世界の見せる真実が、俺の想像を超えていく 〜ROOTS(ルーツ)〜

いぬは

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Case 04:Yokai-Candy

25:一番はゴンさん!

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 ヤラセがばれたストップライト三色頭は、あれから必死に言い訳をしていたが、観光客からは完全に白い目で見られ、テレビ局のクルーも撮影機材を片づけ始めていた。

 ブッチはその様子を撮影しながら、ストップライトの悪行をまとめてネットに拡散すると息巻いていた。……気持ちは分かるけど、ほどほどにな。

 ――テレビ局とストップライトが撤収していったあとの河童淵には、ようやく“本来の静けさ”が戻ってきたように思えた。


 ◇◆◇


 その日の夜、俺たちはカッパの里に招かれていた。
 帰る前にどうしてもお礼をしたいと、ノサラ淵長に言われたからだ。

 用意された料理は、きゅうり尽くしはもちろん、川魚の塩焼きや夏野菜の煮びたしなど、素朴でどこか温かみを感じるものばかりだった。

「こんかいわ、ほんとうにありがとうございまちた」

「いや、俺たちは別に何もしてないよ。――一番の功労者は、やっぱり“ゴンさん”だろ」

 そう言ってゴンさんを見ると、何やらモジモジと恥ずかしそうにしている。
 本人いわく「珍しいもんが落ちてたから、触ってみただけズラ」と言っているが、結局はそれが奴らのヤラセを暴く決定打になったんだから、一番の功労者は間違いなくゴンさんだ。

 ……ほんと、あのタイミングは完璧だったな。
 今思い返しても顔がニヤつく。


 ◇◆◇


 後日。SNSでは、ヤラセがバレたストップライトが大炎上。
 完全に“赤信号”状態だ。

「マジでダサすぎ」「あんなのに騙されるやつがアホ」「妖怪飴転売ヤー涙目」――などと、言われ放題の状況。
 最終的には、三人そろって謝罪動画を投稿していた。

 その影響もあってか、河童淵の騒動はようやく落ち着きつつある。

「ストップライト、しばらく活動休止らしいですね」

「これで懲りてくれればいいんだけどな」

「どうだかな、根っこのところは、そう簡単に変わらないクワッ」

 ブッチも、同じ“配信者”として思うところがあるのだろうか。
 全員が頭を丸め、もはや“電源の落ちた信号機”になった三人の謝罪動画を見ながら、俺は思う。

 ――あの時、ストップライトを見ながら楽しそうに騒いでいた観光客たち。
 そして、“有名になりたい”という欲に取りつかれた者たち。

 ある意味、あの三人も――今のネット社会に翻弄された犠牲者なのかもしれないな……。



[神楽 個人日誌]
 ――――――――――――――――
 Case 04《Yokai-Candy》  

|結 論  
 ・本件における“妖怪飴騒ぎ”の正体は、中身ではなく、個包装にプリントされた模様にあった。
 ・妖怪飴の効果は、一時的に“潜在能力を持つ人間”の力を引き上げるものである。
 ・効果は限定的であり、繰り返しの使用は、ほぼ不可能と推測される。
 ・個包装デザインの投稿者“れー”は女性とされるが偽名の可能性が高い。
 ・騒動の発端となったストップライト(三色頭)は、ヤラセ発覚により現在活動自粛中。

 ・かっぱの里の料理は、最高においしかった。(M.F)

 以上をもって、本件の調査を終了する。  

 記録者:ROOTS(出勤停止中) H.K
 ――――――――――――――――


 ◇◆◇


 とあるビルの屋上。
 空は黄昏に染まり、うっすらと星が輝いていた。

「人間て面白いわね。少し他人と違う力を得ただけで、承認欲求を抑えられなくなる。そして――善悪の境界が曖昧になっていくのね」

「だから、ボクたちが“力を管理”しないといけないんだよ」

「ふふふ……。またを起こすわけにはいかないものね」

 一人は半透明の黒いドレスを纏った、夜のように黒髪ロングの妖艶な女。
 もう一人は、金髪に彫刻のように整った顔立ちをした少年。

 …………

「あ、“美零びれー”さん。そろそろ収録の時間ですので、スタジオの方へお願いします」

 屋上の扉が開き、テレビ局のスタッフの呼ぶ声が響く。

「じゃあ、私はお仕事の時間みたいだから――またね。♪」

「ああ」
 
 軽く手を振ると、美零と呼ばれた女はスタッフとともに建物の中へと消えていった。

 残された少年が見つめるのは、眼下の街並みではなく――
 人類には決して見ることの出来ない、“闇に染まりつつある深い宇宙そら”の彼方だった。
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