンの意識が崩れ始める中、重要な情報が明らかになる。
「次の……標的は……東京タワー……そこで」
クローンの言葉が途切れた瞬間、彼女の体は光となって消散した。
「東京タワー」竜也は呟いた。
戦いの余韻が残る中、松本新が近づいてきた。
「ひと段落だ、竜也くん。だが、これで終わりじゃない。本当の戦いはこれからだ」
竜也は頷いた。彼らの前には、さらなる試練が待ち受けていた。東京タワーでの決戦。そこで、この戦いの真相が明らかになるのかもしれない。
「ユウを助け出さないと」竜也は言った。
二人はアジト内を探索し、ようやくユウを発見。彼女は軽い怪我はあったものの、無事だった。
「竜也、すまない」ユウは弱々しく笑った。
「気にするな。さあ、帰ろう」
三人は敵アジトを後にした。夜明けが近づく富士山の麓で、彼らは一瞬の休息を取った。
しかし、竜也の心の中では、さまざまな疑問が渦巻いていた。リュミエールのクローン、地震と共鳴した魔力、そして東京タワーでの次なる戦い。全てが繋がっているような気がしていた。
「俺たちは、一体何と戦っているんだ」
その問いへの答えを求めて、竜也たちの新たな戦いが始まろうとしていた。東京タワーでの決戦。そこで、全ての謎が明かされるのか。それとも、さらなる混沌が待ち受けているのか。
朝日が昇り始める中、竜也たちは東京へと向かった。未知なる戦いへの決意を胸に。
東京タワーに到着した竜也、松本新、そしてユウは、目の前に広がる異様な光景に言葉を失った。タワーの周囲には不自然な霧が立ち込め、その頂上には巨大な光の球体が浮かんでいた。地面は絶え間なく揺れ、街中はパニックに陥っていた。
「これは人工地震か」竜也は歯を食いしばった。
突如、竜也の腕輪が強く輝き始めた。その光は彼の体を包み込み、半透明の魔力の鎧を形成した。今回の魔装は以前よりも洗練され、強大な力が漲っているのを感じた。
「行くぞ!」竜也は叫び、驚異的なスピードでタワーに向かって飛び出した。
タワーの頂上に到達すると、そこには巨大な魔法陣が展開されていた。その中心には巨大な人工的な魔石ドウリンが浮かび、周囲にはカムチャッカ・サハリン連邦の科学者たちとリュミエールのクローン兵士たちが立ち並んでいた。
「よく来たな、魔石の使い手よ」兵士の一人が冷笑した。
竜也は怒りを込めて叫んだ。
「これはなんだ? この狂気の実験を止めろ!」
科学者の一人が得意げに説明を始めた。
「これは世界を変える実験だ。現世での魔石ドウリンの錬成度を上げ、その力で自然災害を自在に操る。我々は神になるのだ!」
その瞬間、魔法陣が強く輝き、地震の規模が更に大きくなった。竜也は魔法陣に向かって突進したが、クローン兵士たちが立ちはだかる。
激しい戦いが始まった。竜也は魔力を纏った拳で次々とクローン兵士たちを倒していくが、彼らの数は尽きることを知らなかった。どこかで松本新も戦っているようだったが、援護する余裕もなかった。
「くそっ、きりがない。このままじゃ」
突然、竜也の意識の奥底でかすかな声、異世界の声、懐かしい響きが聞こえた。
「エルヴィリス。私の力で魔力共鳴を」
その瞬間、竜也の体から眩い光が放たれた。その光は周囲の空間を歪め、クローン兵士たちを押し返した。
「これはリュミエールの力?」
新たな力を得た竜也は、更に激しく戦い始めた。彼の動きは目にも止まらぬ速さで、クローン兵士たちは次々と倒れていった。
しかし、かの国の科学者たちは諦めなかった。彼らは装置によって魔石ドウリンにさらなる力を注ぎ込み、地震の規模を更に大きくしていく。
竜也は苦悶の表情を浮かべながら叫んだ。
「このままじゃ東京が……いや、日本中が崩壊する!」
彼は決意を固め、巨大な魔石ドウリンに向かって飛び込んだ。その瞬間、竜也の体から放たれる光と魔石ドウリンの力が激しくぶつかり合い、強烈な衝撃波が発生した。
「うおおおっ!」
竜也は全身全霊の力を振り絞り、魔石ドウリンの力と対抗した。彼の体は悲鳴を上げんばかりに震えていたが、決して諦めなかった。
「リュミエール。みんな俺に力を!」
その叫びと共に、竜也の体から驚異的な魔力が溢れ出した。その力は魔石ドウリンを包み込み、少しずつだが確実にその力を抑え込んでいった。
科学者たちは驚愕の表情を浮かべた。
「バカな? 人の力で巨大な魔石を.」
激しい光の渦の中心で、竜也は最後の力を振り絞った。
「終わらせる。この馬鹿げた実験を!」
轟音と共に、人工魔石ドウリンが粉々に砕け散った。地震は徐々に収まり始め、東京の街に静けさが戻ってきた。遠くでヘリの音がする。やがて自衛隊がここへやってくるだろう。
彼らの装置も回収され、適切な処置がされる。そんなことをおぼろげに竜也が考え、竜也は、力尽きたように膝をついた。彼の魔装は消え、汗と埃にまみれた姿に戻っていた。
「やった。終わったんだ」
しかし、それは終わりではなかった。粉々になった魔石ドウリンの破片が突如として光を放ち、空間に歪みを作り出し始めたのだ。
「な? 何だ?これは!」
竜也は必死に抵抗したが、その力は抗いがたいものだった。彼の体が徐々にその歪みに引き寄せられていく。彼は慌てて『次元転移の魔法』を展開しようとした。彼のポケットには、その方法をメモしてあるのだった。しかし竜也が次元の歪に吸い込まれるスピードが速いのだった。
「竜也くん!」駆けつけたユウと松本新の声が聞こえた。
「ユウ、松本さん!」竜也は叫んだ。
「松本さん、これ!」
竜也は必死に松本にメモと咄嗟に掴んだ魔石ドウリンの欠片を松本に渡した。
「松本さん、お願いします。ユウ、必ず帰る。心配す」
その言葉途中に、竜也の姿が光の中に消えていった。しかし、彼の意志は確かにこの世界に残されていた。
タワーの頂上に残されたユウと松本新は、呆然と空を見上げていた。月は見えたが下弦を鋭く天に示す状態だった。
「誰かいるのか?」
ユウは警戒心を強めながら、体を低く構えた。
黒装束の集団がユウを取り囲んだ。彼らの手には不気味な光を放つ武器が握られていた。
「動くな。おとなしく来てもらう」
低い声で命じる男に、ユウの体は瞬時に反応した。母親がスパイだった影響で仕込まれた反射神経と、裏社会に影響力のある祖父から密かに教え込まれた護身術が、ユウの体を自然と動かした。
「くそっ!」
ユウは持ち前の身体能力を活かし、何人かの男をかわした。それは、まるで長年の訓練を積んだ達人のような動きだった。しかし、彼らの数は圧倒的だった。
さらに、彼らの手から放たれた青白い光がユウの体を包み込む。
「な、何だこれは? 体が動かない」
魔力によって拘束されたユウは、なすすべもなく男たちに取り押さえられてしまった。母から教わった護身術も、祖父の裏世界での経験から得た技も、この異常な力の前では無力だった。
「目標確保。本部に戻る」
無線で連絡を取る男の声が聞こえる中、ユウの意識は徐々に遠のいていった。その瞬間まで、ユウの体は抵抗を続けていた。それは、まるで遺伝子レベルで刻み込まれた生存本能のようだった。
気がつくと、ユウは見知らぬ場所に閉じ込められていた。冷たい金属の壁に囲まれた部屋で、彼は状況を把握しようと必死だった。母から教わった諜報技術を思い出し、周囲の情報を素早く収集しようとする。
「ここは、どこだ?」
そこへ、一人の男が入ってきた。彼の胸には、カムチャッカ・サハリン連邦の紋章が輝いている。ユウは瞬時にその意味を理解した。母の仕事を通じて得た知識が、この状況で役立っていた。
「お目覚めか。心配するな、我々はお前を傷つけるつもりはない」
男は冷静な口調で話し始めた。ユウは、その声のトーンから相手の意図を読み取ろうとしていた。
「我々が欲しいのは、お前の友人が持つ魔石ドウリンだ。奴との交換取引材料になってもらう」
ユウは唖然とした。竜也の秘密が、こんな形で露見してしまうとは。そして今、自分がその秘密に巻き込まれてしまったのだ。母親から教わった冷静さを保ちながら、ユウは状況を分析し始めた。ユウが閉じ込められた部屋に、もう一人、別の男が入ってきた。彼の目つきは鋭く、情報部門の責任者らしい雰囲気を漂わせていた。
「澪川ユウ、いや、ユウ・マルテイン。帰国子女と称し現在はホストクラブで働いているな。母親が同胞のスパイだったという興味深い経歴の持ち主だ」
男はユウの詳細な情報を淡々と述べた。ユウは驚きを隠せなかった。
「どうして」
「当たり前だ。我々の情報網を甘く見るな。お前の過去も、現在の状況も把握している」
男は冷ややかに笑った。しかし、その表情にはどこか警戒の色も見えた。
「実はな、お前の出生についても我々は知っている。お前の母親が国のスパイとして日本に潜入し、任務中に身籠もったのがお前だ。つまり、お前自身も貴重な我が国の『資産』と言えるわけだ」
ユウは息を呑んだ。自分の出生に関する真実を、このような場所で聞かされるとは思ってもみなかった。
「だが、我々はお前自身には危害を加えない。裏社会に影響力のあるお前の祖父のことは承知している。それに、お前の潜在的な価値も無視できない。余計な波風は立てたくないのでな」
ユウは祖父の名が出たことに更に驚いた。自分でさえ詳しく知らない家族の闇が、ここでも影を落としていた。
「我々が欲しいのは魔石ドウリンだけだ。友人の竜也に伝えろ。魔石と引き換えに、お前を解放する」
男の言葉に、ユウは複雑な思いを抱いた。自分の過去が、こんな形で現在に影響を与えるとは。そして、竜也の秘密が露見してしまったことへの罪悪感も募った。
「竜也、俺のせいで危険に」
ユウは歯を食いしばった。母から受け継いだ冷静さと、これまでの経験を総動員して、何とかしてこの状況を打開しなければならない。祖父の影響力に頼るわけにはいかない。自分の力で、そして竜也を危険に晒すことなく、この窮地を脱する方法を見つけなければ。
ユウの頭の中で、様々な思いが交錯した。自分の出生の秘密、母の真の姿、そして今直面している危機。全てが絡み合い、ユウの心を激しく揺さぶった。
彼らは富士山麓の臨時アジトへとユウを連れ去り、竜也に対して身柄と引き換えに魔石ドウリンの引き渡しを要求してきた。
松本新と竜也は即座に救出作戦を開始したが、事態は予想以上に複雑化していた。自衛隊内部にもカムチャッカ・サハリン連邦に協力する勢力が存在し、アジトの存在を黙認し彼らは松本新たちの動きを妨害し始めたのだ。
富士山麓に向かう途中、自衛隊の一部部隊が松本新と竜也の行く手を阻んだ。
「とまれ! これ以上進ませるわけにはいかない」自衛隊員が銃を構える。
松本新は冷静に状況を分析し、瞬時に行動に移った。彼はポケットから小さな装置を取り出し、地面に投げ込んだ。突如、強力な電磁パルスが発生し、自衛隊の通信機器や車両のシステムが一斉にダウンした。
「竜也くん、今だ!」
二人は混乱に乗じて突破を図る。松本新は驚異的な格闘術を披露し、次々と自衛隊員を無力化していく。竜也も魔力を適度に使いながら、敵の攻撃をかわし続けた。
「魔力は温存しろ。本当の戦いはこれからだ」
松本新の声に、竜也は頷いた。激しい戦闘の末、二人は自衛隊の包囲網を突破。富士山麓の秘密基地へと到達した。そこにはカムチャッカ・サハリン連邦の精鋭部隊が待ち構えていた。
「ここからは俺の出番だ」竜也が前に出る。
魔力を温存していた竜也は、腕輪から溢れる力を解放した。彼の周りに青い光の渦が巻き起こり、半透明の魔力の鎧が全身を包み込む。
カムチャッカ・サハリン連邦の魔装部隊が一斉に攻撃を仕掛けてきたが、竜也はその動きを完全に先読みしていた。彼は瞬時に敵陣の中心へと飛び込み、魔力を纏った拳で次々と敵を倒していく。
「これがドウリンの真の力か」松本新も驚愕の表情を浮かべる。
わずか数分で、カムチャッカ・サハリン連邦の第一陣は全滅した。しかし、それは戦いの序章に過ぎなかった。
突如、基地の奥から新たな部隊が現れた。その中心にいたのは、竜也の婚約者リュミエールにそっくりな女性だった。
「クローン?」竜也は思わず声を漏らす。
クローン部隊は、リュミエールの遺伝子を基に作られた魔術強化兵士たちだった。彼らの魔力は竜也のそれを凌駕し、戦況は一変する。
竜也は苦戦を強いられる。クローン兵士たちの連携した攻撃に、彼の魔力の鎧も徐々に崩れ始めていた。
「くっ、このままじゃ」
その時、地面が大きく揺れ始めた。突如発生した地震に、戦場は混乱に陥る。
しかし、竜也はその地震に何か特別なものを感じ取っていた。地震のエネルギーが、彼の腕輪の魔石ドウリン、そして彼の魔力と共鳴しているのだ。
「これは魔力共鳴?」
竜也は直感的にその力を取り込もうとした。彼の魔装が輝きを増し、周囲の空間が歪み始める。
クローン兵士たちが恐怖に怯む中、竜也は新たな力を手に入れていた。彼は空間を自在に操り、敵の攻撃を無効化し、同時に彼らの魔力の源を断ち切っていく。彼の魔力が光の縄となり官女たちを捕縛し無力化し倒していくのであった。
「お前たちは、リュミエールの偽物に過ぎない」竜也の声が響く。
次々とクローン兵士たちが倒れていく。最後に残ったリュミエールのクローンを前に、竜也は静かに語りかけた。
「君は本物のリュミエールじゃない。だが、彼女の記憶の一部は持っているはずだ。教えてくれ、リュミエールはどこだ? カムチャッカ・サハリン連邦の次の計画は何だ?」
クローンは抵抗しようとしたが、竜也の魔力の前には無力だった。クローンの意識が崩れ始める中、重要な情報が明らかになる。
「次の……標的は……東京タワー……そこで」
クローンの言葉が途切れた瞬間、彼女の体は光となって消散した。
「東京タワー」竜也は呟いた。
戦いの余韻が残る中、松本新が近づいてきた。
「ひと段落だ、竜也くん。だが、これで終わりじゃない。本当の戦いはこれからだ」
竜也は頷いた。彼らの前には、さらなる試練が待ち受けていた。東京タワーでの決戦。そこで、この戦いの真相が明らかになるのかもしれない。
「ユウを助け出さないと」竜也は言った。
二人はアジト内を探索し、ようやくユウを発見。彼女は軽い怪我はあったものの、無事だった。
「竜也、すまない」ユウは弱々しく笑った。
「気にするな。さあ、帰ろう」
三人は敵アジトを後にした。夜明けが近づく富士山の麓で、彼らは一瞬の休息を取った。
しかし、竜也の心の中では、さまざまな疑問が渦巻いていた。リュミエールのクローン、地震と共鳴した魔力、そして東京タワーでの次なる戦い。全てが繋がっているような気がしていた。
「俺たちは、一体何と戦っているんだ」
その問いへの答えを求めて、竜也たちの新たな戦いが始まろうとしていた。東京タワーでの決戦。そこで、全ての謎が明かされるのか。それとも、さらなる混沌が待ち受けているのか。
朝日が昇り始める中、竜也たちは東京へと向かった。未知なる戦いへの決意を胸に。
東京タワーに到着した竜也、松本新、そしてユウは、目の前に広がる異様な光景に言葉を失った。タワーの周囲には不自然な霧が立ち込め、その頂上には巨大な光の球体が浮かんでいた。地面は絶え間なく揺れ、街中はパニックに陥っていた。
「これは人工地震か」竜也は歯を食いしばった。
突如、竜也の腕輪が強く輝き始めた。その光は彼の体を包み込み、半透明の魔力の鎧を形成した。今回の魔装は以前よりも洗練され、強大な力が漲っているのを感じた。
「行くぞ!」竜也は叫び、驚異的なスピードでタワーに向かって飛び出した。
タワーの頂上に到達すると、そこには巨大な魔法陣が展開されていた。その中心には巨大な人工的な魔石ドウリンが浮かび、周囲にはカムチャッカ・サハリン連邦の科学者たちとリュミエールのクローン兵士たちが立ち並んでいた。
「よく来たな、魔石の使い手よ」兵士の一人が冷笑した。
竜也は怒りを込めて叫んだ。
「これはなんだ? この狂気の実験を止めろ!」
科学者の一人が得意げに説明を始めた。
「これは世界を変える実験だ。現世での魔石ドウリンの錬成度を上げ、その力で自然災害を自在に操る。我々は神になるのだ!」
その瞬間、魔法陣が強く輝き、地震の規模が更に大きくなった。竜也は魔法陣に向かって突進したが、クローン兵士たちが立ちはだかる。
激しい戦いが始まった。竜也は魔力を纏った拳で次々とクローン兵士たちを倒していくが、彼らの数は尽きることを知らなかった。どこかで松本新も戦っているようだったが、援護する余裕もなかった。
「くそっ、きりがない。このままじゃ」
突然、竜也の意識の奥底でかすかな声、異世界の声、懐かしい響きが聞こえた。
「エルヴィリス。私の力で魔力共鳴を」
その瞬間、竜也の体から眩い光が放たれた。その光は周囲の空間を歪め、クローン兵士たちを押し返した。
「これはリュミエールの力?」
新たな力を得た竜也は、更に激しく戦い始めた。彼の動きは目にも止まらぬ速さで、クローン兵士たちは次々と倒れていった。
しかし、かの国の科学者たちは諦めなかった。彼らは装置によって魔石ドウリンにさらなる力を注ぎ込み、地震の規模を更に大きくしていく。
竜也は苦悶の表情を浮かべながら叫んだ。
「このままじゃ東京が……いや、日本中が崩壊する!」
彼は決意を固め、巨大な魔石ドウリンに向かって飛び込んだ。その瞬間、竜也の体から放たれる光と魔石ドウリンの力が激しくぶつかり合い、強烈な衝撃波が発生した。
「うおおおっ!」
竜也は全身全霊の力を振り絞り、魔石ドウリンの力と対抗した。彼の体は悲鳴を上げんばかりに震えていたが、決して諦めなかった。
「リュミエール。みんな俺に力を!」
その叫びと共に、竜也の体から驚異的な魔力が溢れ出した。その力は魔石ドウリンを包み込み、少しずつだが確実にその力を抑え込んでいった。
科学者たちは驚愕の表情を浮かべた。
「バカな? 人の力で巨大な魔石を.」
激しい光の渦の中心で、竜也は最後の力を振り絞った。
「終わらせる。この馬鹿げた実験を!」
轟音と共に、人工魔石ドウリンが粉々に砕け散った。地震は徐々に収まり始め、東京の街に静けさが戻ってきた。遠くでヘリの音がする。やがて自衛隊がここへやってくるだろう。
彼らの装置も回収され、適切な処置がされる。そんなことをおぼろげに竜也が考え、竜也は、力尽きたように膝をついた。彼の魔装は消え、汗と埃にまみれた姿に戻っていた。
「やった。終わったんだ」
しかし、それは終わりではなかった。粉々になった魔石ドウリンの破片が突如として光を放ち、空間に歪みを作り出し始めたのだ。
「な? 何だ?これは!」
竜也は必死に抵抗したが、その力は抗いがたいものだった。彼の体が徐々にその歪みに引き寄せられていく。彼は慌てて『次元転移の魔法』を展開しようとした。彼のポケットには、その方法をメモしてあるのだった。しかし竜也が次元の歪に吸い込まれるスピードが速いのだった。
「竜也くん!」駆けつけたユウと松本新の声が聞こえた。
「ユウ、松本さん!」竜也は叫んだ。
「松本さん、これ!」
竜也は必死に松本にメモと咄嗟に掴んだ魔石ドウリンの欠片を松本に渡した。
「松本さん、お願いします。ユウ、必ず帰る。心配す」
その言葉途中に、竜也の姿が光の中に消えていった。しかし、彼の意志は確かにこの世界に残されていた。
タワーの頂上に残されたユウと松本新は、呆然と空を見上げていた。月は見えたが下弦を鋭く天に示す状態だった。
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基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
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