『異世界からきたイケメンホスト? 実は最強のエルフでした』

ぜろのいち

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第11章女戦士エリー

女戦士エリー

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竜也のいない『エデン』。
店長は期待していた。
魔術のような見世物がなく以前のような静けさを取り戻すことを。
しかし、なぜか盛況なのだ。マイルドと言ってもホストクラブなので女性が来るのだが、男連れが増え一様に屈強な男達ばかりだった。
しかも警察の指導で『松本新』。この男が常駐するようになったのだ。
「なんか、違うんだがな」
店長はぼやきながらも、接客に追われていた。
そんなエデンに金髪で印象的な目元の女性がやってきた。彼女はエリーと名乗り、男装のユウを指名するのだった。松本新はエリーが入ってきたときに驚きの表情を見せ、慎重に彼女の立ち振る舞いを確認していた。エリーも店内を見回し松本を見つけると軽く指で眉毛をなで特殊部隊に伝わる『黙って様子を見て』のサインを送るのだった。
そんなエデンの華やかな照明の下、エリーは優雅に座り、グラスを傾けていた。彼女の鋭い眼差しは、松本を含め店内を巧みに観察していた。
「ユウさん」適当な自己紹介を終えエリーは柔らかな声で呼びかけた。
「この店で長く働いているんですか?」
ユウは微笑みながら答えた。
「はい、かれこれ数年になります。お客様のお好みも、だいぶ把握できてきましたよ」
エリーは、ユウの左手の小指が無意識に動く様子に注目した。その動きは、カムチャッカ・サハリン連邦の秘密警察が使う暗号に酷似していた。
癖なのか? 緊張した時に現れるのか?
エリーは観察を続けた。
 「へえ、大変ですね」
エリーは軽く感心したふりをしながら、更に話を進めた。
 「ユウさん、少し失礼なことを聞きますが、生まれはどちらなのですか?少しイントネーションに異国の訛りを感じますが」
 「え?」
ユウはどっきりとした。汗がじんわりとにじむのを感じた。竜也以外に言ってもいない秘密が、今日来た客に言い当てられたからだった。つい先日の誘拐時間が脳裏によぎった。
 「外国の方なのに、日本の言葉に関して詳しいのですね。
私は親の影響ですかね。実は帰国子女なんですよ」
思わず話をユウは逸らそうと話を続けた。
 「エリーさん、観光に見えませんね。お仕事ですか?」
尋ねられたエリーは本題を切り出した。
「人探しです、竜也さん。彼って不在なのですか?」
ユウの表情が一瞬硬くなった。
「ええ、在籍していますが、今日は所用で不在です」
エリーは、ユウの反応を細かく観察していた。
「そうですか。彼のことをもっと詳しく教えていただけませんか?」
ユウは慎重に言葉を選びながら答えた。
「竜也は最近、細かなことに気が付くようになって」
その時、ユウの右手が一瞬、カムチャッカ・サハリン連邦の特殊部隊が使うハンドサインをした。先ほどの緊張した時の動作含め不穏な動きだった。
エリーの目が細くなった。
(この女、まさかカムチャッカ・サハリン連邦のエージェント?)
エリーは内心で驚きを隠せなかった。そういえばカムチャッカ・サハリン連邦は長く潜伏し家族を作るものもいるという、まさかこの子が。
一方、ユウもエリーの素性を疑い始めていた。彼女の質問の仕方、視線の動き、全てが訓練された諜報員のそれだった。
二人の表情は表面上穏やかに会話を続けながら、互いの正体を探り合う緊張した状況が続いた。
そのころ松本新は、外の月を見て慌てて店の屋上に上がっていた。
満月の夜、松本新は複雑な魔法陣を地面に描いていた。彼の手には、竜也が残した腕輪が握られていた。
「竜也、エルヴィリス……」松本は呟きながら、慎重に線を引いていく。
「君たちを取り戻す」
松本はメモを見ながら魔法陣を描き魔石ドウリンの欠片を配置した。
魔法陣が完成に近づくにつれ、周囲の空気が変わり始めた。微かな風が吹き、葉が揺れる音が聞こえる。
松本は深呼吸をして、最後の一画を引き終わった。その瞬間、彼の背後で声がした。
「そこまでよ、松本」
振り返ると、そこにはエリーが立っていた。彼女の手には銃が握られ、もう一方の手には奇妙な形をした機械を持っていた。その機械は微かに光を放ち、周囲の魔力を感知しているようだった。
「エリー、何のつもりだ」松本は冷静を装いながら尋ねた。
「その魔法陣を完成させるわけにはいかないわ」エリーは厳しい口調で言った。
「竜也とエルヴィリスの力は、我々の管理下に置かれるべきなの」
松本は眉をひそめた。
「君も、カムチャッカ・サハリン連邦の手先になったのか」
エリーは首を振った。
「違うわ。私は米国政府の代表よ。我々は魔力を適切に管理し、世界の秩序を維持する必要があるの。第二次世界大戦時の出来事を忘れたの? 一人の魔力使いが原爆を止めた。そんな力が個人の手に委ねられていいはずがない」
「だからこそだ」松本は反論した。
「その力を正しく使える者の手に委ねるべきだ。竜也とエルヴィリスなら」
緊張が高まる中、突如として魔法陣が輝き始めた。松本とエリーの驚いた顔の前で、空間が歪み始める。
「くっ、間に合わなかった」エリーは歯噛みした。
魔法陣から強い光が放たれ、二人は目を覆った。光が収まると、そこには大きな空間の歪みが生じていた。
その時、歪みの中から声が聞こえてきた。
「松本さん、聞こえますか?」竜也(エルヴィリス)の声だった。
「竜也!」松本は叫んだ。
「無事か?」
「ああ、大丈夫です。不思議な空間でした。本来の俺と十分に学べました。今、戻ります」
エリーは魔力察知機を空間の歪みに向けた。
「この反応……信じられないわ」
突然、歪みから強烈な光が放たれた。その光が収まると、そこには竜也の姿があった。しかし、それは以前の竜也とは明らかに違っていた。彼の周りには淡い光のオーラが漂い、その目には強い意志が宿っていた。
「竜也……」松本は安堵の表情を浮かべた。
竜也はゆっくりと前に進み、松本とエリーの前に立った。
「かの国と日本の力に属さない方ですね?」竜也は静かに言った。
「僕たちの力、リュミエール含めてですが、誰かに管理されるべきものじゃない。この力は、人々を守るためにあるんです」
エリーは難しい表情を浮かべた。
「でも、その力が征服に悪用されたら、かの連邦のように驚異的な兵器を作り上げるわ」
「だからこそ」松本が言った。
「我々が責任を持って使う。そして、その使い方を人々に示すんだ」
竜也は頷きながら付け加えた。
「僕たちは、この力を正しく使います。そしてあるべき空間に戻します。それが、本当の管理というものじゃないでしょうか」
エリーは長い間、二人を見つめていた。最後に、彼女はため息をついた。
「わかったわ。戦闘マシーンのアルファと事を構えるのも面倒だし、ここはいったん引くわ。でも、あなたたちの行動は常に監視下に置かれる。それが条件よ」
竜也と松本は顔を見合わせ、頷いた。
その時、公園の入り口から声が聞こえた。
「竜也!」
振り返ると、そこにはユウが立っていた。彼の顔には安堵の表情が浮かんでいた。
「ユウ!」竜也は嬉しそうに声を上げた。
ユウは駆け寄ってきて、竜也の両手を握りしめた。
「心配したんだぞ。突然いなくなって」
竜也は申し訳なさそうに笑った。
「ごめん、ユウ。色々あってね」
松本は微笑みながら見守っていた。エリーは複雑な表情を浮かべていたが、やがて小さく頷いた。
「さあ、行こう」松本が言った。
「我々にはまだやるべきことがある」
四人は静かに公園を後にした。月明かりの下、彼らの影は長く伸びていた。
竜也の心の中で、エルヴィリスの声が響いた。
「よく言えたな、竜也。勇気を持てば感嘆だろ? さ、これからが本当の戦いの始まりだ」
そして、本来の竜也の声も聞こえた。
「俺たち、もっと強くなれるぞ」
竜也は微笑んだ。彼らの前には、まだ多くの試練が待っているだろう。しかし、彼には力があった。そして何より、人々を守りたいという強い想いがあった。
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